枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

宮にはじめて参りたるころ⑥ ~久しくゐ給へるを~

 伊周さまが長時間いらっしゃるのを見て、それって思いやりがないことで、私が苦痛に思ってるだろうっておわかりになったんでしょうね、定子さまが「これをご覧になって! これは誰が書いたものかしら?」っておっしゃたんだけど、「いただいて拝見しましょうか」って申し上げられたもんだから、「やはり、ここへ来て」とおっしゃるの。「私を捕まえて立たせないんです」って言われるんだけど、すごくイマドキっぽくて、私の身の程には合わないから、恥ずかしいわ。定子さま、誰かが草仮名を書いた本なんかを取り出してご覧になってて。で、伊周さま、「誰が書いたものかな? 彼女にお見せになってよ。あの人なら、今の世にいる人の筆跡は全部わかってるでしょうからね」なんて。どうしても私に答えさせようって、おかしなことばっかり、おっしゃるのよ。


----------訳者の戯言---------

ワタクシ的に、この部分のポイントは「人をとらへて立て侍らぬなり」だと思うんですが、これがイマドキっぽい言い方で、ついてけないわ、という感じに見える清少納言。しかも彼女は容姿コンプレックスもありましたから、身分も低いし、こんなオバサン、しかも私全然イケてないし、恥ずいわーと思ったようですね。すぐ前の記事で書いた若者言葉的というか。なおさらギャップを感じたのかもしれません。

「ゲトされちゃって、立つみー、ありよりのなしー」的な。まあ、そこまでではないと思いますが、「彼女に捕まっちゃってさ、立ち上がれないんですよー」ぐらいのチャラさです。男が女子を捕まえて離さないならいざ知らず、女子のほうが男子を捕まえるって言い草、悪い冗談!って感じでもありますね。新人のお姉さんをからかってる風にも感じますよ。
いくら良家の出で美男子で社会的地位が高くても二十歳の男子がこんなこと言うとムカつきますけどね、普通は。

草仮名。草書で書かれた万葉仮名。万葉仮名はご存じのとおり、仮名とは言うものの漢字です。一般には、意味でなく音だけを表したものですね。ここではこれの草書体で書いたもの、です。さらにこれをくずしにくずしてシンプルにしまくった結果できたのが平仮名(ひらがな)だそうですよ。

定子は、なんとかフォローしようと、清少納言の得意分野の「書」を取り出して見せるんですね。しかしこれに伊周が乗っかって、またチャラいこと言ってます。ほんとどうしようもないお坊ちゃまなんですが、清少納言はもうポワーンとなってます。一応才女と言われるような人なんですから、いくら駆け出し女房といっても、もうちょっとしっかりしていてもいいと思いますが。
⑦に続きます。


【原文】

 久しくゐ給へるを、心なう、苦しと思ひたらむと心得させ給へるにや、「これ見給へ。これは誰が手ぞ」と聞こえさせ給ふを、「たまはりて見侍らむ」と申し給ふを、「なほ、ここへ」とのたまはす。「人をとらへて立て侍らぬなり」とのたまふも、いと今めかしく、身のほどにあはず、かたはらいたし。人の草仮名書きたる草子など、取り出でて御覧ず。「たれがにかあらむ。かれに見せさせ給へ。それぞ世にある人の手はみな見知りて侍らむ」など、ただいらへさせむと、あやしきことどもをのたまふ。

 

検:宮に初めて参りたるころ

 

まんがで読む 枕草子 (学研まんが日本の古典)

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  • 発売日: 2015/03/17
  • メディア: 単行本