枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

宮仕人の里なども①

 宮仕えしてる人の実家なんかも、親が二人とも揃ってるのはすごくいいの。人がしょっちゅう出入りして、奥の方でたくさんの人の色々な声が聞こえて、馬の音なんかして、すごく騒がしいくらいなんだけど、それは悪いことじゃないわ。だけど、ナイショにしてても、公然だったにしても、「実家に戻ってらっしゃるってコト、知らなかったし」とか、また「いつ宮中に戻って来られるの?」とかって、顔を出しにやってくる男子もいるのよ。

 好意を持ってくれてる男子なら、そりゃ来ないはずないわよね。門を開けたりしたら、やたらと騒がしくて大げさな感じになっちゃって、えー夜中までー??なんて、家の者みんなが思ってる様子。まったくもって気に入らないわ! (家人が)「門のカギはきっちりかけたの?」なんて聞いたら、「今はまだ客人がいらっしゃいますから」とかっていう使用人がちょっと迷惑そうな感じで返事するんだけど、(家人は)「じゃ客人がお帰りになったら、早く閉めて! この頃は盗人がめちゃくちゃ多いからね。火事も心配だし!!」なんて言うんだけど、かなり不快で。それ、聞いてる男子(彼氏??)だってまだいるんだからね!


----------訳者の戯言---------

大御門(おおみかど)というのは、初めは皇居の門のことを言いました。文字からしてそうですよね。ですが、そのうち、貴族や武士のお屋敷の門も、大御門というようになったんだそうです。

さて本題。
里帰り、実家に帰ってる女官の話です。当然ですがまあ、エエトコの子女ですね。
で、実家帰りしていても、男性が言い寄って来るんですね、モテモテの女の子のところには。
女心としてはうれしいんです。女子としては、想って実家まで来てくれる人をあんまり拒否りたくはない、というか、ロマンスの可能性あればウェルカムなんでしょうね。
なのに、親兄弟とか使用人とかは「えー深夜までいるのーめんどくせー」って感じなんですね。しかも、「お客さん帰ったら、とっとと戸締りしてね、盗っ人とか不審火とかコワイし~」って、お客さんからしたら、感じ悪っ!て思いますよ。

都(みやこ)の人ですからね、これ、わざと聞こえるように言ってませんか? 今、よく言われる「ぶぶ漬けでも」とか「お茶でも」っていうのと、ルーツは同じなのではないですか。
今の京都人をちょっと連想してしまいましたが。
そして②に続きます。


【原文】

 宮仕人(みやづかへびと)の里なども、親ども二人あるは、いとよし。人しげく出で入り、奥のかたにあまた声々様々聞こえ、馬の音などして、いとさわがしきまであれど、とがもなし。されど、忍びても、あらはれても、「おのづから出で給ひにけるをえしらで」とも、また、「いつか参り給ふ」など言ひに、さしのぞき来るもあり。

 心かけたる人、はたいかがは。門(かど)あけなどするを、うたてさわがしうおほやうげに、夜中までなど思ひたるけしき、いとにくし。「大御門(みかど)はさしつや」など問ふなれば、「今まだ人のおはすれば」などいふ者の、なまふせがしげに思ひていらふるにも、「人出で給ひなば、とくさせ。このごろ盗人、いとおほかなり。火あやふし」など言ひたるが、いとむつかしううち聞く人だにあり。

  

 

枕草子 (岩波文庫)

枕草子 (岩波文庫)

  • 作者:清少納言
  • 発売日: 1962/10/16
  • メディア: 文庫