枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

2021-01-01から1年間の記事一覧

うれしきもの①

うれしいもの。 まだ読んでなかった物語の第一巻を読んで、すごく続きを読みたい!って思ってて、残りの巻を見つけたの。でも、がっかりするようなのもあるんだけどね。 誰かが破り捨てた手紙をつなぎ合わせて見るんだけど、その続きを何行も続けて読めたの…

大蔵卿ばかり

大蔵卿(藤原正光)ほど耳ざとい人っていないわ。ホント、蚊のまつ毛が落ちるのさえもお聴きつけになるほどだったの。 職の御曹司の西側に住んでた頃、大殿の新中将(源成信)が宿直で、お話なんかしてたら、側にいる女房が「この中将に扇の絵のことを言って…

成信の中将こそ

成信の中将は、人の声をすごくよくお聞き分けになったの。同じ所にいる女房の声なんかは、いつも聞いてない人は全然聞き分けることができないのね。特に男性は、人の声も筆跡も見分けたり聞き分けたりできないのに、めちゃくちゃ小っちゃな声も、見事にお聞…

十月十余日の月の

十月十日過ぎの月がすごく明るい夜、歩いて見ようって、女房15、6人ほどがみんな濃い紫色の衣を上に着て、裾を折り返してたんだけど、中納言の君が紅の衣を糊で板張りにしたのを着て、首のところから髪を前に持ってきていらっしゃるのが残念だわ。卒塔婆(そ…

古代の人の指貫着たるこそ

古風な人が指貫をはくのなんて、全然もってのほかだわ。指貫を身体の前面に引き当てて、まず最初に衣の裾を全部押し込んで腰紐はそのまんまにしてて、衣の前をしっかり整え終わってから、腰紐を取ろうって後ろのほうに手を伸ばして、猿が手を縛られてるみた…

人の顔に

人の顔で特別いい!って思える部分は、何回見ても、ああ~ステキ、すばらしいわ、って思われるものだわ。絵なんかは何度も見てたら目もひかれなくなるのにね。そのへんに立ててある屏風の絵とかは、すごく素晴らしいけど見向きもされないでしょ。 人の顔はお…

人のうへいふを

人の噂話をしてるのに腹を立てる人ってほんと嫌だわ。どうして言わないでいられるかしら? 言っちゃうよね。自分のことは別として、こんなにじれったいくらい言いたくなるものってある?? でも、よくないコトみたいだし、それに本人がいつのまにか聞きつけ…

よろづの事よりも情けあるこそ

どんなことよりも、思いやりの気持ちを持ってることが、男はもちろん女だって、すばらしいことだって思えるのよね。 何てことない言葉だから、ものすごく心に深く入ってくるわけじゃないけど、辛い気持ちでいることを知って「かわいそうに」とか、哀しみの中…

男こそ、なほいとありがたく

男っていうのは、やっぱりすごく奇妙で不思議な考え方をするものだわ。 とても美人の彼女を捨てて、不美人な女性と付き合ってるのも不思議だわね。宮中に出入りしてる男、名家の子どもなんかは、たくさんいる中で、いいんじゃない?っていう人を選んで恋愛な…

世の中になほいと心うきものは

世の中でやっぱりすごくイヤなものは、人に憎まれることでしょうね。どんな変人だって、自分が人から憎まれたいって思う? 思わないでしょ!? だけど自然と、お勤めしてるところでも、親兄弟の中でも、愛されるor愛されない、があるのはとても辛いことだわ…

いみじうしたたてて婿とりたるに

すごく大層な準備をしてお婿さんを取ったのに、すぐに通わなくなった婿が舅に会った時って、申し訳ないことしたかな、なんて思うのかしら?? ある人が今とっても勢いがある家の娘の婿になって、でもたった1カ月程も頻繁に通いもせずに終わっちゃったもんだ…

たのもしきもの

頼もしいものは…。病気の時、お供の僧侶をたくさん連れて加持祈祷をすること。気分がすぐれない時にとても誠実な恋人が言葉をかけて慰めてくれるの。 ----------訳者の戯言--------- 今回は頼もしく思えること、心強いもの二例です。 病気のことは「心地悪し…

せめておそろしきもの

ものすごく恐ろしいもの。夜に鳴る雷。近い隣の家に泥棒が入ったの。自分が住むところに来た時のは、全然覚えてないもんだから、何とも思わないわ。 近所の火事、これまた恐ろしいのよ。 ----------訳者の戯言--------- 「せめて」。すごく甚だしい様子を言…

いみじうきたなきもの

めちゃくちゃ汚いもの。なめくじ。粗末な板敷きを掃く箒(ほうき)の先っぽ。殿上の合子。 ----------訳者の戯言--------- ナメクジもえらい言われようだと思います。もっと汚いものはあるだろうに。 ナメクジ(蛞蝓/かつゆ)というのは、陸に生息する巻貝の…

文ことばなめき人こそ

手紙の言葉が失礼な人は憎ったらしいわ。世間をテキトーに舐めた考えで書き流した言葉が憎ったらしいこと!! さほど身分が高くない人のところに、あまりにもかしこまったのを送るのも、たしかにいけないことよね。でも自分が失礼な手紙をもらった時はもちろ…

