2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧
中納言殿(藤原隆家)が定子さまのところに参上されて、扇を献上なさる時、「私、隆家はすごくいい扇の骨を入手しました。それに紙を張らせて差し上げようと思うんですが、いい加減な紙は張ることができないですから、今探してるところなんです」と申し上げ…
定子さまのご家族の方々、若君さまたち、殿上人など、定子さまの御前に人がたくさんいらっしゃるから、廂の間の柱に寄りかかって、女房とおしゃべりなんかしてたら、何かの物を投げて下さったから、開けて見たら、「愛しましょうか、やめましょうか。一番じ…
職の御曹司にいらっしゃる頃、八月十日過ぎの月の明るい夜、定子さまが右近の内侍(右近内侍)に琵琶を弾かせて端のほうにお座りになってるの。女房の誰かれは各々おしゃべりしたり、笑ったりしてるんだけど、私は廂の間の柱に寄りかかって、何もしゃべらず…
で、夜が更けてきた頃、彼がお題を出して、女房に歌をお詠ませになったの。みんな躍起になって、苦心して歌をひねり出してるんだけど、私は定子さまの近くに控えてて、お話し申し上げたり、別のことばっかり言ったりしてるのを、内大臣さま(藤原伊周)、ご…
二日ほど経って、その日のことなんかを話し出したら、宰相の君が「どうだったのよ、『自分で摘んできた』っていう下蕨は」っておっしゃるのを定子さまがお聞きになってて、「思い出すことがそれ?」ってお笑いになって、散らかってた紙に 下蕨こそ恋しかりけ…
さて、定子さまのところに参上して、事の次第をご報告申し上げたの。行けなくて恨んでる人たちは、嫌味を言ったり、残念がったりしながらだったけど、藤侍従(藤原公信)が一条の大通りを走ったお話をしたら、みんな笑ったわ。「で、どうだったの? 歌は」っ…
卯の花がすごくいっぱい咲いてるのを手折って、牛車の簾や側面なんかに挿して、余ったのを屋根や棟なんかに長い枝を葺いたように挿したら、卯の花の垣根を牛に掛けたみたいに見えたわ。お供の下男たちもめちゃくちゃ笑いながら、隙間に「ここがまだだ、ここ…
目的地は、高階明順(たかしなのあきのぶ)朝臣の家だったの。「そこも見物しましょ!」って私が言って車を寄せて下りたのね。田舎風で、よけいな装飾もなくって、馬の絵が描かれた障子、網代張りの屏風、三稜草(みくり)の簾なんかで、特別に昔の雰囲気を…
五月の御精進の時、(定子さまが職の御曹司にいらっしゃった頃のことだったんだけど)塗籠の前の二間の所を特別に飾りつけたら、いつもと違って素敵な感じなの。 一日(朔日/ついたち)から雨模様で、曇りの日も続いてて。何もやることがなくって退屈なもん…
残念なものとは? 五節や御仏名に雪が降らないで、雨が空を暗くして長々と降ってるの。節会なんかに、しかるべき宮中の物忌みが重なっちゃった時。準備万端、今か今かと待ってたイベントなんだけど、差し支えがあっていきなり中止になっちゃった場合。管弦の…
あきれちゃうものっていうと…。刺櫛(さしぐし)を磨く時、物に突き当ててしまって折っちゃった気分。牛車がひっくり返ってしまった時。こんな大きな物、狭っくるしく感じるくらい堂々としてるハズって思ってたのに、いざそうなったら、ただ夢のような感じが…
いたたまれないもの、っていうと、お客様なんかに会ってお話してる時、家の奥の方でぶっちゃけトークしてるんだけど、それを止めることもできないで、そのまんま聞いてる時の気分。愛してる男性が、すごく酔っぱらって、おんなじことを繰り返しやってるの。…
いまいましいもの。誰かのところにこっちから歌を送る時も、貰った歌に返歌を送る時にも、書いて遣わした後になって、文字を一つか二つ直したくなったような場合ね。あと、急ぎの縫い物をする時に、上手く縫えたと思って針を引き抜いたら、なんと、端を結ん…
定子さまのお部屋の御簾の前で、殿上人が琴を弾いたり、笛を吹いたりして、一日中遊んでて。灯火(大殿油)を点けに来る頃になったんだけど、まだ格子は下げてなかったのに、灯りを点けちゃったもんだから、戸が開いてるのがはっきりとわかってしまって、定…
「無名」っていう琵琶を帝が持って定子さまのところに来られた時のこと、それを見たり、かき鳴らしたり、っていうのが本当なんだろうけど、実は、弾くでもなく、弦なんかを手でもてあそんで、「これの名前は何ていうんですか?」って定子さまに尋ねたら、「…
内裏では、五節の頃になるとなんとはなしにだけど、いつも見慣れてる人も素敵に思えるのよ。主殿司(とのもりづかさ)の女官なんかが、色々な布っ切れを、物忌の札みたいに釵子(さいし)につけたりなんかするのも、レアで特別感があるのよね。宣耀殿(せん…
細太刀に平緒をつけて、スキッとこぎれいな男が持って通っていくのも優美だわ。 ----------訳者の戯言--------- 細太刀。飾り太刀を簡略化して作った、儀仗(ぎじょう)用の細い太刀。とありますから、儀式なんかに使ったやつですね。本物の武器としては使わ…