枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

歌は

 歌はっていうと…風俗歌。その中でも「杉立てる門」ね。神楽歌もおもしろいわ。今様歌は長くて節回しが変わってるわね。


----------訳者の戯言---------

風俗というと、すぐにキャバクラとかヘルスとかを思い浮かべてしまいますが、違います。現代じゃないんだから。

風俗歌(ふぞくうた)というのは、地方の国々に伝承されていた歌だそうで、平安時代になると宮廷や貴族社会に取り入れられ、宴遊などに歌われたようです。その中で特筆すべきが「杉立てる門」という風俗歌だと書いてます。

わが庵は三輪の山もと恋しくはとぶらひ来ませ杉立てる門
(私の粗末な家は三輪山の麓なの。恋しいのなら訪ねて来てくださいよね、杉の立ってる門を目印に)

というのが古今集にあったのですが、古今集の中でも最古の歌の部類に入るらしいです。たとえば「とぶらひ来ませ」の「ませ」は、万葉集でよく見られた技法みたいです。で、この歌は「三輪の神の作った歌」という伝説もあるそうですね。
三輪山伝説」とか「箸墓伝説」などの伝説は、三輪山の神が女性のところにやってきて契りを交わすという「妻問婚」と呼ばれるものの起源みたいなものです。なんか風俗っぽいけど風俗ではありません。神様ですからね。で、三輪山御神体は「蛇」と言われているんですね。その辺もあまり関係ないですが。

「俊頼髄脳」という源俊頼という人によって書かれた歌論書の中にも「三輪の山伝説」というのがありまして。こちらでは、

恋しくはとぶらひ来ませちはやぶる三輪の山もと杉立てる門

となっていました。構成は違いますが、内容はほぼ同じです。

と、逸れてしまいましたが、風俗歌というのは地方の古い歌謡曲的なものというか、ローカルヒットしたものというか。それが都の貴族たちの間で流行って来たと。今で言うなら、たとえばネットカルチャーってか、ボカロやSNS発の音楽とかがメインカルチャーになるイメージかと思います。まふまふとかadoとか。


神楽歌はそもそもは神事のときに謡われた歌みたいですね。洋楽で言うと、ゴスペルです。教会で歌われた讃美歌、つまりゴスペルから、ポップミュージック化してソウル、R&Bになっていった感じに似ているかもしれません。レイ・チャールズです。ほんまか? 


で、今様です。先日、アニメの「平家物語」を見ていたら、後白河法皇って今様が好きだったんですね。今様に合わせて白拍子を舞っていたのです。白拍子の女性たちは貴人のところに通う遊女でもありましたが、専属になって所謂妾として寵愛されるということもありました。ごぞんじのとおり、この平家物語の時代には、清盛の妾の祇王とか、義経の妾の静御前とか、白拍子の女性たちのサイドストーリーも垣間見えてきます。

で、全然関係ない感じですが、そのアニメ「平家物語」のエンディングがヒップホップなんですよ。劇伴をテクノ系牛尾憲輔という人(agraph)がやってるんですが、スチャダラのANIがラップをやってます。
ということで、HIPHOP的なんですよね、今様って(たぶん)。だから破格の節回しなのでしょう。これまたほんまか?

具体的には1コーラスを7・5・7・5・7・5・7・5の七五調で四句の歌われ方をしていたらしいです。というと案外単調ですね。でも、清少納言は、歌が長くて、節回しが独特な気がしたのでしょう。


【原文】

 歌は 風俗(ふぞく)。中にも、杉立てる門。神楽歌もをかし。今様歌は長うてくせづいたり。