枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

祭のかへさ、いとをかし② ~いつしかと待つに~

 いつなんだろう?って待ってたら、御社の方から赤衣(あかぎぬ)を着た者たちが連れ立ってやって来たから、「どうなってるの? 準備はOKなの?」って言ったら、「まだっすよ、いつのことだかなぁ」なんて答えて、御輿なんかを持ってくの。斎王があの御輿にお乗りになるのかな?って想像したら、すばらしく高貴で気高く思えて、なんであんな身分の低い者なんかがお側近くにお仕えしてるのかしら?って、コワイ気がするわ。

 アイツら、まだまだ遥か先のことみたいに言ってたけど、間もなく斎王は斎院にお帰りになったのよね。女房の扇をはじめとして、青朽葉の着物が、すごくいい感じに見えてね、蔵人所のスタッフが青色の上着に白襲(しらがさね)の裾をほんの少し帯にかけてるのは、まるで卯の花の垣根みたいに思えて、郭公(ほととぎす)もその陰に隠れてしまいそうにも見えちゃうの。
 昨日は車一台に大勢乗って、二藍の袍、それに同じ色の指貫をはいて、もしくは、狩衣なんかをルーズに着て、簾(すだれ)を外しちゃって、頭おかしんじゃね?っていうぐらいにさえ見えた若君たちが、斎院の宴のお相伴役にっていうから正式の束帯をきちんとつけて、今日は一人ずつ寂しい感じで乗ってる後部座席にカワイイっぽい殿上童を乗せてるのもいかしてるのよね。


----------訳者の戯言---------

赤衣(あかぎぬ)というのは、赤い狩衣です。検非違使という治安維持担当の下級役人が警護の時に着ていた服のようですね。
しかし、相変わらず身分の低い人たちに対して完全に上からです、清少納言中宮に仕えてるかどうか知りませんけど、そういう態度よろしくないですよ。

袍(ほう/うへのきぬ)は上着的なもの。白襲(しらがさね)はシャツ的なものです。

垣下(えが)というのは、斎院の饗宴のお相手役だそうです。
殿上童というのは、10歳くらいから清涼殿の殿上の間に出入りを許された身分の高い朝臣の家の子弟のことを言うそうですね。

ええとこのボンボンたちが、昨日は車に乗ってイエ~イ的にはしゃいでたのに、今日は斎院の格調高い晩餐会に呼ばれたっていうんで、正装してシュンとしてるっていうことですかね。


この部分は、行列の様子を描写している感じでもありますね。専門家の方やファンの方は、情景模写が映像的で優れているとか、色彩感覚が瑞々しく…とか言われるのでしょうけど、私は身分の低い者に対するヘイトと、身分の高いボンボンたちへの寛容さの対比が凄まじいと思いましたね。
よく言うでしょ、足を踏まれてるものは痛いけど、踏んでる方はなーんとも思ってない、ってね。無自覚は悪ですよ。
③に続きます。


【原文】

 いつしかと待つに、御社の方より赤衣うち着たる者どもなどのつれだちて来るを、「いかにぞ。事なりぬや」といへば、「まだ、無期(むご)」などいらへ、御輿など持て帰る。かれに奉りておはしますらむもめでたく、け高く、いかでさる下衆などの近く候ふにかとぞ、おそろしき。

 遥かげに言ひつれど、ほどなく還らせ給ふ。扇よりはじめ、青朽葉どものいとをかしう見ゆるに、所の衆の、青色に白襲をけしきばかり引きかけたるは、卯の花の垣根近うおぼえて、ほととぎすもかげに隠れぬべくぞ見ゆるかし。

 昨日は車一つにあまた乗りて、二藍の同じ指貫、あるは狩衣など乱れて、簾解きおろし、もの狂ほしきまで見えし君達の、斎院の垣にとて、日の装束うるはしうして、今日は一人づつさうざうしく乗りたる後(しり)に、をかしげなる殿上童乗せたるもをかし。

 

枕草子 いとめでたし!

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