枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

2019-01-01から1年間の記事一覧

描きまさりするもの

絵に描くと実物より勝ってるもの…。松の木、秋の野、山里、山道。 ----------訳者の戯言--------- 前の段の続きというか、対になってる段です。 今回は率直な感想というのがなかなか思い浮かばないというか、そんなもんなのかなぁという感じです。 たしかに…

絵にかきおとりするもの

絵に描くと見劣りするものっていうと…。なでしこ、菖蒲、桜。物語で素晴らしいと言われてる男や女のルックス。 ----------訳者の戯言--------- そりゃ、絵に描いたのより実物でしょ、ってこと。特にそういった傾向の強いものを挙げて見ました、と。 花はいざ…

つねよりことにきこゆるもの

普段とは違って聴こえるもの。正月の牛車の音、それから、鶏の鳴き声、まだ暗いうちに聴こえる咳、楽器の音はいうまでもないわ。 ----------訳者の戯言--------- 暁(あかつき)というのは、まだ暗いうちの夜明けを言うようですね。文字通り、未明のことです…

うづきのつごもりがたに

4月の終わり頃に初瀬(長谷寺)に参詣に行く時、淀の渡りっていうのを体験したんだけど、舟に車を担いでしっかり載せて、舟を進めてって。菖蒲や菰(=真菰/マコモ)なんかの先端が水面から短く見えてるのを取らせたら、すごく長かったの。川をその菰を積ん…

原は

原っていうと、あしたの原、粟津の原、篠原。萩原。園原。 ----------訳者の戯言--------- あしたの原は、漢字では「朝原」「朝の原」と書くそうです。「奈良県北西部、北葛城郡王寺町から香芝市にかけての丘陵」と出ていました。 はたまた。この辺りに相違…

森は

森は…というと、浮田の森、うへ木の森、岩瀬の森、立聞の森。 ----------訳者の戯言--------- 浮田の森は、奈良県五條市今井町荒木山の荒木神社の森のことを言ったのだそうです。「浮田杜」または「浮田の杜」と書かれたようですね。このあたり一帯の荒木神…

関は

関っていうと…。逢坂の関、須磨の関、鈴鹿の関、岫田の関、白河の関、衣川の関。ただごえの関(ただそのまま越えるだけの関)は、はばかりの関(躊躇する関)とは、比べようがないなって思うわ。横はしりの関。清見が関。みるめの関。よしよしの関っていうの…

いひにくきもの

言いにくいもの。人からの便りの中に身分の高い方のおっしゃった言葉なんかがたくさん書かれてるのを、最初から最後まで全部言うのは難しいわ。こっちが恥ずかしくなるくらい立派な人が、物なんかを送ってきた時の返事もね。大人になった子どもの思いがけな…

見苦しきもの

見苦しいもの。っていうと、衣の背中の縫い目を肩の方に寄せて着るの。また、抜き衣紋の着方をしてるのもね。 慣れてない人の前に子供をおぶって出てきた人。僧侶や陰陽師が紙冠を着けてお祓いをしてるところもだわ。 色黒で醜くって添え髪をした女と、髭面…

方弘は、いみじう人に笑はるるものかな

方弘(まさひろ)はすごく人に笑われる人なのよ。親なんかはなんて思って聞いてるかしらね。 方弘ときたら、お供をしている者の中からとってもデキる人を呼び寄せて、「どうしてこんな者に使われてるんだい? どう思ってるの?」なんて言って、笑うの。 衣装…

はるかなるもの

気が遠くなるもの。半臂の緒をひねるの。陸奥の国に行く人が逢坂の関を越える頃。生まれた赤ん坊が大人になるまで。 ----------訳者の戯言--------- 半臂(はんぴ)というのは、袍(ほう/うへのきぬ=上着)と下襲 (したがさね) との間につける袖のない短い…

二月つごもり頃に

二月の終わり頃、風が強く吹いて、空がものすごく黒くなって、雪が少し降ってる時、黒戸に主殿司のスタッフが来て、「やって参りました」って言うもんだから、近寄ってみると、「これは(藤原)公任の宰相殿からです」と渡されたのを見てみると、懐紙に、 少…

殿上より、梅のみな散りたる枝を

殿上の間から、梅の花が全部散っちゃった枝を「これはどうですか?」って言ってきたから、シンプルに「早く落ちにけり」って答えたら、その詩を声に出して唱えて、殿上人が黒戸にすごくたくさん座ってるのを、帝がお聞きになって、「まあまあ良い歌なんかを…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑨ ~日の入るほどに~

日が沈む頃に帝が起きられて、山の井の大納言(藤原道頼)を呼び出して、お着物を整えさせなさって、お帰りになるの。桜襲の直衣に紅色の衣が夕日に映えてる様子なんて、畏れ多過ぎてこれ以上書くのがはばかれるほどでね。山の井の大納言は、定子様たちの腹…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑧ ~松君のをかしうもののたまふを~

松君がかわいらしくお話しされるのを、みんな誰もがカワイイ~ってお褒めになるの。「中宮のお子さまってことで、みんなの前に披露しても悪くはないだろうね」なんて関白殿はおっしゃるんだけど、ホント、どうして定子さまに今までお子さまのご誕生がないん…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑦ ~しばしありて~

