裳は
裳(も)は、大海(おおうみ)。
----------訳者の戯言---------
裳はそもそも腰から下に巻きつけた衣服の総称でした。
平安時代からは唐衣(からぎぬ)と合わせて女性の正装の一つとなったそうで、概ね腰から下の後ろ部分を覆うものです。ハレの装束には当たり前に着用され、丈はどんどん長くなっていったそうですね。先にも書いたように、唐衣とセットなんですが、女房は出仕の間、唐衣は脱ぐことがあっても裳は常に着けていたそうです。
腰に当たる部分は大腰と言い、大腰の左右には長く垂らす「引腰」、また前でくくる「前腰」などの紐があります。冬は綾織り、夏は薄物で地摺りで大海の文様が広く用いられたそう。地摺りは生地に文様を摺り出した布帛のことだそうです。
紫式部日記の、行幸当日の女房たちの装束を書いた部分に「大海の摺裳の、水の色はなやかに、あざあざとして、腰どもは固紋をぞ多くはしたる(大海の摺模様の裳の水色は、華やかでくっきりとしてて、裳の腰のところなんかは固紋のものを多くの人はしてたの)」とありました。
海を思わせる模様を摺染(すりぞめ)にした水色の裳(も)が鮮やか!と描かれてます。やはり水色だったんですね。海だけに。
「大海」というのは、布だけでなくて蒔絵とかにも描かれたらしいですが、どういう模様かというと、大波や磯馴松(そなれまつ)、貝、砂浜などの海辺の風物や景色を文様化したものなのです。鳥などを配することもあるようですね。磯馴松とうのは潮風のために傾いて生えている松です。
裳は大海の文様のがいい、と言いたかったのでしょう。
パンツはデニムがいい、とか、スカートはタータンチェックがトレンド! みたいなことでしょうか。
【原文】
裳は 大海(おほうみ)。