雪は
雪は、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根に降るのがすごく素敵なの。少し消えそうになっている時がね。また、そんなに多くも降らない雪が、瓦の継ぎ目の一つ一つに入り込んで、瓦が黒く丸く見えるのが、とても面白いのよね。
時雨(しぐれ)、霞(あられ)は、板葺きの屋根に降るのがいいの。
霜も板葺きの屋根、庭に下りるのがいいわね。
----------訳者の戯言---------
檜皮葺(ひわだぶき)は、檜(ひのき)の樹皮を使って屋根を葺く方法です。
この時代には、私的な建築物では檜皮葺が用いられたそうで、例えば朝廷の公的な儀式の場である大極殿は瓦葺きでしたが、天皇の私邸である紫宸殿や清涼殿は檜皮葺とのことです。また貴族の私邸である寝殿造も檜皮葺だったそうです。
瓦が丸く黒く丸く見えるってどういうことよ?と思いましたが、瓦と瓦の継ぎ目を雪が埋めて、その四角の角や縁を見えなくしてるんでしょうか、それで、結果的に雪のない瓦の部分が黒く丸い形に残って見えるということなのだと思います。
時雨(しぐれ)というのは、主に秋から冬にかけて一時的に降ったり止んだりする雨のことを言うそうですね。
時雨といえば、つくだ煮でしぐれ、またはしぐれ煮というのがありましたが、なぜその名がついたのか?
諸説あるようですね。①さまざまな風味が口の中を通り過ぎることを時雨が一時的に降る様子に見立てたことから ②ハマグリの旬が時雨の降る時期と重なることから ③短時間で仕上げる調理法が時雨に似ていることから
だそうです。たしかに生姜が入っていて味に変化がありますね。そもそもはハマグリのつくだ煮だったそうです、しぐれ煮というのは。
なるほど。あまりひどく濡れないタイプの雨や霰のように液体感が少ないものは、板葺きがいいって言うわけですね。霜も板葺きの屋根、そして庭に霜が降りるのもいいと。割と普通なんですが。庭の霜。
前段の続きのような話です。今度は、清少納言的にそれぞれどこに降るのがいいか?ということですね。
【原文】
雪は、檜皮葺(ひはだぶき)、いとめでたし。少し消え方になりたるほど。また、いと多うも降らぬが、瓦の目ごとに入りて、黒うまろに見えたる、いとをかし。
時雨・霰は 板屋。
霜も 板屋。庭。