枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

五月四日の夕つ方

 五月四日の夕方、青い草をいっぱい、すごくキレイに切りそろえて、左右の肩にかついで、赤衣(あかぎぬ)を着た男が歩いて行くのって、いい感じだわ。


----------訳者の戯言---------

端午の節句(五月五日)の前日の夕方ですから、節句、節会の準備なんでしょうね。
「青い草」は何なのでしょうか。よくわかりません。ただ、「草は」の段で筆頭に出てきたのが菖蒲でしたし、菖蒲の葉はそこそこ長いですから「担ぐ」という表現が妥当です。他に相当するような草は知りませんし、ワタクシ的にはやはり菖蒲としていいと思います。

専門家と呼ばれるような方でも、「青い菖蒲の花をたくさん綺麗に切りそろえて、赤い衣を着た男が両肩にかついで歩く姿がステキ!」のような訳をするケースがありますが、私はそれには懐疑的なんですね。この段では、決して花をつける「あやめ」ではない、ショウブ科の「菖蒲」と解釈すべきだと思います。

毎回書いてますが、「菖蒲」と「あやめ」は、たしかにややこしいんです。ショウブ科の「菖蒲」は「ショウブ」なんですが、「アヤメ」と読む場合もありますしね。ま、その辺について詳しくは「心にくきもの② ~夜いたくふけて~」の「訳者の戯言」にいろいろ書いています。よろしければお読みください。

そして。
赤衣というのは、検非違使という治安維持担当の下級役人が警護の時に着ていた赤い狩衣のようですね。赤衣を着た男性は、清少納言から見ると「身分の低い者」ですから、単純に「ステキ!」とはならないでしょう。

むしろ、端午の節句前日の夕方、そういう赤衣の男たちが菖蒲を担いで行く…。
清少納言がいいと思ったのは、そういうシチュエーション全体、シーンそのものと考えるほうが妥当です。それぐらい、端午の節句と、その頃の雰囲気が好きなのでしょう。

併せて「節は五月にしく月はなし」もお読みいただければ、おわかりいただけるかと思います。


【原文】

 五月四日の夕つ方、青き草おほくいとうるはしく切りて、左右(ひだりみぎ)担(にな)ひて、赤衣着たる男の行くこそをかしけれ。

 

学びを深めるヒントシリーズ 枕草子

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