枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

夏のしつらひは

 夏のしつらひは 夜。冬のしつらひは 昼。


----------訳者の戯言---------

「しつらい」というのは設備や装飾、調度類を整え、室内を飾ることです。
ご存じのとおり、「しつらふ(設ふ)」が飾り付ける、設備を整える、という意味の動詞で、動詞の連用形の名詞化(設ふ→設ひ)によって生まれた言葉ですね。当て字として、室礼、補理、舗設(いずれも「しつらい」)などの表記がありますが同じ意味です。

現代でも部屋などを整え、飾りつけることを「しつらい」「しつらえ」などと言います。どちらが正しいのか迷いますが、今はどちらでも間違いではないようですね。先に述べたように元々は「しつらい」なのでしょう。私見ですが「しつらえ」のほうは誤用が一般化したのだと思います。乗り換える、誂える、甘えるなどの動詞の連用形が名詞化し語尾が「え」となるもの(乗り換え、誂え、甘えなど)が多数あるので混同したんでしょうね。

そもそも、「設ふ」という行為は、宴や儀式などを行うハレの日に、お屋敷の部屋(母屋や庇など)に調度類を置いて室内を装飾したということなんだそうです。今で言うなら、特別な日のインテリアコーディネートという感じでしょうか。
「しつらひ」はファッションなどとともに、女性のマインドやセンスを際立たせる重要なポイントだったのでしょう。
今も昔もおもてなしの装いや室内装飾は重要です。ホスピタリティの現れであり、教養と言っていいのかもしれません。


というわけで、夏のしつらいは夜を重視すると。逆に冬は昼重視ということのようです。

夏は昼間が長いです。逆に言うと夜は短いはずなんですよね。しかし夏の夜は暑くて眠れないし、開口部を開け放すことも多いでしょうから人目にも触れやすいです。
「夏は、夜」と枕草子冒頭「春はあけぼの」の段でも書いてるとおり、風情があるのだからちゃんとしないとね、ってことなのでしょうか。

対して冬の夜は寒いから早々と寝てしまうのでしょうか。部屋も閉め切りますしね。たしかに冬の夜なんかは動くのも億劫です。どっちかというと昼間の活動を重視したのかもしれませんね。


【原文】

 夏のしつらひは 夜。冬のしつらひは 昼。