枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

聞きにくきもの

 聞きづらいもの。声の悪い人がしゃべったり笑ったりなんかして打ち解けてる様子。居眠りしながら陀羅尼(だらに)を唱えてるの。お歯黒をつけながら話す声。特にいいところがない人は物を食べながらおしゃべりするものなのよね。篳篥(ひちりき)を練習してる時。  


----------訳者の戯言---------

陀羅尼(だらに)。「陀羅尼は」という段に詳しく書いています。お経とは少し違うもののようですが…。似ています。私には区別がつきません。


「お歯黒」は明治初期まで続いていた習慣でした。むし歯予防という観点からも有効だったとも言われていて、別名「鉄漿(かね)」「歯黒め」「涅歯(でっし/ねっし)」とも呼ばれていたそうです。
「和名類聚鈔」(938年刊/源順/みなもとのしたがう)の巻六には、「黒歯国 (こくしのくに)、東海中にあり。その土俗、草を以て歯を染むる故に曰く。歯黒は俗に 波久路女 (はくろめ) と云ふ。婦人黒歯具有り。故にこれを取る」の記載があります。紅(べに)や白粉(おしろい)、眉墨(まゆずみ)などもすでにありましたが、これも平安時代には貴族階級の間に広がり、男女ともに十七~十八歳で歯を黒く染め成人であることを表していたそうですね。


篳篥。「ひちりき」と読みます。ルビがなければ読めないし、もちろん書けません。
もしかするとテレビとかでご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、東儀秀樹という雅楽家がよく演奏していますから、音色は聴いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。ちなみに最近、東儀秀樹が千鳥のクセスゴに出ていました。神無月といっしょに。
というのはさておき、どういう楽器かと言いますと、リード楽器です。西洋楽器で言うと、ダブルリードで吹く木管楽器ということでオーボエに近く、滑らかに旋律を吹くという印象ですね。

陰陽師」に出てくる安倍晴明の盟友・源博雅(みなもとのひろまさ)も実は篳篥(大篳篥)の名手だったそうです。実際の博雅は元々皇籍にありましたが臣籍降下した公卿で雅楽家。実際に安倍晴明と関りがあったかどうかは不詳のようですが。
NHK版では杉本哲太(晴明役は稲垣吾郎)、テレ朝版では堂本光一(晴明役は市川染五郎=十代目松本幸四郎)、映画は伊藤英明(晴明役は野村萬斎)でした。個人的にですが、杉本哲太のが雅楽師としてはまっていた印象があります。横笛をよく吹いていました。

ということで、篳篥(ひちりき)のことは以前「笛は」という段でも書きました(重複あります)ので、よろしければご一読ください。


ことなることなき人=特にいいところがない人、ということでしょうか。今の表現で言うなら、取るに足らない人、普通の、これといっていかしてるところのない人っていうことなのでしょう。えらく上から目線です。そういう人は「物を食べながらおしゃべりする」という決め付けも酷いですね。


聴き苦しいもの、聴き取りにくい音声、耳障りな音なんかについて書いているのですね。
「声が悪い人」はわかります。聴きづらいし、不愉快だというのでしょう。そして「何かをしながら~の声」ですね。篳篥の練習もどうもイカンらしいです。これもまた何様?っていう感じですが。


【原文】

 聞きにくきもの 声憎げなる人の物言ひ、笑ひなど、うちとけたるけはひ。眠(ねぶ)りて陀羅尼読みたる。歯黒(はぐろ)めつけて物言ふ声。ことなることなき人はもの食ひつつもいふぞかし。篳篥(ひちりき)習ふほど。