枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

成信の中将は⑤ ~雨は心もなきものと~

雨は風情の無いものと思いこんでしまってるからかしら? ほんの少しの時間降るだけでも憎ったらしく思えるわ。高貴な宮中行事や面白いだろうなっていうイベント、尊くてすばらしいはずのことも、雨が降ってしまうとどうにも言いようがなく悔しいのに、何でそ…

成信の中将は④ ~さて月の明かきはしも~

さて、月の明るい時には、過去のことも将来のことまでも、思い残すようなこともなくって、心もさまようくらい素晴らしくてしみじみとするのは、他のこととは比べものが無いくらいだわって思うわね。そんな月の夜に来た人は、十日、二十日、一カ月、もしくは…

成信の中将は③ ~つとめて例の廂に~

翌朝早く例の廂の間で女房たちが話しているのを聞いたら、「雨が土砂降りの時にやってきた男性には感動しちゃうわね。何日も待ち遠しくって、つらいことがあっても、そんなふうに濡れてまで来てくれたら、つらいこともみんな忘れちゃう!」っていうんだけど…

成信の中将は② ~一条の院に作らせ給ひたる~

一条の院にお造りになった一間所には、嫌な人はまったく寄せ付けないの。東の御門に向かい合っててすごくいい感じの小廂に、式部のおもとと一緒になって夜も昼もいるもんだから、帝もいつもご見物に入って来られるのよ。「今夜は中で寝ましょうかね」って言…

成信の中将は①

(源)成信の中将は入道兵部卿宮のご子息で、ルックスがすごく良くってお気持ちもすばらしくていらっしゃるの。伊予の守(かみ)の(源)兼資の娘のことを忘れられなくって、親が伊予国へ連れて下った時には、どんなにしみじみと哀しい思いをしたことだろう…

日のうらうらとある昼つ方

日がうららかに照っているお昼頃、またすごく夜が更けて子の刻(午前0時前後)とかっていう頃になったかな?って時に、もう帝はお休みになっていらっしゃるのかしら??なんてお思い申し上げてたら、「蔵人たち…」ってお呼び出しになるの、すごく素敵だわ。 …

時奏する、いみじうをかし

時を奏するのはすごくおもしろいわ。すごく寒い夜中なんかに、ゴホゴホって音を立てて靴を引きずって来て弓の弦を鳴らして、「何の誰々、時刻、丑三つ、子四つ」とかって遠くの方で言って、時の杭を差す音なんか、めちゃくちゃいい感じなの。 「子九つ、丑八…

屋は

屋は、まろ屋。あづま屋。 ----------訳者の戯言--------- 屋は「や」です。「おく」ではありません。意味としては家のこと。家屋のことなんですが、読みは「や」なのだそうです。ここでは「小屋」のことを言っているようですね。 まろ屋というのは、葦(あ…

崎は

崎は 唐崎。三保が崎。 ----------訳者の戯言--------- 崎というのは海に向かって突き出ている陸の先端を言います。岬も同意と言えるでしょうか。 唐崎(からさき)というのは今の滋賀県大津市にある唐崎というところのようです。琵琶湖の南端西側岸になりま…

神は

神は、松尾(まつのお)大社、(石清水)八幡宮(やはたのみや/やはたのみや)はこの国の帝でいらっしゃったというのが素晴らしいわ。ご参詣の行幸なんかに水葱(なぎ)の花の御輿(みこし)にお乗りになるとかって、すごく素晴らしい。大原野神社。春日大社…

檜扇は

檜扇(ひおうぎ)は無地の。唐絵のもの。 ----------訳者の戯言--------- 「檜扇(ひおおぎ)」とは字のとおり薄い檜の板を重ねたものです。宮中で用いられていました。男性が使う場合は、宮中行事の時複雑な式での作法とかをメモする目的で使われたっていう…

扇の骨は

扇の骨は、朴(ほお)の木。色は赤いの。紫。緑。 ----------訳者の戯言--------- 扇は朴木の自然木のまんまのやつが良い、ってことでしょうか。他には塗骨と言って、漆塗りをしたものなんかもありました。 「小白河といふ所は② ~少し日たくるほどに~」で…

下襲は

下襲(したがさね)は、冬は躑躅(つつじ)。桜。掻練襲。蘇芳襲。夏は二藍。白襲。 ----------訳者の戯言--------- 下襲(したがさね)です。今で言うとシャツ的なものですね。上着の下に着るやつで、絵とか見ても後ろがすごく長いです。ただ、枕草子が書か…

単衣は

単衣は、白いの。束帯の時に紅色の単衣の袙(あこめ)なんかを仮にワンポイントで着てるのはOK。でもやっぱり白いのをね。黄ばんだ単衣なんかを着てる人はすごく気にくわないわ。 練色(ねりいろ)の衣なんかを着ることもあるけど、やっぱ単衣は白いのじゃな…

狩衣は

狩衣(かりぎぬ)は、香染(こうぞめ)の薄いもの。白いふくさ。赤色の。松の葉色。青葉の色。桜襲のもの。柳色のもの。藤色。男はどんな色の衣でも着てるわ。 ----------訳者の戯言--------- 狩衣(かりぎぬ)は文字通り「狩り」をするときに使っていた衣服…

指貫は

指貫(さしぬき)は、紫の濃いの。萌黄(もえぎ)。夏は、二藍(ふたあい)。すごく暑い頃、夏虫の色をしたのも涼しげだわ。 ----------訳者の戯言--------- 指貫(さしぬき)いうのは今でいうところの袴です。ボトムスですね。括り緒の袴(くくりおのはかま…

