枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

関白殿、二月二十一日に⑭ ~車の左右に~

車の左右に大納言殿(伊周)、三位の中将(隆家)のお二人で簾(すだれ)を上げ、下簾を引き上げて女房たちをお乗せになるの。大勢で群れているのなら、少しは隠れる場所もあるんだろうけど、4人ずつ記名順に従って、「誰それ、誰それ」って呼び立ててお乗せ…

関白殿、二月二十一日に⑬ ~御経のことにて~

一切経の供養があるから明日積善寺へお向かいになるっていうことで、私は今夜参上申し上げたのね。南の院の北側の向かいに顔を出したら、高坏(たかつき)に火を灯して、2人3人、または3、4人で親しい者同士、屏風を引き寄せて仕切ってる女房もいるの。几帳…

関白殿、二月二十一日に⑫ ~御輿はとく入らせ給ひて~

定子さまの御輿は早くにお入りになってて、お部屋の調度を整えて座っていらっしゃったの。「ここに呼んで」っておっしゃったから、「どこ? どこ?」って右京、小左近とかっていう若い女房たちが私を待っていて、参上してくる人ごとに見るんだけど、いなかっ…

関白殿、二月二十一日に⑪ ~出でさせ給ひし夜~

定子さまがお出になられた夜、女房が車に乗る順番も決まってなくて、みんな「私が先、私が先」って乗る時に騒いでるのが気分悪かったもんだから、ちゃんとしてる人と「やっぱり、この車に乗る様子がすごく騒がしいし、『祭のかへさ』の時なんかみたいに、倒…

関白殿、二月二十一日に⑩ ~さて、八九日のほどにまかづるを~

その後、八日か九日の頃に私は里に戻ることにしたけど、定子さまは「もう少し供養の日が近づいてからでいいんじゃ…」なんておっしゃって。でも、私は退出して帰っちゃったの。 いつもよりすごくのどかに日が差してるお昼頃、「花の心は開けないの? どうなの…

関白殿、二月二十一日に⑨ ~殿おはしませば~

関白(道隆)殿がいらっしゃったので、寝乱れた朝顔じゃ季節外れなものだってご覧になるだろうな…って部屋に引っ込んだの。こちらにお越しになってすぐ、「あの花がなくなってるやん! 何でこんな全部ごっそり盗まれてるんだよ! あかん女房たちだね~ 寝坊…

関白殿、二月二十一日に⑧ ~掃部司参りて~

掃部司(かもんづかさ)のスタッフが参上して、御格子をお上げするの。主殿司(とのもりづかさ)の女官がお掃除なんかに来て作業が終わった後、定子さまが起きられたんだけど、桜の花が無くなってるもんだから、「あら、びっくりだわ。あの桜の花の木はどこ…

関白殿、二月二十一日に⑦ ~御前の桜~

二条の宮の前庭の(造花の!)桜は露に濡れてもその風情が良くなるわけでもなく、太陽の光とかに当たってしぼんじゃって見た目が悪くなっちゃうのでさえ残念なのに、雨が夜降った翌朝はすごくみっともないわ。とても早く起きて「泣いて別れたっていう顔に比…

関白殿、二月二十一日に⑥ ~さしつどひて~

寄り集まって、一切経の供養をなさる当日の衣装や扇とかのことを話し合ってる女房もいるの。そして、競争意識があるのを隠して「私は何もしないの。ただ、ある物で間に合わせるかな」なんて言って、「またいつもの、あんたのそれかよ」とかって嫌われてね。 …

関白殿、二月二十一日に⑤ ~君など、いみじく化粧じ給ひて~

姫君なんかが、ばっちり綺麗にお化粧をなさって紅梅のお着物を誰にも負けまいと着ていらっしゃって、三番目の姫君は御匣殿(みくしげどの)や中(二番目)の姫君よりも大柄な感じがして、奥方とかってでも申し上げた方がよさそうなのよね。 関白殿(道隆)の…

関白殿、二月二十一日に④ ~御文は、大納言殿取りて~

帝のお手紙は大納言殿(伊周=道隆の長男=定子の兄)が受け取って関白殿にお渡しになると、関白殿は上包みを引き解いて、「拝見したいお手紙ですね。お許しがいただけるなら、開けて読んでみたい」っておっしゃったんだけど、「さすがにそれは危っかしいと…

関白殿、二月二十一日に③ ~御前にゐさせ給ひて~

関白(道隆)殿は定子さまの御前にお座りになって、お話などなさるの。定子さまのご返事ときたら理想的で素晴らしいのだから、そのご返事を実家の人なんかにちょっとでも見せたいなって思いながら拝見してたのね。関白殿は女房たちをざっとお見渡しになって…

関白殿、二月二十一日に② ~殿わたらせ給へり~

関白の道隆さまがいらっしゃったの。青鈍(あおにび)の固紋(かたもん)の御指貫(おんさしぬき)、桜襲ねの御直衣(おんなほし)に、紅のお召し物三枚ほどを、じかに御直衣に重ねてお召しになっていらっしゃるのね。中宮さまをはじめとして、紅梅の濃いの…

関白殿、二月二十一日に①

関白の藤原道隆さまが2月21日に法興院(ほこいん/ほこのいん)の積善寺(しゃくぜんじ)っていう御堂で一切経の供養をなさるってことで、女院(東三条院詮子=一条帝の生母)さまもいらっしゃるっていうから、定子さまが2月1日頃に二条の宮にお出になったの…

