枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

よろづの事よりも③ ~物見の所の前に~

 見物のための場所、桟敷の前に車を停めて観覧するのもすごくおもしろいの。殿上人が挨拶に人を寄こしたりしてね。その桟敷の主催者が先払い担当さんたちに水飯(すいはん)を振る舞うっていうから、階段のところに馬を引き寄せたら、エエトコのお子さんなんかには雑務担当のスタッフとかが下りてきて、馬の口取りなんかするのは、いい感じね。でも良家の子じゃない者は見向きもされないのとか、かわいそう。


----------訳者の戯言---------

原文に「物見の所」とあります。これは観覧のために桟敷を架設した所だそうです。
皇族とか摂関家とかの有力者のみなさんは、概ね一条大路に面したいい場所に桟敷をつくって観覧したようですね。一族とか知人を招待したらしいです。

②で私、祭から斎王が斎院に帰還する行列では?とも書きましたが、この部分まで読む限りはどちらかはっきりはわかりません。が、桟敷をセッティングしてるということはメインイベント、祭の正規の行列、斎王渡御とみるほうがいいのかもしれません。

御前(ごぜん)というのは、前駆(さき/ぜんぐ)のことのようです。、③でも出てきましたが、先払い、先追いなどのことだそうです。貴人が道を通ったりする時に担当スタッフが声を上げて、道を空けるために人払いをしたそうで、そのことをこう言ったそうですね。

「水飯(すいはん/みずめし)」というのは、乾し飯(いい)、または普通のご飯を冷水にひたしたものだそうです。賀茂祭葵祭)の頃だとすると初夏ですから、季節的には合致しています。
「湯漬け」というものもあります。これは文字どおり、ご飯にお湯をかけたものです。お茶漬けではなく、白湯(さゆ)をかけたんですね。お茶は平安初期からあるにはあったようですが、まだお茶漬けはポピュラーではなかったようです。お茶漬けが一般化したのは、室町後期らしいですから、かなり後の時代になります。
宮仕人のもとに来などする男の」に「湯漬け」は出てきましたね。

エエトコの出の前駆のコは雑色さんたちが気を利かせて下りてきて、馬をコントロールしてくれるけど、そういう有力者の子弟じゃない前駆のコは雑色もガン無視。前駆の方々は、桟敷で振舞ってもらった水飯を馬に乗ったまま食べるようですが、同じ前駆担当でも落ち着いて食えるのはエエトコの子だけということですね。

なんか、ここでも差別が潜んでるというか、なんだかなーって感じですね。清少納言も問題意識はなし。良家の子弟が優遇されてるのは好ましい、そうじゃないコは見向きもされないでカワイソーよね、って。そりゃないでそ。

と、若干の批判を加えつつ、④に続きます。


【原文】

 物見の所の前に立てて見るも、いとをかし。殿上人物言ひにおこせなどし、所の御前(ごぜん)どもに水飯(すゐはん)食はすとて、階(はし)のもとに馬引き寄するに、おぼえある人の子どもなどは、雑色など下りて馬の口取りなどしてをかし。さらぬ者の見も入れられぬなどぞいとほしげなる。

 

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  • 作者:山口 仲美
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