枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

この草子、目に見え心に思ふことを(跋文)

この草子は、目で見て心で思ったことを、誰かが見たりするかしら??(いやいや、誰も見ないわよ!)って思って、ヒマでしょうがない実家暮らしの時に書きためてたのを、よからぬことに人によっては都合の悪い言い過ぎちゃったところも結構あるから、うまく…

初瀬に詣でて

長谷寺に参詣して局に座ってたら、卑しい身分の低い者たちが下襲の裾を長く引きながら並んでたのには、ヤな感じがしたの。相当な思いで参詣したっていうのに初瀬川の音は怖ろしくって、呉階(くれはし)を上る時なんかめちゃくちゃ疲れちゃって、早く仏のお…

荒れたる家の蓬ふかく

荒れてしまったお屋敷の蓬(よもぎ)が深く茂ってて葎(むぐら)が這ってる庭に、月が翳りなく明るく澄んだ様子で昇ってくのを見るの。また、そんな荒れてる家の板屋根の隙間から漏れて射し込んでくる月の光。荒くはない風の音。 池があるところは、五月の長…

宮仕所は

宮仕えするところといったら、内裏ね。そして后の宮(きさいのみや)。その皇后さまのお子さまで一品の宮とかって申し上げるお方のところ。斎院は罪深いところだけど、いかしてるわ。言うまでもなく他のところとしては、東宮の女御の御方ね。 ----------訳者…

松の木立高き所の② ~いみじうことわりなど言はせて~

(僧侶が)もののけに、すごく謝罪の言葉を言わせて、許してやるの。「几帳の中にいると思ってたんだけど、無意識のうちに人前に出てしまってたんですね。どんなことが起こったのかしら…??」って女の子は恥ずかしがって、髪の毛で顔を隠して奥に入り込もう…

松の木立高き所の①

松の木立が高いお屋敷で、東や南の格子を全部上げてあるもんだから涼しそうに透けて見える母屋に、四尺の几帳を立てて、その前に円座(わろうだ)を置いて、40歳くらいのすごくいい感じの綺麗めの僧侶が墨染で薄めの袈裟を美しく着こなして、香染の扇を使っ…

檳榔毛は

檳榔毛(びろうげ)の車は、ゆっくりと行かせるのがいいの。網代(あじろ)の車は走らせて来るのがいいわね。 ----------訳者の戯言--------- 檳榔毛(びろうげ)の車というのは、檳榔(びろう)の葉のビラビラで飾った豪華仕様の大型車です。牛車の超高級車…

畳は

畳は高麗縁(こうらいばし)ね。また、黄色の地の縁が良いわ。 ----------訳者の戯言--------- 当時は「筵(むしろ)」に縁をつけたものを「畳」と言い、筵も畳もニュアンス的にはほとんど同じです。厚みはありますが。当時の部屋は板張りで、必要に応じてそ…

夏のしつらひは

夏のしつらひは 夜。冬のしつらひは 昼。 ----------訳者の戯言--------- 「しつらい」というのは設備や装飾、調度類を整え、室内を飾ることです。ご存じのとおり、「しつらふ(設ふ)」が飾り付ける、設備を整える、という意味の動詞で、動詞の連用形の名詞…

火桶は

火桶は、赤色や青色のものが良いわ。白いのに作り絵を施したのも良いわね。 ----------訳者の戯言--------- 今回はちょっと楽をしようと思い、最近話題のチャットGPTにこの段のことを聞いてみました。枕草子のことは多少知っているみたいですが…。 【私】枕…

蒔絵は

蒔絵は唐草文様が良いわ。 ----------訳者の戯言--------- 蒔絵(まきえ)は、漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を蒔くことで器面に定着させる技法です。奈良時代に発達し、平安時代、貴族社会ではポピュラ…

鏡は

鏡は、八寸五分(約25.8cm)のがいいよね! ----------訳者の戯言--------- 鏡です。前の段は化粧道具箱でしたから、さもありなんですが。清少納言の頃の鏡はもちろん今のようなガラス製ではありません。よく歴史の教科書で見かけるような円形の銅の鋳物です…

櫛の箱は

櫛の箱は、蛮絵のものがすごくいいわ。 ----------訳者の戯言--------- 櫛の箱(櫛箱)は文字どおり櫛など、髪を結う道具を入れておく箱です。当時からそのようなものはあったみたいですね。今で言うところのメイクボックスです。 蛮絵(ばんえ/盤絵)。有職…

貝は

貝は、うつせ貝(貝殻)。特に、蛤。そしてすごく小さな梅の花貝だわね。 ----------訳者の戯言--------- 虚貝(うつせがい/空貝)というのは貝殻のことです。巻き貝の殻も、二枚貝の殻のことも言ったみたいですね。何の貝のことを言ってるのでしょうか? た…

墨は

墨は丸い形のがいいわ。 ----------訳者の戯言--------- 墨は今から約2200年前、漢の時代の中国で発明されたそうです。日本では「日本書紀」に墨のことが書かれてるのが最も古くて、610年に高麗の曇徴(どんちょう)というお坊さんが来た時に、松ヤニを使う…

