檳榔毛は
檳榔毛(びろうげ)の車は、ゆっくりと行かせるのがいいの。網代(あじろ)の車は走らせて来るのがいいわね。
----------訳者の戯言---------
檳榔毛(びろうげ)の車というのは、檳榔(びろう)の葉のビラビラで飾った豪華仕様の大型車です。牛車の超高級車ですね。例えればBMWの7シリーズとかベンツのSクラスとか、センチュリーとか。あるいはリムジン系でしょうか。貴人が乗るものとされています。
檳榔(びろう)っていうのは、ヤシ科の樹木で、平安時代には松竹梅よりも神聖視された植物だったそうですね。
網代車(あじろぐるま)も牛車の一種です。竹または檜の薄板を網代に組んで、屋形を覆ったものだそうで、摂政・関白・大臣・納言・大将などは略式のもの、遠出用として使ったらしいですね。フォーマルな時は檳榔毛に乗ったのでしょうけど。
四・五位、中・少将、侍従などは普通に網代車を使ったらしいです。それでもそこそこの貴族ですから、今で言うと高級車という感じではあるでしょうね。
実ははじめの頃の段に「檳榔毛はのどかに」という似たような段がありましたね。
意味はわかるのですが、あえて言うほどのことでしょうか。
【原文】
檳榔毛(びらうげ)は、のどやかに遣りたる。網代(あじろ)は、走らせ来る。