枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

よろづの事よりも④ ~御輿のわたらせ給へば~

 御輿がお通りになったら、どの車も全部轅(ながえ)を下ろして、御輿が過ぎ去られたら慌てて上げるのもおもしろいわ。見物の桟敷の前に停めてる車っていうのはめちゃくちゃ厳しく制止されるんだけど、「何で停めちゃいけないんだよ?」って強引に停めるもんだから、それ以上言うこともできなくなって、そもそもの主、車に乗ってるオーナーに交渉してるの、おもしろいわよね。停車する場所もなくって車が窮屈に並んで停まってるの、良家の車がたくさんのお供の車を従えてやって来るんだけど、どこに停めるのかな??って見てたら、前駆のスタッフたちもみんな次々と馬から下りて、停めてる車を、どんどんどかせて、お供の車までずらっと並んで停めさせたのは、すごくすばらしいの。
 追って除けさせたたくさんの車が牛をかけて、空いてるところのある方に揺れ動かされながら行くのは、めっちゃ惨めだわね。きらきらと輝いてる身分の高い人の車なんかにはそんな風にプレッシャーをかけるようなことはしないわ。
 ほんとクリーンできれいな感じなんだけど、いかにも田舎者で身分の低い者たちを絶えず呼び寄せて、外に出しては座らせたりしてる車もあるのよね。(んもう!)


----------訳者の戯言---------

轅(ながえ)というのは、牛車の前に長く突き出ている柄の部分です。これを下ろすというのが停車ということなのでしょうね。

きらきらし。「煌煌し」と書きます。「光り輝いている、威容がある」という形容詞ですが、擬態語、オノマトペの「キラキラ」と合致しているというのがここのキモです。

賀茂祭葵祭)の行列。現代は御所を出て下鴨神社上賀茂神社というコースになっています。主役は斎王代です。平安時代は、勅使が宮中を出発した後、途中で斎王と合流して下鴨神社へ向かいました。さらにその後で上賀茂神社に向かいます。
賀茂祭は代表的な勅祭であって、勅使は祭のもう一人の主役と言ってもいいかと思います。

なお、賀茂祭については「見るものは」にも、斎王、斎王代について書いています。よろしければ再読ください。

相変わらず田舎者っぽい人や身分の低い人を最後までdisりまくる清少納言。なんと後味の悪い…。
というわけで、この段はこれにて終わりです。


【原文】

 御輿のわたらせ給へば、轅どもある限りうちおろして、過ぎさせ給ひぬれば、まどひあぐるもをかし。その前に立つる車はいみじう制するを、「などて立つまじき」とて強ひて立つれば、言ひわづらひて、消息などするこそをかしけれ。所もなく立ちかさなりたるに、よきところの御車、副車(ひとだまひ)引きつづきておほく来るを、いづこに立たむとすらむと見るほどに、御前(ごぜん)どもただ下りに下りて、立てる車どもをただ除けに除けさせて、副車まで立てつづけさせつるこそ、いとめでたけれ。追ひさげさせつる車どもの、牛かけて、所あるかたにゆるがし行(ゆ)くこそ、いとわびしげなれ。きらきらしくよきなどをば、いとさしもおしひしがず。いと清げなれど、またひなび、あやしき下衆など絶えず呼び寄せ、出だし据ゑなどしたるもあるぞかし。

 

まんがで読む 枕草子 (学研まんが日本の古典)

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  • 発売日: 2015/03/17
  • メディア: 単行本