枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

ある女房の、遠江の守の子なる人を

ある女房が遠江(とおとうみ)の守(かみ)の子である人と親しい関係になってたんだけど、その男が同じ宮に仕えてる女房と密かに親しくなってるって聞いて恨んだものだから、「『親の名にかけて誓わせてください。とんでもない嘘です。夢の中でだって逢った…

男は、女親亡くなりて

男は、女親が亡くなって父親一人になって、父親はその男(息子)のことをすごく思いやってるんだけど、気難しい後妻を迎えたその後からは、部屋の中にも入れさせず、着物なんかは、乳母とか、亡くなった先妻の付き人たちとかに言ってお世話をさせてるの。 (…

僧都の御乳母のままなど

僧都の君の乳母なんかが御匣殿(みくしげどの)の御局に座ってたら、ある男性スタッフが縁側の板敷の近くに寄って来て、「ひどい目にあいまして、どなたにこの辛さを申し上げたらよいでしょうか?」って言って泣きそうな様子だから、「どうしたの?」って尋…

大納言殿参り給ひて② ~上もうちおどろかせ給ひて~

帝もお目覚めになって、「どうしてこんなところに鶏が!」なんてお尋ねになると、大納言殿の「声、明王の眠りを驚かす」っていう詩を高らかにお詠いになるのが、素晴らしくいかしてるものだから、凡人の(私の)眠たかった目もすごく大きく見開いちゃったの…

大納言殿参り給ひて①

大納言(伊周)殿が参上なさって、帝に漢詩文のことなんかを申し上げられてたら、例によって夜がかなり更けちゃったから、御前にいた女房たちは一人か二人ずつ姿を消してって、屏風や御几帳の後ろなんかにみんな隠れて寝てしまったもんだから、私はただ一人…

左右の衛門の尉を

左右の衛門の尉(じょう)を、判官(ほうがん)って名づけて、すごく恐ろしくて、でも立派な者だって思ってるの! 夜の見回りをして細殿とかの女房の部屋に入って寝てるのは、ほんと見苦しいわ。布の白袴を几帳に掛けて、袍(うへのきぬ)の長くていっぱいい…

よろしき男を下衆女などのほめて

相当良い身分の男を身分の低い女が褒めて、「すごくお優しい方でいらっしゃる」なんて言うと、すぐにその男のことは貶められちゃうでしょうね。disられるのはむしろ逆に良いの。身分の低い下衆に褒められるのは、たとえ女であっても全然良くないわ。また、褒…

をかしと思ふ歌を

いいなって思う歌をノートに書き留めておいたんだけど、言ってどうなるものでもない身分の低い者がその歌を歌ったのは、すごく不愉快だわ。 ----------訳者の戯言--------- まさに差別主義者・清少納言の最も清少納言らしいところがあらわれた一文です。いけ…

また、業平の中将のもとに

また、(在原)業平の中将のところに母の皇女(伊都内親王)が「いよいよ見まく(ますます会いたい)」ってお送りになったの、すごくしみじみと素敵だったわ。それを引き開けて見た時の業平の気持ちが、自ずと思いやられるわね。 ----------訳者の戯言------…

小原の殿の御母上とこそは

小原の殿のお母上って聞いたんだけど、普門っていう寺で法華八講したのを聞いて、次の日に小野殿に人々がたくさん集まって音楽を楽しんだり、詩作をしたんだけど、 薪こることは昨日に尽きにしを いざ斧の柄はここに朽たさむ(薪を切って仏に供える法華八講…

右衛門の尉なりける者の

右衛門府の尉(じょう)になった者が身分の低い男親を持ってて、人が見たら顔向けできない!って心苦しく思ってたんだけど、伊予の国から都に上るっていう時に海の波の中に落とし入れたのを、「人の心ほど情けないものはない」ってあきれてたんだけど、7月15…

日のいとうららかなるに⑤ ~海はなほいとゆゆしと思ふに~

海はやっぱりすごく怖いって思うんだけど、ましてや海女(あま)が獲物を捕るために潜るのは辛いことだわ。腰につけてる紐が切れたりしたら、どうしよう?っていうんでしょ? せめて男がするのならそれでもいいんだけど、女はやはり平常心ではいないでしょう…

日のいとうららかなるに④ ~はし舟とつけて~

はし舟って名付けて、すごく小さいのに乗って漕いで動き回るの、早朝なんかはとてもしみじみとしていい感じだわ。「跡の白波」はほんと、すぐ消えて行っていまうの! いい身分の人は、やっぱり舟に乗ってあちこち行くべきじゃないって思うわね。歩いて行く旅…

日のいとうららかなるに③ ~屋形といふものの方にて~

屋形っていうものの方で櫓を押すの。だけど、奥にいる者は安心。端に立ってる者は目が眩むような気分になるでしょうね。早緒(はやお)って名付けて、櫓とかに結んだものの弱そうな感じといったら!! それがもし切れてしまったら何にもならない、すぐに落と…

日のいとうららかなるに② ~思へば船に乗りてありく人ばかり~

思ってみたら、船に乗って移動する人ほどあきれるくらい恐ろしい(思いをする)者はないわ。適度な深さであっても、そんな頼りないものに乗って漕ぎ出していけるものじゃないわよ! ましてや底もわからずにもの凄く深いっていうのにね。荷物をすごくたくさん…

