枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

一条の院をば今内裏とぞいふ② ~すけただは木工の允にてぞ~

 藤原輔尹(すけただ)は木工寮の允(じょう=三等官)だった人で、蔵人になったの。すごく荒々しくって異様な感じだから、殿上人や女房が「あらはこそ」ってあだ名を付けてたの、それを歌にして、「比類なきお方だこと~、尾張の人の子孫なんだから~」って歌うのは、尾張兼時の娘の子どもだからなのね。この歌を帝が笛で演奏なさるのを、お側で控えてて、「もっと大きな音でお吹きになってください。彼には聴こえないでしょうから!」って申し上げたら、「どうかな? でも聞いて知られちゃうだろうしね」って、普段はこっそりとお吹きになるんだけど、あちらの御殿からこっちにやって来られて、「彼はいないね、今こそ吹こう!!」っておっしゃって、お吹きになるのはすごく素敵なの。


----------訳者の戯言---------

藤原輔尹(ふじわらのすけただ)という人がいたようです。

木工の允(もくのじょう)は、木工寮(もくりょう)の第三等官です。大、少の別があるらしい。
木工寮は宮廷の建築・土木・修理を一手にひきうけた役所で、具体的には宮殿の建築・修理、都の公共施設の修理、木器などの木製品の製作などを司りました。

「あらはこそ」。丸見え、とか、遠慮なし、みたいなイメージだと思います。一種のあだ名ですよね。disってます。「マルミエくん」とか、「遠慮ねーヤツ」とかですか。ところで「マルミエくん」はゆるキャラでいるようですね。

尾張氏(おわりうじ)は、「尾張」を氏の名とする氏族です。ま、姓ですね。元々は尾張の国を支配した一族の流れを汲んでいます。ご存じのとおり、尾張というのは今の愛知県の西部。戦国時代で言うと織田信長の出身地です。

ま、本人にも問題はあったようですが、それを尾張の人の子孫だからとdisられるのもどうかと思いますがね。地方差別です。

みそかに」は、「こっそり振る舞っている。ひそかだ。」という意味の「みそかなり(密かなり)」の連用形です。


というわけで、藤原輔尹という、なんかちょっとヤな感じの人を、みんな嫌ってて、あだ名を付けて、歌にまでして…みんなでdisってるという、そういう後半です。しかも帝まで。
いくら気に入らない人でも、それはないでしょ。

しかもそのdisりソングを笛で奏でる帝。それを絶賛する清少納言。ハァ?って感じです。ハラスメント? イジメ?
前半でちょっとしんみりした感じもありましたが、あれで終わってればね。後半で台無し。


【原文】

 すけただは木工(もく)の允(じよう)にてぞ蔵人にはなりたる。いみじくあらあらしくうたてあれば、殿上人、女房、「あらはこそ」とつけたるを、歌に作りて、「双(さう)なしの主(ぬし)、尾張人(をはりうど)の種にぞありける」と歌ふは、尾張の兼時がむすめの腹なりけり。これを御笛に吹かせ給ふを、添ひに候ひて、「なほ高く吹かせおはしませ。え聞き候はじ」と申せば、「いかが。さりとも、聞き知りなむ」とて、みそかにのみ吹かせ給ふに、あなたより渡りおはしまして、「かの者なかりけり。ただ今こそ吹かめ」と仰せられて吹かせ給ふは、いみじうめでたし。

 

まんがで読む 枕草子 (学研まんが日本の古典)

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  • 発売日: 2015/03/17
  • メディア: 単行本