古代の人の指貫着たるこそ
古風な人が指貫をはくのなんて、全然もってのほかだわ。指貫を身体の前面に引き当てて、まず最初に衣の裾を全部押し込んで腰紐はそのまんまにしてて、衣の前をしっかり整え終わってから、腰紐を取ろうって後ろのほうに手を伸ばして、猿が手を縛られてるみたいな恰好で紐を解きながら立ってるのは、急いでる場合、ちゃんと支度ができるとは思えないでしょ。
----------訳者の戯言---------
古代の人、と言いますから、縄文人とかネアンデルタールとか、マチュピチュとかのインカ帝国の人やらの古代人のことかと思いきや「古風な人」のことを言うらしいです。非常にややっこしい。
で、その人が指貫を穿くのですから、さぞやトラディショナルなのだろうなと思いきや、disられてます。
前時代センスの奴の着方を小バカにする清少納言。
要領が悪くて、もう、急いでる時、間に合わんだろうがよ、イライラすんじゃボケ!という感じかと思います。
例えて言うと、ネクタイを締めて上着を着てから、ズボンを穿くおじさんですか。ちょっと違いますか、ワンピース着てからレギンス穿く感じでしょうか。一種のエイハラ的要素もあり、またもや炎上ものですね。
服ぐらい自由に着させてあげて、と思うのは私だけでしょうか。
【原文】
古代(こたい)の人の、指貫着たるこそ、いとたいだいしけれ。前に引き当てて、まづ裾をみな籠め入れて、腰はうち捨てて、衣の前を調(ととの)へはてて、腰をおよびてとるほどに、後ろざまに手をさしやりて、猿の手結はれたるやうにほどき立てるは、とみのことに出でたつべくも見えざめり。