それからしばらくして、式部の丞の何とかっていう人が、帝からのお使いとして参上したから、御膳宿りの北寄りの部屋に、褥(=敷物)を差し出して座ってもらったんだけど、中宮さまは返事を今日は早くお出しになったのね。で、出してた敷物もまだ片付けてな…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑥ ~あなたにも御膳まゐる~

淑景舎さまにもお食事が配膳されました。「うらやましいね、皆さま方には全部出されたようだ。早くお召し上がりになって、爺さん、婆さんにお下がりを下さいよ」なんて、一日中、冗談ばっかりおっしゃってるうちに、大納言殿(藤原伊周)と三位中将(藤原隆…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑤ ~御膳のをりになりて~

朝食のお時間になって、定子さまのヘアメイク担当が参上してね、女蔵人たちがお料理のために髪をアップにしてやって来る頃には、隔ててた屏風も押し開けちゃったから、隙間からのぞき見をしてた私みたいな人は隠れ蓑を取られた気がして、物足りなく、やりき…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど④ ~御手水まゐる~

で、お清めの水が差し上げられるの。あちらの方(淑景舎の方)のは、宣耀殿、貞観殿を通って、童女2人と下仕4人で持って参るようだわね。唐廂(からびさし)よりこちら側の廊下には女房が6人ほど待機してるの。狭いってことで、半分はお送りをして、あとは…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど③ ~さて、ゐざり入らせ給ひぬれば~

さて、定子さまが擦り膝でお入りになったから、そのまま屏風に寄り添って覗いてたんだけど、「良くないわ、後ろめたい行いだわね」って、聞こえるかのようにこっそり言う人たちもいて。おもしろいわね。障子がとても広く開いてるから、中の様子はすごくよく…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど② ~まだこなたにて~

まだこちらで定子さまが御髪なんかのお手入れをしてる時、「淑景舎の方は見たことがあるのかしら?」とお聞きになったので、「まだですが、どうしたらお目見えできます? お車寄せの日、後ろ姿をちょっとだけなので」って申し上げたら、「その柱と屏風のとこ…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど①

淑景舎の方(定子さまの妹君、原子さま)が東宮に入内なさった時のことほど、なんて素敵な!ってことはなかったわね。一月十日にお入りになって、お手紙なんかは定子さまと頻繁に交換し合ってたんだけど、まだ直接姉妹がお顔を合わせることはなくって、二十…

雨のうちはへ降る頃

雨が毎日降り続く頃、今日も降ってるんだけど、お使いとして式部省の丞(じょう)の藤原信経が定子さまのところに参上したの。例によって敷物を差し出したら、普段よりも遠くに押しやって座ってたから、「誰のためのもの?」って言ったら、笑って、「こんな…

中納言殿まゐり給ひて

中納言殿(藤原隆家)が定子さまのところに参上されて、扇を献上なさる時、「私、隆家はすごくいい扇の骨を入手しました。それに紙を張らせて差し上げようと思うんですが、いい加減な紙は張ることができないですから、今探してるところなんです」と申し上げ…

御方々、君達、上人など

定子さまのご家族の方々、若君さまたち、殿上人など、定子さまの御前に人がたくさんいらっしゃるから、廂の間の柱に寄りかかって、女房とおしゃべりなんかしてたら、何かの物を投げて下さったから、開けて見たら、「愛しましょうか、やめましょうか。一番じ…

職におはします頃

職の御曹司にいらっしゃる頃、八月十日過ぎの月の明るい夜、定子さまが右近の内侍(右近内侍)に琵琶を弾かせて端のほうにお座りになってるの。女房の誰かれは各々おしゃべりしたり、笑ったりしてるんだけど、私は廂の間の柱に寄りかかって、何もしゃべらず…

五月の御精進のほど⑥ ~夜うち更くる程に~

で、夜が更けてきた頃、彼がお題を出して、女房に歌をお詠ませになったの。みんな躍起になって、苦心して歌をひねり出してるんだけど、私は定子さまの近くに控えてて、お話し申し上げたり、別のことばっかり言ったりしてるのを、内大臣さま(藤原伊周)、ご…

五月の御精進のほど⑤ ~二日ばかりありて~

二日ほど経って、その日のことなんかを話し出したら、宰相の君が「どうだったのよ、『自分で摘んできた』っていう下蕨は」っておっしゃるのを定子さまがお聞きになってて、「思い出すことがそれ?」ってお笑いになって、散らかってた紙に 下蕨こそ恋しかりけ…

五月の御精進のほど④ ~さて、参りたれば~

さて、定子さまのところに参上して、事の次第をご報告申し上げたの。行けなくて恨んでる人たちは、嫌味を言ったり、残念がったりしながらだったけど、藤侍従(藤原公信)が一条の大通りを走ったお話をしたら、みんな笑ったわ。「で、どうだったの? 歌は」っ…

五月の御精進のほど③ ~卯の花のいみじう咲きたるを折りて~

卯の花がすごくいっぱい咲いてるのを手折って、牛車の簾や側面なんかに挿して、余ったのを屋根や棟なんかに長い枝を葺いたように挿したら、卯の花の垣根を牛に掛けたみたいに見えたわ。お供の下男たちもめちゃくちゃ笑いながら、隙間に「ここがまだだ、ここ…