枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

蒔絵は

 蒔絵は唐草文様が良いわ。


----------訳者の戯言---------

蒔絵(まきえ)は、漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を蒔くことで器面に定着させる技法です。奈良時代に発達し、平安時代、貴族社会ではポピュラーになったようですね。


唐草文様は、葉や茎、または蔓植物が伸びたり絡んだりした形を図案化した植物文様です。複数の曲線や渦巻き模様を組み合わせることで、蔓(つる)が絡み合う様子を表したんですね。もちろん「唐草」という固有の植物があるわけではありません。 

この模様は元々は古代ギリシア古代エジプトなどに起源を持ち、アラブ諸国ではモスクの装飾としてよく用いられました。そのためヨーロッパでは「アラベスク(アラブ風の)」とも呼ばれてるんですね。大層に言うと、アラベスクっていうのはモスクの壁面装飾に見られるイスラム美術の様式で、幾何学的文様を反復して描くもの全般を言うみたいです。唐草はその一つという解釈で良いように思います。

さてその唐草模様ですが、日本へは中国の唐王朝支配下シルクロードを経由して伝わったとされています。つまり奈良時代(710~)から日本にあるもののようですね。

蔓植物は生命力が強く途切れることなく蔓をのばしていくことから、そもそも唐草には「繁栄・長寿」などの意味があり、縁起のいい文様なのです。さらに蔓(つる)は音読みでは「マン」で「万」と読み替え、それが帯のように連なってることから帯を音読みで「タイ」→「代」と読み替えたそうですね。「蔓帯」→「万代」と、一族の万代の子孫繁栄や長寿を象徴するものとして迎えられたということなのです。

こうして唐草は日本人に大変好まれたらしく、昔は唐草模様の風呂敷が各家にあったようですね。なんと婚礼用の嫁入り道具を包む際にも使われていたくらいで。人気がピークとなった昭和40年頃には年間150万枚も売れてたそうで、大げさではあるものの一家に一枚はあるという感じだったそうです。ちなみに日本の人口が1億弱、世帯数2千数百万、戦後高度経済成長期の後期ですね。

というわけで現在一般に「唐草模様」として認識されることが多いのは、緑地に白の唐草模様がある風呂敷のそれです。
しかし。唐草模様と言えば、コントやマンガで泥棒の小道具であったり、ダサい感じでしか使われません。なぜなのでしょう?

泥棒が唐草模様の風呂敷を担いでいるというのは、上記のとおり唐草柄の風呂敷がどの家にもあるため、空き巣に入った際にはそれがまず引き出しなんかに入ってました。泥棒も手ぶらで侵入してたんですね。その家で入手した風呂敷に盗品を包んで逃げたというわけです。しかも、どこの家にもあるので担いで外を歩いていてもあまり不審に見えませんでした。このようなことから、漫画、とくにサザエさん赤塚不二夫をはじめとするギャグ漫画や4コマで使われたのだと思います。

また唐草模様の風呂敷がお笑いのアイテムとなったのは、やはり昭和40年前後に活動していた東京ぼん太というコメディアンあたりが起源ではないかと考えられています。もちろんそれ以前に、唐草模様が所謂「ダサいもの、田舎っぽいもの」であるという共通認識はあったのでしょう。

いずれにしても唐草模様の風呂敷は現代においては、お笑いの小道具になっています。おそらくそれも徐々に衰退はしていくでしょうが、60年ほど経っても「泥棒と言えば唐草模様」というのはある意味すごいですね。
なお、天才バカボンバカボンの着物は一見、唐草模様のように見えますが渦巻き模様です。
また、獅子舞の胴体も緑色の生地でできていて、唐草模様になっているものも見かけますが、あれは本当は華鬘文(毛卍文/けまんもん)という柄で、唐獅子の身体の巻き毛を図案化したものです。


というわけで今回は唐草模様ネタに終始したかのようになってしまいました!
ちなみに「唐草×蒔絵」でGoogle画像検索するとこのような感じになります。

こうして見ると蒔絵の唐草模様は、風呂敷ほどお笑い要素はなく、結構ポピュラーな感じがします。これならコントではなく、推してもいいのかもしれません。


【原文】

 蒔絵は 唐草。