枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

八月つごもり

 八月の末、太秦広隆寺)にお参りするってときに、見たら、穂が出てきた田を、人がすごく大勢で見て騒いでるの。稲刈りをしてたのね。
 「早苗取りしかいつのまに(早苗を取って植えたけど、いつの間に~)」ってホント、この前、賀茂神社へ参詣しようって(田植えを)見たんだけど、(もうこんな季節?って)しみじみ感じ入っちゃうのよねぇ。今度は男たちが、すごく赤くなってて根もとは青い稲を手に取って刈るの。どうなってるの?って方法で、根もとを切る様子が簡単そうで、やってみたい感じにも見えるわね。どうしてそんなコトやってるのかしら? 穂を地面に敷いて並んで座ってるのも、おもしろいの。仮小屋の様子なんかもね。


----------訳者の戯言---------

八月つごもりですから、ちょうど今頃の時期です。今年は今日10月16日が旧暦8月の晦日みそか)ですから、今年ならまさに今日。ピッタリじゃないですか!

太秦にお参り、ということです。前の段は賀茂神社でした。太秦は今は時代劇の撮影所にして映画村があることで有名ですが、広隆寺という大きなお寺のあるところでもあります。その行く道、途中で見かけた光景のようです。
うずまさんぽ、ですね、一種の。太秦で役者やらせてもろてます、岸大介。空き時間83時間ありますねん、てね。シャツはSSですわ。新しいパン屋できたんでフィレオフィッシュ3つ買いましてん。「岸大介の男くノ一」に主演しとります。
って、めちゃくちゃ逸れました。


「早苗取りしかいつのまに」というのは、古今和歌集に採られている和歌の一部分です。いつものことですが、清少納言、知識自慢ぶっこんできてますね。

きのふこそ早苗とりしかいつのまに 稲葉そよぎて秋風の吹く
(きのう早苗を取って植えたと思ったけど、いつの間になんでしょ? 稲の葉がそよぐ秋風が吹いてるんだよね)

早苗(さなえ)というのは、苗代から田へ植えかえるころの稲の苗のことを言うらしいです。女性の名前でよく目にしますが、男性の名前でも時々はあるようですね。素朴でいて可憐な感じのする良い言葉であり、名前であると思います。ただ、前総務大臣高市早苗を思い出すと、そうでもないかーとも思いますが。

庵(いほ)。庵(いおり)です。農作業のために草木などで造った仮小屋をこう言ったそうですね。で、「いほ」と聞くと、有名な和歌を思い出しました。

秋の田のかりほの庵のとまをあらみ わが衣手は露にぬれつつ
(秋の田に作った刈り穂の(仮の!)小屋の苫(とま)が荒いから、私の衣の袖は露で濡れていることだよ)

天智天皇の詠んだ超有名な歌で、百人一首にも入っています。天智天皇というと、あの中大兄皇子ですね、元ですが。中大兄皇子と言えば、仲良しの中臣鎌足と共謀して蘇我入鹿を暗殺した、あの大化の改新で有名ですね。あと、弟の大海人皇子額田王を取り合った三角関係だったとか、そのせいで大海人と不仲だったとか、いろいろあるようです。
さておき、この「秋の田の~」の歌は、ほんとに本人の作?という説もあるようですね。似たようなのが、万葉集にあるんですよ。パクリ疑惑?という話です。まるでサノケンですね。佐野研二郎。みなさん忘れてると思いますが、東京オリンピックのシンボルマーク他諸々パクった人ですよ。佐村河内さんではないですよ。あれはゴーストライター、嘘つきです。嘘つきって意味ではおんなじですか。

秋田刈る仮いおを作り我が居れば 衣手寒く露ぞ置きにける
(秋の田を刈る仮小屋を作ってそこに私がいるから、衣の袖は寒くって露も降りたんだよね)

天皇ですから、たぶん農作業はしないですしね。シモジモの者の気持ちがわかるいい帝、というイメージ戦略かもしれません。


そもそも天智天皇の話ではありませんでしたね。すみません。
この段は前段の「賀茂へまゐる道に」の続編のようです。

今回は男性の稲刈りなんですね。たぶん鎌(かま)を使ってやってたのだと思いますが、知らないんですね、貴族とかは。鎌は石器時代からあったらしいのに。万葉集とか古今集の歌は知ってるけど、稲刈りの仕方は知らない。それってどーよと思いますね。
支配階級が無知だとほんと困るんですけど。のどかな農村風景の描写の裏に社会問題、政治問題が露呈してしまってます。清少納言は全く気付いてないですけどね。
多少なりとも民に対して意識のある天智天皇のほうがまだマシかもしれません。


【原文】

 八月つごもり、太秦に詣づとて見れば、穂に出でたる田を人いと多く見騒ぐは、稲刈るなりけり。「早苗取りしかいつのまに」、まことにさいつころ賀茂へ詣づとて見しが、あはれにもなりにけるかな。これは男(をのこ)どもの、いと赤き稲の本(もと)ぞ青きを取りて刈る。何にかあらむして本を切るさまぞ、やすげに、せまほしげに見ゆるや。いかでさすらむ、穂をうち敷きて並みをるも、をかし。庵(いほ)のさまなど。