枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

2020-01-01から1年間の記事一覧

好き好きしくてひとり住みする人の

色好みで独身の男性が、夜はどこに行ってたんでしょ? 夜明け前に帰って来て、そのまま起きてるから、眠そうな感じに見えるんだけど、硯を手元に持ってきて、墨をていねいにすって、何となく筆の進むままテキトーにとかじゃなく、気持ちを込めて手紙を書いて…

八月ばかりに

八月の頃、白い単衣の柔らかい着物に良質な袴をはいて、紫苑色ですごく上品なのを羽織ってるんだけど、胸をひどく患ってるものだから、友達の女房たちが次々にやってきてお見舞いをして、外の方にも若々しい貴公子たちがたくさんやって来て「すごくお辛そう…

十八九ばかりの人の

18、9歳ぐらいの人で、髪がすごくキレイで背丈くらいあって、裾はすごくふさふさしてて、とてもよく太ってて、めっちゃ色白で、顔がかわいくて、素敵って見える女子が、歯をひどく患って、額の髪も涙でびっしょり泣き濡らし、髪が乱れて顔にかかってるのも気…

病は

病気は、胸の病。物の怪。脚気。それから、ただなんとなく食欲がない気分。 ----------訳者の戯言--------- だいたい枕草子で、こういう風に「〇〇は」と書きだした場合は、いい感じのもの、「をかし」的なものを列挙していきます。ということは、「病」の場…

かしこきものは

たいした者は、乳母(めのと)の夫だわよね。帝や親王たちなんかのケースは、当然そういうものだから、申し上げるべきことでもないわ。その次、また次のレベル、受領の家なんかでも、その場所にふさわしい態度で人に接するのを求められてるもんだから、彼ら…

位こそなほめでたき物はあれ

「位」っていうのは…。やっぱりすばらしいものだよね! 同じ人でも、大夫の君、侍従の君とかって申し上げる時は、結構侮りがちなんだけど、中納言、大納言、大臣とかにおなりになったら、やたらと邪魔するものもなくなって、ご立派にお見えになることと言っ…

したり顔なるもの

得意げな顔をした者。 1月1日に最初にくしゃみをした人。身分の高い人はそういうこともないんだけど。身分の低い者よ。 蔵人を選任するのに、競争率が高い時、子どもが蔵人になった人の様子。また、除目でその年いちばんの国への赴任が決まった人。お祝いな…

宮にはじめて参りたるころ⑧ ~物など仰せられて~

お話なんかをなさって、「私のことを想ってくれるかしら?」ってお尋ねになったの。その返事に、「もちろんです」って申し上げるのに合わせて、台盤所のほうで誰かが大きなくしゃみをしたから、「あら、いやだ。嘘を言ったのね。もういいわ、いいんです」っ…

宮にはじめて参りたるころ⑦ ~ひとところだにあるに~

大納言殿お一人でもこんななのに、また先払いをさせて、同じ直衣の人が参上なさって。この人はもう少し華やかな感じで、猿楽言(さるがうごと)なんかをおっしゃるの、女房たちは笑って、おもしろがってね。「私も、誰それが、こんなことをね」なんて殿上人…

宮にはじめて参りたるころ⑥ ~久しくゐ給へるを~

伊周さまが長時間いらっしゃるのを見て、それって思いやりがないことで、私が苦痛に思ってるだろうっておわかりになったんでしょうね、定子さまが「これをご覧になって! これは誰が書いたものかしら?」っておっしゃたんだけど、「いただいて拝見しましょう…

宮にはじめて参りたるころ⑤ ~御帳の後ろなるは~

「御几帳の後ろにいるのは誰なの?」って、大納言さま、お尋ねになったみたいで。興味をそそられるようなことを言われたに違いないわね、立ってらっしゃるから他に行くの行くのかしら?って思ってたら、すごく近いところにお座りになって、話しかけてこられ…

宮にはじめて参りたるころ④ ~大納言殿の参り給へるなりけり~

(関白殿ではなく)大納言(藤原伊周)殿が参上なさったの。直衣、指貫の紫の色が、雪に映えてすごく素敵なのよ。柱のたもとにお座りになって、大納言殿、「昨日今日と物忌みだったんですが、雪がひどく降りましたから、気になりましてね」と申し上げなさっ…

宮にはじめて参りたるころ③ ~昼つ方、今日は~

お昼頃になって、「今日は、やっぱり来て。雪で曇ってるから、ハッキリとは見えないでしょうしね」とかって、何度もお呼び出しになるもんだから、私の局の主(あるじ)も、「見苦しいわよ。どうしてそんなに引き籠ってるの?? どうしようもないくらいすんな…

宮にはじめて参りたるころ② ~暁にはとく下りなむと~

夜明け前には、自分の部屋に下がりたいって気が焦ったわ。「葛城の神でも、もうちょっと…」なんておっしゃるから、何とかして斜めからもご覧になれないようにって、やっぱり顔を伏せたままでいたら、御格子もお上げなさらないの。女性スタッフたちたちが参上…

宮にはじめて参りたるころ①

中宮(定子)さまにお仕えをはじめた頃、恥ずかしいこと数知れずで、涙も落ちてしまいそうだから、毎晩参上して、三尺(約90cm)の御几帳の後ろに控えてたら、定子さまが絵なんかを取り出しお見せ下さったったんだけど、手も差し出せないくらい、たまらなく…