歌は

歌はっていうと…風俗歌。その中でも「杉立てる門」ね。神楽歌もおもしろいわ。今様歌は長くて節回しが変わってるわね。 ----------訳者の戯言--------- 風俗というと、すぐにキャバクラとかヘルスとかを思い浮かべてしまいますが、違います。現代じゃないん…

たふときこと

尊いこと。九条の錫杖(しゃくじょう)。念仏の回向(えこう)。 ----------訳者の戯言--------- 九条の錫杖(しゃくじょう)。聞いたことがありません。九条というと京都の九条、あとは大阪の九条とか。地名ぐらいしかわからないですね。地名ならほかにもあ…

関白殿、二月二十一日に㉖ ~院の御桟敷より~

女院の桟敷から「千賀の塩釜(ちかのしおがま)」とかっていうお便りがあってね、定子さまも返歌をなさるの。趣のある贈物なんかを持って人が行き来するのも素敵だわ。 法会が終わって、女院がお帰りになったの。院司や上達部が今回は半分ほどお供をなさった…

関白殿、二月二十一日に㉕ ~ことはじまりて~

法会が始まって、一切経を蓮の花の赤い造花の一つずつに入れて、僧侶、上達部、殿上人、地下人、六位、その他の者に至るまで持って続いているの、すごく尊いわ。導師が参上して、講義が始まって、舞楽なんかもしたの。一日中見てたら目も疲れて苦しいのね。…

関白殿、二月二十一日に㉔ ~僧都の君、赤色の薄物の御衣~

僧都の君が赤色の薄物の衣、紫色の袈裟、すごく薄い薄紫の衣、指貫なんかをお召しになって、頭の様子が青々ときれいな感じで、地蔵菩薩みたいな姿で女房たちに混じってあちこちお歩きになるのもとてもいい感じに見えるわ。「僧綱(そうごう)の中で威儀を正…

関白殿、二月二十一日に㉓ ~入らせ給ひて~

関白殿がお入りになって見上げなさったら、みんな裳、唐衣を御匣殿(みくしげどの)までもが着ていらっしゃるの。殿の奥方は裳の上に小袿(こうちき)だけ着ていらっしゃるわ。「絵に描いたようなお姿! もうお一人も、今日はみんな認めるいっぱしに仕上がっ…

関白殿、二月二十一日に㉒ ~女院の御桟敷~

女院の桟敷や所どころの桟敷をいろいろ見渡すと、その様子がすばらしいの。関白殿(道隆)は、定子さまのいらっしゃる御前から女院の座敷に参上なさって、少ししてから、ここにいらっしゃったのね。大納言の二人、三位の中将は陣に詰めてられる姿のままで、…

関白殿、二月二十一日に㉑ ~三尺の御几帳一よろひをさしちがへて~

三尺の御几帳1セットを互い違いに立てて、こっちとの仕切りにして、その後ろに畳一枚を横長に縁を端にして、長押の上に敷いて、「中納言の君」っていうのは殿(道隆)の叔父様で右兵衛の長官でいらっしゃる藤原忠君っていう方のお嬢さま、「宰相の君」は富小…

関白殿、二月二十一日に⑳ ~参りたれば、はじめ下りける人~

参上したところ、初めに降りた女房がよく物が見えるだろう端っこに8人ほど座ってたわ。定子さまは一尺(約30cm)あまり、二尺ほどの長押の上にいらっしゃるの。「こちらに私が立ち隠して連れて参りました」って大納言殿が申し上げなさると、「どこに??」っ…

関白殿、二月二十一日に⑲ ~おはしまし着きたれば~

ご到着なさったら、大門のところで高麗楽(こまがく)、唐楽(とうがく)を演奏して、獅子や狛犬が踊り舞い、乱声(らんじょう)の音、鼓の音に、もうどうしたらいいかわからなくなるの。これは生きたまま仏の国にきたんじゃないかしら??って、音は空に響…

関白殿、二月二十一日に⑱ ~みな乗りつづきて立てるに~

采女がみんな続々と馬に乗って立ってたら、今やっとのことで定子さまの御輿が出ていかれるの。すばらしい!って拝見したご様子は、これはもう!どうにも比べようがないくらいのものだわ! 朝日が華々しく昇ってきた頃、水葱(なぎ)の花飾りがすごく際立って…

関白殿、二月二十一日に⑰ ~関白殿、その次々の殿ばら~

関白・道隆さま、その次々の弟さま方々いらっしゃる全員で、女院のお車を大切にお守りしてお供していらっしゃるのはすごくすばらしいわ。このご一行をまず拝見して、ほめたたえて騒いじゃうの。こちらで牛車を20台立て並ばせてるのも、いい感じだな、ってあ…

関白殿、二月二十一日に⑯ ~まづ、院の御迎へに~

まず女院のお迎えに関白殿をはじめとして殿上人、地下人なんかもみんな宮中に参上したのね。で、女院がいらっしゃった後に定子さまがいらっしゃるっていうことだから、すごく待ち遠しいなぁって思ってたら、日が高くなってからいらっしゃったのよ。一行のお…

関白殿、二月二十一日に⑮ ~みな乗りはてぬれば~

女房全員が乗り終えたから、車を御門から牽き出して二条大路で榻(しじ)に轅(ながえ)を掛けて見物の車みたいに立てて並べたの、その様子がすごく面白いのよ。人もみんなそういう風に見てるんだろうなって、胸がわくわくどきどきするのよね。四位、五位、…