枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

あさましきもの

 あきれちゃうものっていうと…。刺櫛(さしぐし)を磨く時、物に突き当ててしまって折っちゃった気分。牛車がひっくり返ってしまった時。こんな大きな物、狭っくるしく感じるくらい堂々としてるハズって思ってたのに、いざそうなったら、ただ夢のような感じがして、あれれ、どうしましょ、どうしようもないわねってね。

  誰かに、その人が恥ずかしくなっちゃうくらいの悪口を遠慮もなく言ってるの。必ず来るだろうって思う人を一晩中起きて待ってて、明け方にそれをほんのちょっと忘れて眠ってしまって。烏(からす)がとっても近くで「かぁかぁ」って鳴くから、起きて見上げたら、もうお昼になってるのとかも、めちゃくちゃあきれることよね。

 見せちゃいけない人に、他所に持っていく手紙を見せちゃってるの。全然知らない、見てもないことを、人に面と向かって、反論の余地もなく一方的に言ってるのもね。物をこぼしちゃった時の気分も、すごく情けないわ。


----------訳者の戯言---------

「あさましき」もの。現代語の現代語の「あさましい」のもとになった語だそうです。「あきれちゃうわね、情けねー、あれれびっくりするわー」というニュアンスが入り混じっているようですね。

刺櫛(さしぐし)というのは、櫛の中でも、といたり、すいたりするのがメインの櫛ではなく、要するに、セットした髪に刺したと。ヘアアクセサリー的な櫛ですね。

車というと、この時代は牛車でした。「檳榔毛はのどかに」の段で私、いろいろと書いています。

「所せく」「所せし」というのは、狭っくるしい、窮屈な、みたいな意味もあるし、重々しくて立派、おおげさ、扱いづらいという意味もあるんですね。古語には、ポジティブな意味とネガティブな意味、あるいはいくつか意味の共存する言葉が時々あって。これもそのようです。ただ、「大きいから窮屈になってる」「狭っくるしく感じるほど立派な」と考えると腑に落ちますね。

あへなし。「敢へ無し」と書くようで、「どうしようもない、がっかり」というニュアンスになります。

前々段「ねたきもの」でも似たようなことあったんですが、清少納言、おっちょこちょい過ぎませんか?
今回は刺櫛を磨いてたら、ぶつけて折ってしまったと。彼氏が来るのを寝ないで待ってて、ちょっと一瞬眠ったと思って起きたらもう昼でしたとか。何か(液体?)こぼしたりもするし。

さて、他人あての手紙を見る行為ですが、今なら刑法犯(刑法第133条)になります。刑法第133条に「正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。」と示されています。当然、家族でもです。ま、平安時代の法律にはないでしょうけれど。最低限のマナーですよね。それに、「清少納言にバカにされる」「枕草子に書かれる」くらいの罰は受けます。

封をしてない場合は微妙ですね。刑事罰は逃れるものの、プライバシー権侵害の可能性はあるでしょう。民事で損害賠償請求はできるかもしれません。プライバシー権憲法13条(個人の尊重)において守られるべきであり、民法709条710条あたりに基づいて不法行為と認定されれば勝訴できるかもしれませんね。代理人弁護士の腕次第というところでしょうか。

気になってしまい、ずいぶん話が逸れてしまいました。すみません。

ま、あんまり他人様にあきれられるようなことはしないようにしたいもの。で、自分的にも情けないことはしないように気を付けようと。そんなことが言いたかったのでしょうか。


【原文】

 あさましきもの 刺櫛(さしぐし)すりて磨くほどに、ものにつきさへて折りたる心地。車のうち覆(かへ)りたる。さるおほのかなるものは所せくやあらむと思ひしに、ただ夢の心地して、あさましうあへなし。

 人のために、はづかしうあしきことをつつみもなく言ひゐたる。必ず来なむと思ふ人を夜一夜起きあかし待ちて、暁がたにいささかうち忘れて寝入りにけるに、烏のいと近く「かか」と鳴くに、うち見上げたれば昼になりにける、いみじうあさまし。

 見すまじき人に、外(ほか)へ持て行く文見せたる。むげに知らず、見ぬことを、人のさし向ひて、あらがはすべくもあらず言ひたる。物うちこぼしたる心地、いとあさまし。

 

現代語訳 枕草子 (岩波現代文庫)

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