枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

鏡は

 鏡は、八寸五分(約25.8cm)のがいいよね!


----------訳者の戯言---------

鏡です。前の段は化粧道具箱でしたから、さもありなんですが。
清少納言の頃の鏡はもちろん今のようなガラス製ではありません。よく歴史の教科書で見かけるような円形の銅の鋳物です。金属をピカピカに磨いて映してたんですね。たいていは裏側に装飾が施されていました。

そもそも銅鏡は弥生時代中期に中国大陸から朝鮮半島経由で日本に伝来しました。国産の鏡が作られたのは弥生時代後期からだそうです。それが奈良時代になると鏡を作る技術も進歩してきて、中国製のものに負けないほどになったらしいですね。

当初は、お寺とかで装飾具として用いられていましたが、平安時代に化粧道具として貴族社会に広がり、その後は庶民の生活の中にも浸透していきました。平安時代の鏡の裏には花や鳥が描かれるものが多かったようですね。

ちなみにガラスの鏡は14世紀始めにイタリアで初めて作られたそうです。日本に初めてガラスの鏡を伝えたのは1549年、ポルトガルの宣教師フランシスコ・ザビエルなんだそう。学校で学ぶ歴史上の人物の中では超有名人です。髪型にも特徴がありますし、日本史の中ではほぼ初出の欧米人ですしね。キャラが立ってます。ペリーとか、マッカーサーとか、その後もいろいろ出てきますけど、インパクトのある存在なのはたしかでしょう。
それでも江戸時代まではガラスの鏡はまだ一般的ではなかったようです。明治以降普及し今では鏡はどの家にもあります。100均でも買えるほどの生活必需品ですね。

とはいえ、昔の鏡は三種の神器の一つでもあったように、宝物でもあり、また霊力を備えたものとしても扱われました。
三種の神器の中でも最も重要で神聖な宝物が、日本書紀の中で真経津鏡(まふつのかがみ)、今は一般に八咫鏡(やたのかがみ)と呼ばれるものです。
三種の神器は皇室を守護する御神体の意味を持っていますが、中でも八咫鏡(真経津鏡)は最高神であり皇祖神の天照大神(あまてらすおおみかみ)の分身とされています。鏡が神話に初めて登場するのは天の岩戸事件の時で、岩戸に閉じこもった天照大神が外の宴、例の天鈿女命(あめのうずめのみこと)が踊ってたのを覗いた時に大神の顔を写した鏡がこの真経津鏡。これによって天照大神の分身としたのですね。

八咫鏡は現在伊勢神宮に御霊代(みたましろ)、つまり御神体として奉斎されています。皇居にはこれを象ったものがあるそうです。
作者のほうはあまり有名ではないですが、石凝姥命伊斯許理度売命/いしこりどめのみこと)という神。天照大神が岩戸に引き籠ったってことで、すぐさま鏡を作ることができるというのもやはり神様ならではですね。


八寸五分。
1寸≒3.03cm、1分≒0.303cmですから、8寸5分=8×3.03+5×0.303=24.24+1.51=25.7575758cm≒25.8cmになります。約26センチってことで良いでしょう。


化粧道具としての鏡の話からかなり飛んでしまいました。すみません。
鏡ですが、裏の装飾とか柄のことではないようです。なんと、サイズ。しかし直径26センチってデカすぎないですか?


【原文】

 鏡は 八寸五分(ふん)。