筆は

筆は冬毛。使うのにも、見た目にも良いわ。兎の毛のも。 ----------訳者の戯言--------- 筆には山羊、馬、狸、鹿、兎、鼬(いたち)などの獣毛を使うらしいです。当時はどうだったのでしょうか? それほど今と変わらないような気もしますね。 冬毛というのは…

硯の箱は

硯の箱は、重ねて描かれた蒔絵に雲鳥(くもとり)の模様のものがいいわ。 ----------訳者の戯言--------- 重ねの蒔絵、というのがいくつも絵柄を重ねて描かれた蒔絵という意味合いなのか、二段重ねの箱に描かれた蒔絵なのか、解釈を迷ったのですが、私は「重…

薄様色紙は

薄様色紙は、白いの。紫。赤いの。刈安染(かりやすぞめ)。青いのもいいわ。 ----------訳者の戯言--------- 薄様というのは、和紙で、雁皮(がんぴ)を原料に、薄く漉いたものの通称でした。この雁皮紙(がんぴし)の薄様は貴族の女子たちに好んで用いられ…

綾の紋は

綾の紋は、葵。かたばみ。霰(あられ)地。 ----------訳者の戯言--------- 葵は今でも上賀茂神社や下鴨神社の神紋、つまりシンボルマークになっているように、賀茂神社を象徴するもの。賀茂祭を葵祭と言いますしね。いずれにしても葵の葉っぱがデザイン的に…

汗衫は

汗衫(かざみ)は、春は躑躅(つつじ)。桜。夏は青朽葉。朽葉。 ----------訳者の戯言--------- 汗衫(かざみ)です。「汗」という字がはいっていますから、汗に何か関係あるのでしょう。衫は杉に似た字ですが、あまり見たことがありません。と思って調べる…

裳は

裳(も)は、大海(おおうみ)。 ----------訳者の戯言--------- 裳はそもそも腰から下に巻きつけた衣服の総称でした。平安時代からは唐衣(からぎぬ)と合わせて女性の正装の一つとなったそうで、概ね腰から下の後ろ部分を覆うものです。ハレの装束には当た…

唐衣は

唐衣(からぎぬ)は赤色。藤色。夏は二藍(ふたあい)。秋は枯野(かれの)。 ----------訳者の戯言--------- 赤色(あか)とは赤系統の色の総称です。M100%+Y100%の色ですよね、だいたいですけど。イエローはもうちょっと少なくていいですか、そうですか…

女の表着は

女子の表着(うわぎ)はっていうと。薄い紫色。葡萄染(えびぞめ)。萌黄(もえぎ)。桜色。紅梅。すべて薄い色のたぐいなの。 ----------訳者の戯言--------- 薄色。何度か書きましたが、薄色というのは薄紫です。濃き色は濃い紫なんですよね。平安時代、色…

下の心かまへてわろくて清げに見ゆるもの

下地は決定的にイケてないけど、綺麗に見えるもの。唐絵の屏風。石灰の壁。盛物(もりもの)。檜皮葺(ひわだぶき)の屋根の上。河尻(こうじり)の遊女。 ----------訳者の戯言--------- かまへて、というのは、「構へて」なんですが、「慎重に」とか「留意…

文字に書きてあるやうあらめど心得ぬもの

漢字で書いたらその字に理由はあるんだろうけど、納得はできないもの。撓塩(いためじお)。袙(あこめ)。帷子(かたびら)。屐子(けいし)。桶(おけ)。槽(ふね)。 ----------訳者の戯言--------- 撓塩(いためじお/いためしお)ですが、「撓る」と書…

聞きにくきもの

聞きづらいもの。声の悪い人がしゃべったり笑ったりなんかして打ち解けてる様子。居眠りしながら陀羅尼(だらに)を唱えてるの。お歯黒をつけながら話す声。特にいいところがない人は物を食べながらおしゃべりするものなのよね。篳篥(ひちりき)を練習して…

ほかげにおとるもの

灯火(ともしび)の明かりに照らされると見劣りするもの。紫の織物。藤の花。すべて紫色の類のものは見劣りする。紅(くれない)色は月夜にはダメだわ。 ----------訳者の戯言--------- 火影(ほかげ)。灯火の明かりのことをこう言いました。雰囲気はありま…

夜まさりするもの

夜のほうが勝ってるもの。濃い紅色の掻練襲(かいねりがさね)。むしった綿。女は額が出てるけど髪が綺麗な人。琴(きん)の音色。顔はイケてないんだけど雰囲気が良い人。郭公(ほととぎす)。滝の音。 ----------訳者の戯言--------- さてここから28段ほど…

まことにや、やがては下る

本当なんですか?「すぐに地方に下る件は」って言った人に、 思ひだにかからぬ山のさせも草 誰か伊吹の里は告げしぞ(全然思いもよらなかったわ! 伊吹の里に行くって一体誰がそんなこと言ったの!?) と詠んだの。 ----------訳者の戯言--------- 「思ひだ…

便なき所にて

都合の悪いところで男子と逢ってたんだけど、胸の鼓動がすごく速くなったのを、「何でそんなにドキドキしてるの??」って言ったその男に 逢坂(あふさか)は胸のみつねに走り井の 見つくる人やあらむと思へば(逢坂、、逢う時は走り井が湧き出すみたいにい…