枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

病は

 病気は、胸の病。物の怪。脚気。それから、ただなんとなく食欲がない気分。


----------訳者の戯言---------

だいたい枕草子で、こういう風に「〇〇は」と書きだした場合は、いい感じのもの、「をかし」的なものを列挙していきます。
ということは、「病」の場合も、そうなの?

胸というと呼吸器系? それとも心臓病でしょうか。あるいは、乳癌とかでしょうか。胸やけがする、というような場合もあります。たしか徳冨蘆花の「不如帰」で主人公の女性が結核になる、というのもあったように思いますが、その儚げなイメージもアリかもしれません。平安時代にそういうメンタリティがあったかどうかはわかりませんが。
まあ、いずれにしても胸の病気なのでしょう。わかったようなわからんような話ですが。

そして、物の怪って何やねん。それ、病気ですか?と思います。
もののけ姫」というのがありましたが、あれも祟り神(荒御霊)とかから力をもらった動物=もののけ、としてるんですよね。もののけ姫自身は人間なんですが。結構複雑な話ではあります。
で、ここで言うのも、まあ「魂」、つまり生霊、死霊などの類が、人に取り憑いて、病気にしたりすることを言ってるようです。
具体的には、どう具合が悪くなっているのかはやはりよくわかりません。原因不明、よくわからない、見たことない病気がたぶんこう言われたのでしょうね。

少し話はそれますが、疫病というのもその一つだったのではないかと思います。
京都は高温多湿でしたし、当時は上下水道も整ってませんから、当然、昔も感染症はたくさんあったそうです。瘧(わらわやみ=マラリア)、裳瘡(天然痘)、咳病(インフルエンザ)、赤痢、麻疹などの流行はよくあったらしいですし。コロナウィルス感染症も当時は咳病の一つだったんでしょう。

今みたいに、手洗いできませんし、消毒液も売ってない、サージカルマスクやフェイスガードもないですから。ソーシャルディスタンスとかの概念もなかったですしね。クラスター対策、PCR検査ももちろんありません。
つまり。マスメディアも、ネットもない世界で、衛生管理も感染症対策もできてない頃ですから、その都度大流行したはずなんです。

で、その対策が、加持・祈祷、大規模なものは御霊会という鎮魂のためのお祭りになっていったらしいですね。都では疫病対策として、八坂神社(感神院)の祇園御霊会(祇園会)というのが行われるようになりました。もちろん、疫病以外でも地震とか火山の噴火とか、天災みたいなものから守っていただくように、鎮めるように祈願します。まさにオカルト、非科学的。

で、今年はその祇園祭山鉾巡行が中止になりました。元々厄災退散を願うものなのに。という意見もあって、たしかにそれはそうなんですが、今は科学的根拠に基づいて行動するべきですから、いいのではないでしょうか。調べてみたら、戦争の時とかもなかったらしいですし。応仁の乱の時はそれどころではなかったと。たしかに言われてみればそうですよね。明治時代にはコレラの流行で中止になったそうですし、最近は1962年に阪急電車の地下工事でも中止になったらしいです。

元に戻ります。
脚の気。これは脚気ですかね。ビタミンB1チアミン)というのが足りなくなると、患う病気と言われています。
ビタミンB1を摂るには玄米や雑穀、豚肉、レバー、豆類などを食べるといいらしく、中でも特に豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれているそうです。当時の貴族は獣肉は食べませんでしたから、豚肉やレバーは無理ですね。肉は食べても鳥か魚です。雑穀とか玄米を食べてるとまず脚気にはならないんですが、貴族は白米を主に食べてたらしいですから、結構なったらしいと。つまり、貴族病、ぜいたく病なんですね。だから、清少納言は肯定的なんでしょうか。身分階級差別大好き、階層意識高い系人間ですからね。

そして、なんとなく食欲がない気分。これも病気ですか? 心の病というか、精神的なダメージとかで食欲がないとか。しかし、それだと原因が明白ですしね。
それよりも、まじで、よくわからないけど食欲がないっていうのなら、やっぱかかりつけのドクターに診てもらったほがいいです。おかしいですから、それ。ガンとかかもしれないし、早期に発見したほうがいいです。けど、当時は内視鏡MRIもないですからね。医者と言っても、漢方医。カウンセリングして薬を処方するぐらいです。むしろ、こういうときは、そう、陰陽師とか、僧侶とかが登場します。いいのかそれで。

というわけで結局、「いい感じ」の病気を列挙したのかどうかさえよくわかりません。
先にも書きましたが、「不如帰」など、昔は、肌の白い病弱な深層の令嬢的な女子が素敵、みたいなのあったようですし、堀辰雄の「風立ちぬ」がまさにそうですね。で、それに着想を得たジブリの「風立ちぬ」も。「サナトリウム」という言葉自体もノスタルジックで、はかなげで、哀しいけれど心惹かれるという、そういう側面もあります。
けど、いかしてる病気なんかないっすよ。病気はやはり嫌なものです。


【原文】

 病(やまひ)は 胸。物の怪。脚の気。はては、ただそこはかとなくて物食はれぬ心地。

 

まんがで読む 枕草子 (学研まんが日本の古典)

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  • 発売日: 2015/03/17
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