枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

賀茂へまゐる道に

 賀茂神社への参道で、田植をするってことで、女たちが新しい折敷(おしき)のようなものを笠にして被って、すごく大勢で立って歌を歌ってるの。身体を折って伏せるようにして、また何をしてるのかも見えないまま、後方に下がってくのよね。どうしたんでしょう?? おもしろいなぁって見てると、郭公(ほととぎす)に対してすごく失礼に歌うのが聴こえたもんだから、心苦しくって。
 「ほととぎす お前 あいつよ! お前が鳴くから 私は田植えをするんだよ」って歌うのを聴いたら、いったいどんな人が「そんなに鳴くな!」なんて言ったことがあるかしら? 誰も絶対言わないわよ! 仲忠の生い立ちをdisる人と、郭公が鶯に劣るっていう人は、めちゃくちゃ情けなくって、憎ったらしいのよね。


----------訳者の戯言---------

折敷(おしき)というのは、お盆です。調べると四角いものが多いですが、「笠にかぶる」という表現が出てきますから、円形っぽいものだったのかもしれませんが、四角のままだったかもしれません。まあ、どっちでもいいです。清少納言が見たものを書いただけですから、確証無いですもんね。

「なめう」というのは、「なめし」の連用形「なめく」がウ音便化したものだと思います。
「なめし」は「無礼だ」「不作法だ」という意味のようです。

仲忠?って何だったっけ? 何か見たことあるなーと思って、自らの記事を検索したら、つい1カ月半ぐらい前に書いてました。「宇津保物語」の主人公の名前でしたね。藤原仲忠(ふじわらのなかただ)です。すぐ忘れますね、私。いかんいかん。
仲忠は不遇な生い立ちで、つまりその幼少期、みすぼらしかったのを、結構悪く言う人がいたようですね。高貴に生まれた人が高貴に育つ、っていうのがベスト、と思ってるおバカさんが多かったんでしょうね、平安時代は。たとえ主人公でも身分が低くてみすぼらしいのは悪だと。さすが、おもいっきり差別社会です。

「宇津保物語」については、「かへる年の二月廿余日⑤」「物語は」に詳しく書いてますので、ぜひ参照してください。清少納言は仲忠押しみたいです。

清少納言的には、ホトトギスをdisられるのも許せないようですね。特にウグイスと比較して貶す人はアカンようです。そんなの好きずきだと思うんですけどね。なかなかの狭量っぷりです。


【原文】

 賀茂へまゐる道に、田植うとて女の新しき折敷(をしき)のやうなるものを笠に着て、いと多う立ちて歌をうたふ。折れ伏すやうに、また何事するとも見えで後ろざまに行く。いかなるにかあらむ。をかしと見ゆるほどに、ほととぎすをいとなめう歌ふを聞くにぞ心憂き。「ほととぎす、おれ、かやつよ。おれ鳴きてこそ、我は田植うれ」と歌ふを聞くも、いかなる人か「いたくな鳴きそ」とは言ひけむ。仲忠(なかただ)が童生(わらはお)ひ言ひ落とす人と、ほととぎす鴬に劣ると言ふ人こそ、いとつらうにくけれ。

 

枕草子 上 (ちくま学芸文庫)

枕草子 上 (ちくま学芸文庫)