枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

法師は

 法師というと。律師。内供(ないぐ)。


----------訳者の戯言---------

律師というのは、徳が高く人々から慕われる僧侶に対する尊称としても使われたそうですが、僧侶の位の名前でもあります。僧正が最高位、その次が僧都なんですが、さらにそれに次ぐ位が律師だそうですね。僧位(僧階)っていうのは、そもそも徳や学識に応じて与えられたものらしいですが…。

まず、最高位の僧正(そうじょう)。最初は一人だったそうですが、まもなく複数となり、大僧正とか権僧正とかの階級ができ、数が十数人とかになったらしいです。従二位相当だったとか。朝廷で言うと左大臣、右大臣クラスですから、かなりのポジションです。
次の僧都(そうず)も同じで、律令制の位階で言うと正三位に相当する役職です。これもはじめは定員一人だったらしいですが、まもなく複数となり、大僧都権大僧都少僧都権少僧都などもできたそうです。正三位というのは、大納言に相当する位ですから、これまたかなりの高位ですね。

しかし、みんなどんだけ肩書とかポストが好きなんや!って話ですよ。お坊さんなのに。

で、律師に戻ります。先にも書いたとおり僧都のさらに次です。五位にも相当するクラスだそうですね。この階位でも貴族と同じレベルということですね。律令制における五位は、前段でも書いたとおり、殿上に上る資格もある、所謂、貴族。大夫(たいふ)とも言われた階位でした。つまり律師も結構高いクラスの、まずまずの高僧だと位置づけられそうですね。たぶん、ですが、僧正とか僧都とかは、ほとんどおじさんやおじいちゃんだったんでしょうけど、律師はまあまあ若い人だったんではないでしょうか。キラキラした若き高僧に、清少納言も注目したのだ、と思うのですが、いかがでしょう?

ちなみに、藤原道隆の四男、定子の弟で法名を隆円と言った人は、「僧都の君」と言われました。たしか、まだ十代ぐらいで若かったと思います。やはりセレブリティの子弟は、お坊さん業界でも昇格が早かったんでしょうかね。

おおむね今は、僧階というのは僧籍を得てからの年数で昇格していくそうです。修行の年数ということではあるらしいんですが。けど何か年功序列的な印象も少しあります。何だかなー。

しかも、ですよ。宗派、大学によって多少違うようですが、だいたい、仏教系の大学なんかでそれなりの教科を履修すると、大卒で「権大僧都」とか、大学院卒で「大僧都」とか、高校卒や専卒だと「権少僧都」というふうに、僧階が決まってくるらしいです。
仏教系大学の仏教系学部に入ると、普通に僧都にはなれるんですね。そんなもんか! めっちゃカンタン~。

律師というと、昔は貴族レベルでしたが、むしろ今は下っ端です。高校卒や専卒時点で律師よりも上なんですから。大学入ったらすぐ1年で僧都なんですから。清少納言も嘆くことでしょうね。

さて、続いて。
内供(ないぐ)というのは、内供奉(ないぐぶ)のことを短縮形で言ってます。
内供奉は、宮中の内道場に仕えて、御斎会 (ごさいえ) という法要の時に読師を勤めたそうですね。内道場っていうのは宮中の仏教修行所で、内寺とも言ったらしいです。
また、加持祈祷(かじきとう)のため、僧侶が夜間、貴人のそばに付き添うのを当時は夜居(よい)と言ったんですが、天皇の夜居を勤めたのも、この内供奉だったそうですね。

現代に生きる私たちからすると、御所の中で仏教行事をやる、ということ自体、違和感はあるんですが、それはさておき、内供奉は10人いて十禅師とも呼ばれたそうです。諸国から高僧が選抜されたということですから、ま、仏教界の最高峰、ドリームチームというところでしょうか。そりゃあ素敵だったんでしょうね。

ただ、清少納言は、「説経の講師は①」でも、お説教を聞くなら顔がいかしてるお坊さんがイイ!みたいなこと書いてましたし。信心は浅いし、ミーハーっぽいところもあるんですよ。ほんま、見かけとか、肩書きとか、大好きなんでね。悔い改めてほしいですね。


【原文】

 法師は 律師。内供(ないぐ)。

 

枕草子 いとめでたし! (朝日小学生新聞の学習読みもの)

枕草子 いとめでたし! (朝日小学生新聞の学習読みもの)

  • 作者:天野慶
  • 発売日: 2019/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)