枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

春はあけぼの

 春はあけぼの、夜明けが良いのです。だんだん白くなってく山際がちょっと明るくなって、紫っぽくなった雲が細くたなびくのね。

 夏は夜。月の頃はまた格別で、暗闇の中で蛍がいっぱい飛び交ってるの。で、また、1匹か2匹くらいが、ほんのちょっと光って飛んでくのもいい感じ。雨なんかが降るのもいいわね。

 秋は夕暮れ。夕日がさして、山に沈みかかって近づく頃、カラスが寝床に帰ろうって、3羽4羽、2羽3羽くらいずつ急いで飛びたって行くから、しみじみしちゃうの。それにもまして、雁なんかが並んで飛んでくのがかなり小っちゃく見えるのは、すごくいかしてるわよね。

 冬は早朝。雪が降るのは言うまでもないんだけど、霜がすごく白いのも、またそうじゃなくったって、すごく寒くてね、火なんかを急いでおこして炭を持ってくのも、とっても、らしくていい感じなの。でもお昼になって、寒さが落ち着いてゆるんでくると、火桶の火も白い灰がちになってダメなのよね。


----------訳者の戯言---------

枕草子と言えば、源氏物語と並ぶ平安時代を代表する文学であり、人気エッセイです。
作者は清少納言ですね。あ、みなさんご存じですか、そうですか。すみません。
ま、そのへんの枕草子情報については追々書いていくつもりですが、原典と言うべきものも実はいっぱいあって、今回、私はその中でもいちばんポピュラーではないか?と言われている「三巻本」を元に読んでいこうと思います。

さて。いちばん有名な、冒頭の「春はあけぼの」です。
学校の授業でもやるので、まずはこんな感じかなと書きました。と、悠長なこと言ってられるのも、今のうちでしょうね。


春はあけぼの、と言いますが、「あけぼの(曙)」っていったいいつ?と思いますよね。実は日の出の前後だということです。夜が明けて行く頃。暁(あかつき)はまだ暗いうちですから、それよりは後のようですね。
冬はつとめて、の「つとめて(夙めて)」のほうは、日が明けた後。「あけぼの」のさらに後くらいとなります。ちなみに「夙めて」の「夙(つと)」は、「早くから」「若い頃から」という意味の「夙に(つとに)」の「つと」と同じだそうです。
深夜から朝にかけて使われる語は他にもたくさんあります。「木の花は」という段にまとめていますので、よろしければご覧ください。(2023/6/30追記)

 

【原文】

春は あけぼの。やうやう白くなり行く山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

夏は 夜。月の頃はさらなり、闇もなほ蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。

秋は 夕暮。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連らねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。

冬は つとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。

 

検:春は、あけぼの