ことに人に知られぬるもの

特別、人に気にされてないもの。凶会日(くえにち/くえび)。人の母親が年老いていくの。 ----------訳者の戯言--------- 人に知られぬるもの。理解されないというか、気にも留めてもらえないというか。そういうことだと思います。 凶会日(くえにち)という…

ただ過ぎに過ぐるもの

すぐ過ぎてっちゃうもの。帆をかけた舟。人の年齢。春、夏、秋、冬。 ----------訳者の戯言--------- まあそうですかねぇ、という感想しかありません。 兼好法師も「徒然草」第百五十五段では物事の「タイミングとスピード」について書いています。結論めい…

さかしきもの

小賢しいもの。今どきの三歳児。幼児の祈祷をしてお腹なんかを揉んでる女。いろんな道具を出してもらって祈祷用のモノを作るんだけど、紙をたくさん重ねて全然切れ味のよくない刀で切る様子は、1枚だって切れそうもないのに、そうすることに使う道具に決まっ…

ことばなめげなるもの

言葉が無礼なものは…。宮咩(みやのめ)の祭文を読む人。舟を漕ぐ者たち。雷鳴の陣の舎人。相撲を取る人。 ----------訳者の戯言--------- 「なめげなり」は「無礼だ」「失礼だ」ということらしいです。「なめげ」は漢字では「無礼気」と書くそうですが、後…

ないがしろなるもの

いい加減なもの。女官たちが髪をアップにしてる姿。唐絵に描かれてる革の帯の後ろ。聖(ひじり)の振る舞い。 ----------訳者の戯言--------- ないがしろなり。です。「ないがしろ」は漢字で書くと「蔑ろ」で、軽蔑の蔑ですね。今は。 ただ、昔は「無きが代…

さわがしきもの

騒がしいものっていうと…。跳ねる火の粉。板葺き屋根の上でカラスが斎(とき)の生飯(さば)を食べるの。十八日に、清水寺に籠り合ってるの。 暗くなって、まだ火を灯さない頃に、よそから人が来あわせた時。まして遠いところにある地方の国から家の主人が…

雲は

雲は、白いの。紫の。黒いのもいい感じね。風が吹く時の雨雲。 夜が明ける頃の黒い雲が、だんだん消えてってあたりが白んでいくのもすごくいいの。「朝に去る色」とかっていうのは、漢詩にもなってるようだわね。 月がすごく明るい表面に薄い雲、って、しみ…

星は

星は、昴(すばる)。彦星。夕づつ。よばい星は少しおもしろいわ。尾さえなかったら、もっといいんだけどね。 ----------訳者の戯言--------- すばる。昂です。あの谷村新司の歌った昴。自動車メーカーのスバルを思い起こす人もいらっしゃるでしょうね。牡牛…

月は

月は、有明の月が東の山ぎわに細い形で出てる時が、すごくしんみりといい感じなの。 ----------訳者の戯言--------- 「有明」というのは有明月。有明の月ですね。以前も書きましたが、夜が明けても残ってる月のことを言います。また、夜が明けても月が残って…

日は

日は、入り日ね。日が沈み込んでしまった山の端に、光がまだ残ってて赤く見えてるところに、薄い黄色っぽくなった雲がたなびいている様子には、すごくしんみりしちゃうの。 ----------訳者の戯言--------- 日は日没のがいいと言ってます。というか、日そのも…

雪は

雪は、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根に降るのがすごく素敵なの。少し消えそうになっている時がね。また、そんなに多くも降らない雪が、瓦の継ぎ目の一つ一つに入り込んで、瓦が黒く丸く見えるのが、とても面白いのよね。 時雨(しぐれ)、霞(あられ)は、板葺…

降るものは

降るものは、雪。そして霰(あられ)。 霙(みぞれ)はイヤなものだけど、白い雪が混じって降るのはいかしてるわ。 ----------訳者の戯言--------- 今回は「降るもの」です。降るものといえば雨と雪と霰(あられ)、霙(みぞれ)、あとは雹(ひょう)ぐらい…

岡は

岡は、船岡(ふなおか)。片岡。鞆岡(ともおか)は、笹が生えてるのがいかしてるわ。かたらいの岡。人見の岡。 ----------訳者の戯言--------- 船岡は現在の船岡山です。京都市北区にありますが、これまでにも何度か出てきました。「野は」の段でも紹介しま…

細殿の遣戸を

細殿の遣戸をめちゃくちゃ朝早い時間帯に押し開けたら、御湯殿(おゆどの)の馬道から下りてくる殿上人の着崩れした直衣、指貫がひどく綻(ほころ)んでて、色々な衣がはみ出してるのを押し込んだりなんかして、北の陣のほうに歩いてくんだけど、開いてる戸…

雪高う降りて

雪が高く積もるぐらい降って、今も相変わらず降り続いてるんだけど、五位の人も四位の人も端正で若々しい人が袍(うへのきぬ)の色がすごくキレイで、石帯(せきたい)の痕(あと)がついてるのを、宿直姿(とのいすがた)の腰にたくし上げて。紫の指貫も雪…