日のいとうららかなるに①

日差しがすごくうららかで、海面がとてものどかでね、砧で打って光沢を出してる浅緑色の衣を引き延ばした感じで、全然怖ろしい様子もなくって、若い女なんかが袙(あこめ)や袴とかを着てる姿や、若々しい侍とかが櫓(ろ)というものを押して歌をやたらと歌…

うちとくまじきもの

気が許せないものっていうのは…つまらない者。とは言うものの、善い人!!って人に言われてる人よりかは、裏が無いって思えるのよね。船旅もね。 ----------訳者の戯言--------- 打ち解けられないだろうもの。=気が許せないもの、ということになるのでしょ…

見ならひするもの

見て真似しちゃうもの。あくび。幼児たち。 ----------訳者の戯言--------- 真似しちゃうもの。キムタク、出川、武田鉄矢、桑田佳祐、和田アキ子、森進一、田中角栄。 あくびの伝染現象については、1980年代頃から科学的な研究も進められているそうです。他…

宮仕へする人々の出で集まりて

宮仕えしてる女房たちが退出して集まってきて、それぞれが仕える主のことをお褒め申し上げて、中宮の御殿の様子や高貴な殿方のことなんかを互いに語り合っているのを、その家の主人として聞くのは面白いわ。 家が広く、きれいにしてあって、自分の親族はもち…

十二月二十四日

十二月二十四日、中宮さまの御仏名の半夜(はんや)の導師の読経を聞いてから退出する人は、もう真夜中の時間帯を過ぎてたでしょうね。 何日も降ってた雪が今日は止んで、風とか激しく吹いたもんだから、氷柱(つらら)がいっぱい長く垂れさがってて、地面な…

三月ばかり、物忌しにとて

三月頃、物忌をするために臨時の宿として人の家に行ったんだけど、木々がそんなに目立っていいのが無い中で、柳とは言っても普通の柳みたいに優美じゃなくて葉っぱが広く見た目も感じ悪くってね、「…じゃないもの、でしょ??」って言ったら、「こういうのも…

陰陽師のもとなる小童べこそ

陰陽師のところにいる小さな子どもはめちゃくちゃ物知りなのよね。お祓いなんかをしに出かけたら、陰陽師が祭文(さいもん)とか読むのを、人はただ適当に聞いてるだけなんだけど、さっと走ってって、「酒、水をかけなさい」とも言ってないのにやってのける…

雪のいと高う降りたるを

雪がすごく高く降り積もってるのに、いつもみたいにじゃなく格子を下ろしたまま炭櫃(すびつ)に火を熾して、お話をしながら集まっていたら、「少納言、香炉峰の雪はどうなのかしら?」っておっしゃるもんだから、格子を上げさせて御簾を高く上げたら、定子…

節分違へなどして夜深く帰る

節分違えなんかをして深夜に帰るのは、どうしようもなく寒くて耐えきれなくて、顎なんかが全部落ちてしまいそうなんだけど、かろうじてたどり着いて火桶を引き寄せたら、火が大きくて一切黒いところもなくて、見事に燃えてるのを細かい灰の中から掘り出した…

坤元録の御屏風こそ

坤元録(こんげんろく)の御屏風はいかしてるって思うわ。漢書の屏風は雄々しい感じだって評判なのよ。月次(つきなみ)の御屏風もいい感じなの。 ----------訳者の戯言--------- 「坤元録(こんげんろく)」というのは、中国・唐代に編纂された地誌(地理書…

神のいたう鳴るをりに

雷がものすごく鳴る時、雷鳴の陣はめちゃくちゃ物々しくて恐ろしい雰囲気なのよ。左右近衛府の大将、中将や少将なんかが清涼殿の御格子の下に参じていらっしゃるの、すごく気の毒だわ。で、雷が鳴り終わったら、大将がお命じになって「下りろ」っておっしゃ…

きらきらしきもの

光り輝く威厳のあるもの。近衛府の大将が帝の先払いをしてるの。孔雀経の読経。御修法(みずほう)。五大尊の御修法もね。御斎会(ごさいえ)。蔵人の式部の丞が白馬節会の日、大庭(おおば)を練り歩くの。その日には靭負(ゆげい)の佐(すけ)が、禁制の…

今朝はさしも見えざりつる空の

今朝はそんなふうに見えなかった空が真っ暗にかき曇って、雪が辺りを暗くして降るもんだから、すごく心細く外を見てるうちに白く雪が積もって、さらにどんどん激しく降るんだけど、随身らしいほっそりした男が傘をさして横の方にある塀の戸から入って、手紙…

つねに文おこする人の

いつも手紙を送ってくる人が、「どういうことかな? 何か言ってもどうにもならないよ、今は」って言って次の日も音沙汰が無いから、さすがに夜が明けると差し出される手紙が見当たらないっていうのは寂しいなって思ってね、「それにしても、はっきりした性格…

成信の中将は⑥ ~雪こそめでたけれ~

雪はなんたってすばらしいわ。「忘れめや」なんてひとりごとを言って、人目を忍んで逢うのはもちろんのこと、全然そんなことない女性のところも、直衣なんかは言うまでもなく、袍(ほう)も蔵人の青色とかがすごく冷たく濡れているようなのは、すごくイカし…