御前にて人々とも、また④ ~二日ばかり音もせねば~

二日ほど音沙汰が無かったもんだから、間違いない!ってことで、右京の君のところに、「…こういうことがあったのね。で、そんな様子ってご覧になったかしら?? こっそりどうだったかおっしゃって。…もしそんなじゃなかったら、こんなこと言ってたって絶対言…

御前にて人々とも、また③ ~二日ばかりありて~

二日ほど経って、赤衣(あかぎぬ)を着た男が畳を持って来て、「これを」って言うの。「あれは誰??慎みがないわ」なんて無愛想に言ったもんだから、そのまま置いてっちゃったのね。「どこからなの?」って訊ねさせたんだけど、「帰ってしまいました」って…

御前にて人々とも、また② ~さてのち、ほど経て~

で、その後しばらくして、心から思い悩むことがあって実家に戻ってた頃、定子さまがすばらしい紙20枚を包んで、下さったの。お手紙には「早く戻っておいでなさい」なんて書いてらっしゃってて。「この紙は前にお聞きになってられたことがあったので…。良い物…

御前にて人々とも、また①

定子さまの御前で他の女房たちとも、また、定子さまがお話しなさるついでなんかにも、「世の中が腹立たしくて、嫌になって、少しの間も生きてられる気がしなくって、ただどこでもいいから、どこかに行ってしまいたい!って思ってても、普通の紙ですごく白く…

うれしきもの④ ~ものの折に衣打たせにやりて~

何かの折に着物を打たせにやって、どうだろうかな??と思ってたら、きれいになってきたの。挿櫛(さしぐし)を磨かせたら美しくなったのも、またうれしいわ。他にもうれしいことはいっぱいあるでしょ!? 何日も何か月も病気がひどくて苦しんでたのが治った…

うれしきもの③ ~陸奥国紙~

陸奥国紙(みちのくにがみ)や普通の紙でも、いいのをGETした時。こっちが恥ずかしくなるくらいすごい人に歌の上の句や下の句を尋ねられた時、すぐに思い出したのは我ながらうれしいわ。いつも覚えてる歌も、人から尋ねられたら、きれいさっぱり忘れちゃって…

うれしきもの② ~遠き所はさらなり~

遠いところはもちろん、同じ都の中ででも離れてて自分にとって大切だって思ってる人が病気だって聞いて、どうなんだろ?どうなんだろ?って心配して嘆いてる時、良くなったよってことを、人づてに聞くのはすごくうれしいわ。 好きな人が人に褒められて、高貴…

うれしきもの①

うれしいもの。 まだ読んでなかった物語の第一巻を読んで、すごく続きを読みたい!って思ってて、残りの巻を見つけたの。でも、がっかりするようなのもあるんだけどね。 誰かが破り捨てた手紙をつなぎ合わせて見るんだけど、その続きを何行も続けて読めたの…

大蔵卿ばかり

大蔵卿(藤原正光)ほど耳ざとい人っていないわ。ホント、蚊のまつ毛が落ちるのさえもお聴きつけになるほどだったの。 職の御曹司の西側に住んでた頃、大殿の新中将(源成信)が宿直で、お話なんかしてたら、側にいる女房が「この中将に扇の絵のことを言って…

成信の中将こそ

成信の中将は、人の声をすごくよくお聞き分けになったの。同じ所にいる女房の声なんかは、いつも聞いてない人は全然聞き分けることができないのね。特に男性は、人の声も筆跡も見分けたり聞き分けたりできないのに、めちゃくちゃ小っちゃな声も、見事にお聞…

十月十余日の月の

十月十日過ぎの月がすごく明るい夜、歩いて見ようって、女房15、6人ほどがみんな濃い紫色の衣を上に着て、裾を折り返してたんだけど、中納言の君が紅の衣を糊で板張りにしたのを着て、首のところから髪を前に持ってきていらっしゃるのが残念だわ。卒塔婆(そ…

古代の人の指貫着たるこそ

古風な人が指貫をはくのなんて、全然もってのほかだわ。指貫を身体の前面に引き当てて、まず最初に衣の裾を全部押し込んで腰紐はそのまんまにしてて、衣の前をしっかり整え終わってから、腰紐を取ろうって後ろのほうに手を伸ばして、猿が手を縛られてるみた…

人の顔に

人の顔で特別いい!って思える部分は、何回見ても、ああ~ステキ、すばらしいわ、って思われるものだわ。絵なんかは何度も見てたら目もひかれなくなるのにね。そのへんに立ててある屏風の絵とかは、すごく素晴らしいけど見向きもされないでしょ。 人の顔はお…

人のうへいふを

人の噂話をしてるのに腹を立てる人ってほんと嫌だわ。どうして言わないでいられるかしら? 言っちゃうよね。自分のことは別として、こんなにじれったいくらい言いたくなるものってある?? でも、よくないコトみたいだし、それに本人がいつのまにか聞きつけ…

よろづの事よりも情けあるこそ

どんなことよりも、思いやりの気持ちを持ってることが、男はもちろん女だって、すばらしいことだって思えるのよね。 何てことない言葉だから、ものすごく心に深く入ってくるわけじゃないけど、辛い気持ちでいることを知って「かわいそうに」とか、哀しみの中…

男こそ、なほいとありがたく

男っていうのは、やっぱりすごく奇妙で不思議な考え方をするものだわ。 とても美人の彼女を捨てて、不美人な女性と付き合ってるのも不思議だわね。宮中に出入りしてる男、名家の子どもなんかは、たくさんいる中で、いいんじゃない?っていう人を選んで恋愛な…