枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

宮にはじめて参りたるころ② ~暁にはとく下りなむと~

 夜明け前には、自分の部屋に下がりたいって気が焦ったわ。「葛城の神でも、もうちょっと…」なんておっしゃるから、何とかして斜めからもご覧になれないようにって、やっぱり顔を伏せたままでいたら、御格子もお上げなさらないの。女性スタッフたちたちが参上して、「これを開放してください」なんて言うのを聞いて女房が開けるんだけど、定子さまが「だめ」っておっしゃるもんだから、彼女たちは笑って帰ってしまったのね。

 色々お尋ねになったり、お話しされたりしてたら、かなりの時間経ってしまったから、「お部屋に戻りたくなったでしょ? だったら早くね。また夜になったら早く来て!」っておっしゃって。
 私が膝をすって退出しその場からいなくなって、すぐに女房が格子窓を上げたら、雪が降ってたの。登華殿の前は立蔀(たてじとみ)が近くって狭くて。そして雪はとても素敵なのです。


----------訳者の戯言---------

「葛城の神」については、「宰相の中将②」の「訳者の戯言」をぜひご覧ください。かなり詳しく書いています。
簡単に説明しますと、葛城山に住む神が、役(えん)の行者という人から、橋を作るように言われたんですが、醜い姿だったことを恥じて、夜だけは働いたけど昼間は姿を現さなかったそうです。そのため、工事がなかなか進まなくて橋が完成しなかったという伝説があったらしいですね。
それで、早朝、明るくなる前に退散する時には、「『葛城の神』ってことで、帰ります~」的なことを言ったのだと思われます。気が利いてる風ですが、ちょっと親父ギャグっぽい感じもします。

が、やはり共通認識の問題なのだと思いますね。元ネタを知っている者同士が面白がれる、教養というか、文化というか、そういうものがあるかどうかだとは思います。

これに似たようなことについては、つい最近、ワイドナショーで話題になってました。
見ていなかった方のために簡単に紹介しますと、まず、EXITの兼近がツイッターで「わら半紙知らない時代がきてるぞー!面白いと思って言ったそのワードー!そもそも知らないパターン多いぞー!」とツイートしたことにはじまるんですが、それどころか、EXIT兼近的には、ドラゴンボールやプロレスで例えられてもわからない、笑えないって言うんですね。「あつ森」入れたり「鬼滅の刃」ネタ使ったりのほうが若い子たちは面白いと。もちろん、その分上の人たちは離れていくと思う、とも語りました。

で、松本がワイドナ高校生に「わら半紙」知ってるか聞いたら、「何にも知らないです、見たこともない」と。それ聞いた松本が「何も知らない、知られちゃいけーないー、みたいに言うなー」って。で、「デビルマンも知らんよな」と。これに兼近が、「デビルマンって何すか、やめてください自然にデビルマンって!」と言ってました。

というわけで、これ、ターゲットの細分化ですよね。マーケティングとかで言われるセグメンテーションというやつです。で、その重要な要素が文化、共通認識ということになるのだと思います。
幸い私は「わら半紙」も「鬼滅」も「プロレス」も「デビルマン」もわかります。ギリギリで。しかも浅ーい知識ですけどね。それでも、「葛城の神」は最近まで知りませんでした。1000年のジェネレーションギャップはきついです。EXITの兼近どころではありません。

原文で「ゐざり」という語が出てきます。動詞「ゐざる」というのは「居ざる」「膝行る」などと書くらしいです。おわかりですね、「膝をついて、座ったまま移動する」ことを言います。

立蔀(たてじとみ)は衝立のこと。これを巡らしてたから、登花殿の御前(庭?)は狭くなってたんでしょうか。

緊張してしまって、定子さまの近くにいられない感じの清少納言、自らの初々しかった頃を思い出して書いてます。さて、どうなりますか。
この段、まだまだ先が長いです。
③へ。


【原文】

 暁にはとく下りなむといそがるる。「葛城の神もしばし」など仰せらるるを、いかでかは筋かひ御覧ぜられむとて、なほ伏したれば、御格子も参らず。女官ども参りて、「これ、放たせ給へ」など言ふを聞きて、女房の放つを、「まな」と仰せらるれば、笑ひて帰りぬ。

 ものなど問はせ給ひ、のたまはするに、久<し>うなりぬれば、「下りまほしうなりにたらむ。さらば、はや。夜さりは、とく」と仰せらる。

 ゐざり隠るるや遅きと、あけ散らしたるに、雪降りにけり。登華殿の御前は、立蔀近くてせばし。雪いとをかし。

 

検:宮に初めて参りたるころ