枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

成信の中将こそ

 成信の中将は、人の声をすごくよくお聞き分けになったの。同じ所にいる女房の声なんかは、いつも聞いてない人は全然聞き分けることができないのね。特に男性は、人の声も筆跡も見分けたり聞き分けたりできないのに、めちゃくちゃ小っちゃな声も、見事にお聞き分けになったのよ!


----------訳者の戯言---------

成信の中将(源成信)というのは、ルックスも性格もいいということで当時一世を風靡した人らしく、宮中の女子たちの間でもかなり人気があったようです。
当時、宮中の警備や行幸時の警護を担当した左右の近衛府という役所がありました。源成信は、その右近衛府の権中将という、だいたいナンバー4くらいのポジションにいたようですね。
元々親王の子、つまり天皇の孫で、後に藤原道長の猶子(ゆうし)になっています。エエトコの~というか、元皇族。セレブ中のセレブです。

家柄もよく男前で性格も良くて、しかも人の声を聞き分けるのが得意! いいとこばっかりじゃないですか!

とは言ったものの、実際人の声を聞き分けられるのってそんないいことなん?? 何かすごいメリットがあるのでしょうか? 内緒話とか悪口を物陰からこっそり聞いて、あいつこんなこと言うてましたわーとか、それぐらいでしょ。何か下世話っすね。それともクイズドレミファドン的なあれですか。まさか違いますよね。

人のうへいふを」では、清少納言自身、人の陰口言うの大好き!みたいなこと書いてますから。そもそも下品なんですよ、当時の貴族とかいう人々。帝の孫かなんか知りませんけど、どうしようもないなコイツら、と思いますね。


【原文】

 成信の中将こそ、人の声はいみじうよう聞き知り給ひしか。同じ所の人の声などは、常に聞かぬ人はさらにえ聞き分かず。ことに男は人の声をも手をも、見分き聞き分かぬものを、いみじうみそかなるも、かしこう聞き分き給ひしこそ。