枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

かたはらいたきもの

 いたたまれないもの、っていうと、お客様なんかに会ってお話してる時、家の奥の方でぶっちゃけトークしてるんだけど、それを止めることもできないで、そのまんま聞いてる時の気分。愛してる男性が、すごく酔っぱらって、おんなじことを繰り返しやってるの。当人が聞いてるのを知らないで、人の噂話をしてしまうのもね。それは何てことない身分で、使用人であったとしても、すごくいたたまれない気持ちだわ。旅行中、泊ってるところで、下男たちがふざけてるの。かわいくもない赤ん坊のことを、親だけは自分が愛しく思ってるまま、褒め、かわいがって、その子の声そっくりそのまんまに言ったことなんかを人に語るのもね。学のある人の前で、学のない人がいかにも知ってる風な声で、歴史上の人物の名前なんかを言ってるのも。特にいいとも思わない自分の歌を誰かに語って、人が褒めてくれたとかっていう話をするのも、また、いたたまれない気持ちになるものだわよね。


----------訳者の戯言---------

「かたはらいたし」っていうと、よく時代劇とかで、中途半端に偉い(とされている)人物(例えば代官、悪徳商人等)が、自分より下級だと思われる町人(遊び人の金さん=実は江戸町奉行、どっかの隠居じじい=実は水戸光圀)なんかが歯向かってきた時に「片腹いたいわww」とか言う、あれを思い出しますね。身の程を知らない相手の態度がちゃんちゃらおかしい、って感じでしょうか。

が、しかし、この段で言っている「かたはらいたし」は意味が違います。そのそも「傍らいたし」ですから、「第三者の立場から見ていて、傍から見てて」→「心が痛む。心苦しい。はらはらする。気の毒。いたたまれない。」という感じを表しているんですね。
さらに少し転じて「恥ずかしい」「きまりがわるい」という意味にもなります。

最初に私が書いた「片腹いたいわw」は、このあたりの諸々の意味が転じて「身の程知らずすぎて恥ずかしい気の毒な奴だから脇腹が痛くなるほど笑っちゃうぜ」ってことだろうと思います。ただ、使われたのは江戸時代以降のようですね。

とまあ、余談が過ぎましたが、元々の意味の「かたはらいたきもの」特集です。前段に続いて「あるある」ですね。

「かなしき」の「かなし」は「愛し」と書くケースもあったようで、こちらの意味は「悲しい、哀しい」ではなく「しみじみとかわいい。いとしい」です。

ま、ま、概ね「かたはらいたきもの」っていうのは、(苦笑)or(汗)もしくは orz が付く感じですね。それぞれの文尾に、付けてみましょう。

・~そのまんま聞いてる時の気分(汗)
・~おんなじことを繰り返しやってるの(苦笑)
・~人の噂話をしてしまうのもね(汗)
・~下男たちがふざけてるのorz
・~そのまんまに言ったことなんかを人に語るのもね(苦笑)

んー、ちょっと違いますか(汗)


【原文】

 かたはらいたきもの 客人(まらうど)などに会ひてもの言ふに、奥の方にうちとけ言など言ふを、えは制せで聞く心地。思ふ人のいたく酔ひて同じことしたる。聞きゐたりけるを知らで、人のうへ言ひたる。それは何ばかり<の人>ならねど、使ふ人などだにいとかたはらいたし。旅立ちたる所にて、下衆どものざれゐたる。憎げなるちごを、己(おの)が心地のかなしきままに、うつくしみ、かなしがり、これが声のままに言ひたることなど語りたる。才ある人の前にて、才なき人のものおぼえ声に人の名など言ひたる。ことによしともおぼえぬわが歌を人に語りて、人のほめなどしたるよし言ふもかたはらいたし。

 

枕草子 (岩波文庫)

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