枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

汗衫は

 汗衫(かざみ)は、春は躑躅(つつじ)。桜。夏は青朽葉。朽葉。


----------訳者の戯言---------

汗衫(かざみ)です。「汗」という字がはいっていますから、汗に何か関係あるのでしょう。
衫は杉に似た字ですが、あまり見たことがありません。と思って調べると、実は肌着とか襦袢を表す字らしく、訓読みでは「はだぎ、ひとえ、ころも」などと読むようです。音読みでは「衫(さん)」だそうですね。
汗、つまりスウェットですから、汗衫というとスウェットシャツみたいなものだと思っておけばいいのでしょうか。

さて、袙(あこめ)っていうのがまず女児の着物の一つなんだそうです。その袙の上にこの汗衫という上着を着るらしいですね。
「あてなるもの(上品なもの)」という段では、薄色の袙の上に白い汗衫を重ねて着た少女が上品である、と書いていました。

ちなみに汗衫(かざみ)を辞書で調べると、
①汗取りの下着(男女ともに用いる)。
平安時代中期以後、後宮に仕える童女の正装用の衣服。「表着」または「袙」の上に着用する、裾の長い単(ひとえ/一重)のもの。一重または二重。
と書かれています。

やはり、元々は汗取り用の下着だったということです。アンダーウェアだったわけですが、そのうち、それを女の子用の上着にするようになり、ひいては正式に女児用上着として作るようになった、ということのようですね。
今みたいにニット、つまりカットソーのプルオーバーの下着なんてないわけですから、前開きで一重のシャツジャケット的なもの、とイメージできます。

ちなみに「職の御曹司の西面の立蔀のもとにて」という段では、「唐衣(からぎぬ)をただ汗衫の上にうち着て」つまり、(私たちは上着の)唐衣を肌着(汗衫)の上に羽織っただけで、、と描いていました。

今回この段はその汗衫の色のことを語っているようです。
躑躅(つつじ)。あの花のツツジです。漢字が難しすぎますね。読めないし書けません。
前にも書きましたが、以下再掲します。

躑躅」というのが何なのか調べたところ、「テキチャク」と読むことがわかりました。意味は「足で地をうつ」「行きつもどりつする」「躍(おど)りあがる」などで、さすが足ヘンだけあってこうなのですね。しかしなぜこれが「ツツジ」なのか。
で、よくよく読んでいると、これは羊がツツジの葉を食べると「躑躅(てきちゃく)」して死ぬ、とか、食べれば死ぬので羊たちはこの葉を見ると「躑躅」して散り散りになってしまう。そういう説があるらしいんですね。しかし、ほんとうに死んでしまうのか?と思って、今回調べてみましたが、どうもツツジを食べても死ぬことはないようです。
ヒツジ&ツツジ。ガセですか。

と、話がそれましたが、肝心の躑躅色です。花の色のとおり、鮮やかな赤紫、というかピンク。ほぼマゼンタです。

そして桜色。ついこの前にも「女の表着は」に書きましたが、ものすごーく薄いピンクです。白やん、と言われたら、あれれ?そうかな~と思うぐらいですね。

青朽葉というのは、青っぽい朽葉色です。私は、かにみその色だと思いました。
ちなみに、かにみそは蟹の脳味噌ではありません。んなことはわかっとるわい、と言われるかと思いますが。蟹にあんなにたくさんの脳味噌は無いです。蟹の内臓のうち中腸線といわれる部分を「かにみそ」として食べるのだそうです。そう言われると何だかなー、食べられへんな―と思ってしまいますね。スミマセン。

朽葉色は薄いキャメル系のカーキです。カフェオレ色、といったほうがいいかもしれません。着用時期は秋だそうですが、ここでは夏に良いとのことです。これまたおしゃれショップの店員さんのようにちょっと早めの着用がいかしてるのでしょう。


というわけで今回は「汗衫 collection 1001 spring/sammer」みたいな感じでしょうか。


【原文】

 汗衫(かざみ)は 春は 躑躅。桜。夏は 青朽葉。朽葉。