枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど② ~まだこなたにて~

 まだこちらで定子さまが御髪なんかのお手入れをしてる時、「淑景舎の方は見たことがあるのかしら?」とお聞きになったので、「まだですが、どうしたらお目見えできます? お車寄せの日、後ろ姿をちょっとだけなので」って申し上げたら、「その柱と屏風のところに寄って、私の後ろから、こっそり見なさい。すごくかわいいコなんだから」っておっしゃるのが、うれしくって、見たくって見たくって、早くその時が来て!って思うの。

 定子さまは、紅梅の固紋、浮紋のお着物を、紅色の打衣を三重にしたものの上に、ただ引き重ねてお召しになってるの。「紅梅には、濃い色の衣を合わすのがおしゃれなの。でも着られないのが悔しいわ。私の今の齢なら紅梅色の着物は着ないほうがいいのよね。でも萌黄色なんかは好きじゃなくってね、紅色には合わないだろうから」なんておっしゃるんだけど、ただただすごくすばらしく、お召しになっていらっしゃるとしか見えなくて。着ていらっしゃる衣の色が特別で、そのままお顔の色ともよく似合っていらっしゃって、やはりもう一人の素敵な方(妹君)も、こんな感じでいらっしゃるのかしら、って想いが募るわ。


----------訳者の戯言---------

みそかに。「こっそりと」ですね。「密かなり」の連用形です。

「固紋」ですが、織物の紋様を、糸を浮かさないで、 かたく締めて織り出したものだそうです。はぁ、何となくわかりますが、それほど興味がありません。すみません。
「浮紋」は地糸を浮かせることで文様を表すもの。「固紋」の反対というか、相対する織物だと思われます。ま、どっちも高級品なのでしょう。中宮さまがお召しになるものですからね。

紅梅色はこんな色です。ピンクですね。私が見たところ、結構濃いピンクだと思いました。当時中宮定子はまだ17、8歳とかで、まだ二十歳にはなってなかったはずです。そんな若いのに「もう紅梅色が似合わない年齢になっちゃった」みたいなこと言ってます。
年齢相応とされている?萌黄色(黄緑)なんかは好きじゃなかったようですね。
ちなみに「濃色」「紅色」はこんな色です。

このシーン、意外とわかりづらいですね。
まず、定子は赤(紅色)の服を着て、それにピンク(紅梅)の上着を引っ掛けています。同系色の濃淡でコーディネート、ワタクシ的にはあまり好きではないですが、アリといえばアリでしょう。
で、おっしゃるのは「ピンクには濃い紫がよく合うんだけどね、でも着られないのがくやしい」と。
うーん、なんで? と思います。好きなの着たらいいじゃん、中宮なんだから。そもそも濃い紫でなく、なんで中の衣に赤を着てるのかがわかりません。誰か教えてください。着たかったから? そうですか。
たしかにパープル系のグレーにピンク、そのほうがカラーコーディネート的にはいいです。一応はわかってるのね。

先にも書いたとおりピンク(紅梅色)は着られない(着ない方がいい)齢とのこと。私は着てもいいと思いますが、それは当時の文化なので仕方ないとしても、萌黄だけdisるのもまた不可解。ピンクがだめで黄緑(萌黄)が赤に合わないから好きじゃないっていうのなら、それ以外で探せばいいと思います、中宮なんだから。
たしかに赤に黄緑は補色関係にあるのでトーンがうまく合えばすごくいい色合わせになりますが、下手をするとハレーション起こします。諸刃の剣ですね。

で、結局、ごちゃごちゃ弁解してますが、「今着ているとおり、赤い打衣にピンクの上着を着たい」ということですね。めんどくせー奴。失礼しました、中宮様でしたね。

原文の「匂ひ」は以前にも出てきました。今でいう「匂い」だけでなく「色あい、色つや」のことを表すことも多いです。

というわけで、清少納言中宮定子を例によってめちゃくちゃ褒めながらも、妹君にも会いたい!と、テンション上がり気味。
③に続きます。


【原文】

 まだこなたにて御髪など参るほど、「淑景舎は見奉りたりや」と問はせ給へば、「まだ、いかでか。お車よせの日、ただ御後ろばかりをなむ、はつかに」と聞こゆれば、「その柱と屏風とのもとに寄りて、我が後ろよりみそかに見よ。いとをかしげなる君ぞ」とのたまはするに、嬉しく、ゆかしさまさりて、いつしかと思ふ。

 紅梅の固紋、浮紋の御衣ども、紅の打ちたる、御衣三重が上にただ引き重ねて奉りたる。「紅梅には、濃き衣こそをかしけれ、え着ぬこそ口惜しけれ。今は紅梅のは着でもありぬべしかし。されど、萌黄などの憎ければ、紅には合はぬか」などのたまはすれど、只いとめでたく見えさせ給ふ。奉る御衣の色ことに、やがて御形の匂ひ合はせ給ふぞ、なほ他(こと)よき人(=妹君)も、かうやはおはしますらむとぞ、ゆかしき。


検:淑景舎、春宮にまゐりたまふことなど 淑景舎、東宮にまゐりたまふことなど

 

枕草子 (まんがで読破)

枕草子 (まんがで読破)