枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

指貫は

 指貫(さしぬき)は、紫の濃いの。萌黄(もえぎ)。夏は、二藍(ふたあい)。すごく暑い頃、夏虫の色をしたのも涼しげだわ。


----------訳者の戯言---------

指貫(さしぬき)いうのは今でいうところの袴です。ボトムスですね。括り緒の袴(くくりおのはかま)というものの一種です。裾を紐で引っ張って絞れるようになってるので、現代のファッションで言うと、ドローコードの付いたカーゴパンツみたいな感じ。袴ですからかなり幅は広いですが。

紫色は希少で高価、高貴な色とされていました。希少な紫草の根(紫根)で手間をかけて染めていたからという理由もあるようですね。さらに濃い紫色はより手間のかかった色ということになります。濃い紫を濃色(こきいろ)と言い、こんな色だそうです。

萌黄色はこんな色。春先に萌え出る若葉の色なんですね。明るめの黄緑色。平安時代には若者向けの色として好まれたらしいです。

二藍(ふたあい)は、藍+紅=つまり紫系の色に染めた生地のことを言うそうです。藍の上に紅花を染め重ねたんですね。二藍という名前も、昔は紅のことを「紅藍」と書いて「くれない」と読んだから、藍+紅藍=二藍なんです。結構幅があって、赤紫~薄めの青紫まであるみたいです。着る人の年代によって色調を変えたらしいですね。若い人はピンクっぽいのとか。
二藍は紫草を使わずに藍と紅を使った合わせ技という考え方ですが、見ただけでわかるのか?というのが素朴な疑問です。


夏虫色という染色の色があるらしいです。夏虫とは青蛾のことであるとか、瑠璃色のことだと書いている辞書もあるようです。一説には蝉の羽の色とも。
で、現代において夏虫色はこういう色です。結構涼し気といえば涼し気です。

青蛾というのがどういう蛾なのか、ちょっと調べたのですがよくわかりませんでした。日本では青というのが曖昧であるとこれまでにも何回か書きましたしね。ちょっと別の話として、こういう言葉↓があります。

「紅粉青蛾」。
「こうふんせいが」と読み、美人のことをこう言うらしいですね。「紅粉」は口紅と白粉のことで、「青蛾」は眉を蛾の触角みたいに、細長く三日月形に青い色で描くことなのだそうです。化粧美人ですね。

夏虫色が瑠璃色ではないか?という説もあると書きました。たしかに蛾の中にはきれいな瑠璃色のような羽を持ったものもありますね。ただ、一般に言われている夏虫色とはずいぶん違います。瑠璃というのは宝石のラピスラズリと言われています。紫がかった青色の半貴石です。ただ、二藍に近い色なので、ここでは夏虫色≠瑠璃色のような気はします。
そういえば松田聖子の歌で瑠璃色の地球という曲がありましたね。関係ないですが。


【原文】

 指貫は 紫の濃き。萌黄(もえぎ)。夏は二藍(ふたあゐ)。いと暑きころ、夏虫の色したるも涼しげなり。