枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

中納言殿まゐり給ひて

中納言殿(藤原隆家)が定子さまのところに参上されて、扇を献上なさる時、「私、隆家はすごくいい扇の骨を入手しました。それに紙を張らせて差し上げようと思うんですが、いい加減な紙は張ることができないですから、今探してるところなんです」と申し上げ…

御方々、君達、上人など

定子さまのご家族の方々、若君さまたち、殿上人など、定子さまの御前に人がたくさんいらっしゃるから、廂の間の柱に寄りかかって、女房とおしゃべりなんかしてたら、何かの物を投げて下さったから、開けて見たら、「愛しましょうか、やめましょうか。一番じ…

職におはします頃

職の御曹司にいらっしゃる頃、八月十日過ぎの月の明るい夜、定子さまが右近の内侍(右近内侍)に琵琶を弾かせて端のほうにお座りになってるの。女房の誰かれは各々おしゃべりしたり、笑ったりしてるんだけど、私は廂の間の柱に寄りかかって、何もしゃべらず…

五月の御精進のほど⑥ ~夜うち更くる程に~

で、夜が更けてきた頃、彼がお題を出して、女房に歌をお詠ませになったの。みんな躍起になって、苦心して歌をひねり出してるんだけど、私は定子さまの近くに控えてて、お話し申し上げたり、別のことばっかり言ったりしてるのを、内大臣さま(藤原伊周)、ご…

五月の御精進のほど⑤ ~二日ばかりありて~

二日ほど経って、その日のことなんかを話し出したら、宰相の君が「どうだったのよ、『自分で摘んできた』っていう下蕨は」っておっしゃるのを定子さまがお聞きになってて、「思い出すことがそれ?」ってお笑いになって、散らかってた紙に 下蕨こそ恋しかりけ…

五月の御精進のほど④ ~さて、参りたれば~

さて、定子さまのところに参上して、事の次第をご報告申し上げたの。行けなくて恨んでる人たちは、嫌味を言ったり、残念がったりしながらだったけど、藤侍従(藤原公信)が一条の大通りを走ったお話をしたら、みんな笑ったわ。「で、どうだったの? 歌は」っ…

五月の御精進のほど③ ~卯の花のいみじう咲きたるを折りて~

卯の花がすごくいっぱい咲いてるのを手折って、牛車の簾や側面なんかに挿して、余ったのを屋根や棟なんかに長い枝を葺いたように挿したら、卯の花の垣根を牛に掛けたみたいに見えたわ。お供の下男たちもめちゃくちゃ笑いながら、隙間に「ここがまだだ、ここ…

五月の御精進のほど② ~かくいふ所は~

目的地は、高階明順(たかしなのあきのぶ)朝臣の家だったの。「そこも見物しましょ!」って私が言って車を寄せて下りたのね。田舎風で、よけいな装飾もなくって、馬の絵が描かれた障子、網代張りの屏風、三稜草(みくり)の簾なんかで、特別に昔の雰囲気を…

五月の御精進のほど①

五月の御精進の時、(定子さまが職の御曹司にいらっしゃった頃のことだったんだけど)塗籠の前の二間の所を特別に飾りつけたら、いつもと違って素敵な感じなの。 一日(朔日/ついたち)から雨模様で、曇りの日も続いてて。何もやることがなくって退屈なもん…

口惜しきもの

残念なものとは? 五節や御仏名に雪が降らないで、雨が空を暗くして長々と降ってるの。節会なんかに、しかるべき宮中の物忌みが重なっちゃった時。準備万端、今か今かと待ってたイベントなんだけど、差し支えがあっていきなり中止になっちゃった場合。管弦の…

あさましきもの

あきれちゃうものっていうと…。刺櫛(さしぐし)を磨く時、物に突き当ててしまって折っちゃった気分。牛車がひっくり返ってしまった時。こんな大きな物、狭っくるしく感じるくらい堂々としてるハズって思ってたのに、いざそうなったら、ただ夢のような感じが…

かたはらいたきもの

いたたまれないもの、っていうと、お客様なんかに会ってお話してる時、家の奥の方でぶっちゃけトークしてるんだけど、それを止めることもできないで、そのまんま聞いてる時の気分。愛してる男性が、すごく酔っぱらって、おんなじことを繰り返しやってるの。…

ねたきもの

いまいましいもの。誰かのところにこっちから歌を送る時も、貰った歌に返歌を送る時にも、書いて遣わした後になって、文字を一つか二つ直したくなったような場合ね。あと、急ぎの縫い物をする時に、上手く縫えたと思って針を引き抜いたら、なんと、端を結ん…

上の御局の御簾の前にて

定子さまのお部屋の御簾の前で、殿上人が琴を弾いたり、笛を吹いたりして、一日中遊んでて。灯火(大殿油)を点けに来る頃になったんだけど、まだ格子は下げてなかったのに、灯りを点けちゃったもんだから、戸が開いてるのがはっきりとわかってしまって、定…

無名といふ琵琶の御琴を

「無名」っていう琵琶を帝が持って定子さまのところに来られた時のこと、それを見たり、かき鳴らしたり、っていうのが本当なんだろうけど、実は、弾くでもなく、弦なんかを手でもてあそんで、「これの名前は何ていうんですか?」って定子さまに尋ねたら、「…

内裏は、五節の頃こそ

内裏では、五節の頃になるとなんとはなしにだけど、いつも見慣れてる人も素敵に思えるのよ。主殿司(とのもりづかさ)の女官なんかが、色々な布っ切れを、物忌の札みたいに釵子(さいし)につけたりなんかするのも、レアで特別感があるのよね。宣耀殿(せん…

細太刀に平緒つけて

細太刀に平緒をつけて、スキッとこぎれいな男が持って通っていくのも優美だわ。 ----------訳者の戯言--------- 細太刀。飾り太刀を簡略化して作った、儀仗(ぎじょう)用の細い太刀。とありますから、儀式なんかに使ったやつですね。本物の武器としては使わ…