御形の宣旨の

御形の宣旨(みあれのせんじ)が、帝に、五寸(約15cm)ほどの殿上童のすごくかわいい人形を作って、みずら(角髪)を結って、着物なんかもオシャレにして、中に名前を書いて差し上げたんだけど、「ともあきらの大君」って書いてあったの、すごく面白がられ…

村上の前帝の御時に

前の帝、村上天皇の御代に、雪がたくさん降ったのを器にお盛りになって、梅の花を挿して、月がすごく明るかったんだけど、「これをテーマに歌を詠んでみて。どんな風に表現するかな?」って、兵衛の蔵人にお題を下されたんだけど、「雪月花の時」って申し上…

雪のいと高うはあらで

雪がそんなに高くはなくて、薄っすらと降ってるのは、すごく趣があっていいの。 また、雪がすごく高く降り積もった夕暮れから、部屋の端近くで、気の合う人2、3人ほどが火桶を真ん中に置いておしゃべりなんかしてたら、暗くなったんだけど、こっち側には灯り…

ある所に、なにの君とかや

「あるところ…ナントカの君とか言った女性のところに、良家の貴公子っていうほどではないけど、当時すごい風流人で抜群にセンスのいい人が、9月頃に訪れて、有明の月がすごく霧が立ち込めてて綺麗だったもんだから、彼が『今宵の名残りを、思い出してくれま…

宮仕人の里なども③ ~夜中、暁ともなく~

夜中も明け方も関係なく、門もそれほどは気にしないでいて、どこどこの宮様、宮中や、その他の身分の高い方々に仕えてる女房たちも集まってきて、格子窓なんかも上げて、冬の夜、座って夜明かしして、彼氏が家を出た後をながめている様子っていい感じがする…

宮仕人の里なども② ~この人の供なる者どもは~

この客人のお供のスタッフたちは嘆く風でもなくってね、このお客さんもう帰るのかなー、って、何回も何回も絶え間なく覗きに来て様子を伺ってる者たちを、笑ってるみたいなの。彼のお供たちが(この家の者たちの)口真似をしてるのなんか聞かれたりしたら、…

宮仕人の里なども①

宮仕えしてる人の実家なんかも、親が二人とも揃ってるのはすごくいいの。人がしょっちゅう出入りして、奥の方でたくさんの人の色々な声が聞こえて、馬の音なんかして、すごく騒がしいくらいなんだけど、それは悪いことじゃないわ。だけど、ナイショにしてて…

女のひとりすむ所は

女性が一人で住むところは、すごく荒れていて、屋根付きの築土塀とかだってカンペキに整ってなくて、池なんかあるところにも水草が生えてて、庭なんかも蓬が生い茂るっていうほどじゃないけど、ところどころ砂の中から青い草が見えて、寂しそうなくらいのほ…

六位の蔵人などは

六位の蔵人なんかは、こんなコト、心に思い描くべきもんじゃないわよね。 ……五位に叙せられて、どこかの国の権の守(ごんのかみ)や、大夫(たいふ)とかに…っていう人が、板葺きの狭っくるしい家を持って。また、小檜垣(こひがき)なんていうのを新しくし…

女は

女なら、内侍典(ないしのすけ)。内侍。 ----------訳者の戯言--------- 内侍典(ないしのすけ)というのは、内侍司(ないしのつかさ)という役所の典(すけ)。次官です。 内侍司というのは、帝の近くに侍って、勅旨(帝のお言葉)を官人などに伝えたり、…

法師は

法師というと。律師。内供(ないぐ)。 ----------訳者の戯言--------- 律師というのは、徳が高く人々から慕われる僧侶に対する尊称としても使われたそうですが、僧侶の位の名前でもあります。僧正が最高位、その次が僧都なんですが、さらにそれに次ぐ位が律…

大夫は

大夫(たいふ)は……。式部の大夫。左衛門の大夫。右衛門の大夫。 ----------訳者の戯言--------- 大夫(たいふ)というのは、五位以上の男性官吏のことを言います。一種の敬称です。「上達部は」の段で出てきた「春宮の大夫」のような官職としての「大夫」は…

権の守は

権の守(ごんのかみ)でいいのは…。甲斐。越後。筑後。阿波。 ----------訳者の戯言--------- さて、国司、特にその長官である守(かみ)の権官「権の守」です。「上達部は」の段でも書きましたが、藤原氏をはじめとして、大臣経験者のいるセレブリティの子…

受領は

受領やるなら。伊予の守。紀伊の守。和泉の守。大和の守。 ----------訳者の戯言--------- 受領(ずりょう)。何か聞いたことはあるけどー、みたいな言葉ですね。というか、地方のまあまあ偉い役人、ぐらいの認識です。私だけですか。 一応、朝廷が治める中…

君達は

君達(きんだち)っていうと、頭の中将。頭の弁。権の中将。四位の少将。蔵人の弁。四位の侍従。蔵人の少納言。蔵人の兵衛の佐。 ----------訳者の戯言--------- 君達っていえば?という段ですね。君達(きんだち/きみたち)というのは、高貴な家柄の子ども…