枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

なほめでたきこと④ ~里なる時は~

 里の実家にいた時は、一行がただ通って行くのを見るだけじゃ飽き足らず、賀茂の御社まで行って見ることもあったわ。大きな木々の下に車を停めると、松明(たいまつ)の煙がたなびいて、火の明かりで半臂の紐や衣のツヤも、昼間よりはいっそうすてきに見えるのね。橋の板を踏み鳴らして、声を合わせて舞うのもすごく面白くて、水の流れる音、笛の音なんかが合わさって聴こえるのは、ほんと、神様だって、すばらしい!ってお思いになるでしょう。頭中将って言われた人が毎年舞人で、すばらしいもの!って思い込んでたんだけど、亡くなって上の社の橋の下に霊がいるって聞くもんだから、気味が悪くって、物事にそれほどまでにも思い入れしないようにっては思うんだけど、やっぱりこの祭がすばらしいって、そう簡単にこの思いを捨ててしまうことってできないのよね。


----------訳者の戯言---------

半臂(はんぴ)というのは、袍と下襲との間に着る、袖無しの胴衣だそうです。洋服で言うと、ジャケットとシャツの間に着る袖なしの、ということですから、ベストみたいなもの、となりますでしょうか。

賀茂神社というのは、上社と下社があって、ご存じのとおり、今は上賀茂神社下鴨神社に分かれています。元々は同じ神社だったんですね。ここで出てきたのは上の社でしょうか。

頭の中将というと、枕草子ではキラッキラの男前、藤原斉信が定番ですが、1035年まで生きてますから、この段の人とは全然違います。蔵人頭近衛府の中将を兼ねた人はものすごくたくさんいますから、私レベルではいったい誰なのかさっぱりわかりません。
ここは専門家にお任せするとして、毎年舞人をやってた頭の中将がいて、その人の霊魂が上の御社の橋の下にいる、と信じられていた、ってことだけはたしかにあったと読み取れます。

さて、③に続いて賀茂神社の臨時の祭です。
清少納言の実家がどこなのかよくわからないんですが、平安宮と賀茂神社をつなぐ沿道界隈だったんでしょうか。少し調べたんですが、わかりませんでした。これも専門家にお任せするしかありません。

清少納言、賀茂の臨時の祭にハンパなくはまってます。もはや石清水の臨時祭どころではありません。
⑤に続きます。


【原文】

 里なる時は、ただわたるを見るが飽かねば、御社(やしろ)までいきて見る折もあり。おほいなる木どものもとに車を立てたれば、松の煙のたなびきて、火の影に半臂の緒、衣のつやも、昼よりはこよなうまさりてぞ見ゆる。橋の板を踏み鳴らして、声合は<せ>て舞ふほどもいとをかしきに、水の流るる音、笛の声などあひたるは、まことに神もめでたしとおぼすらむかし。頭の中将といひける人の、年ごとに舞人にて、めでたきものに思ひしみけるに、亡くなりて上の社の橋の下にあなるを聞けば、ゆゆしう、ものをさしも思ひ入れじとおもへど、なほこのめでたきことをこそ、さらにえ思ひすつまじけれ。

 

本日もいとをかし!! 枕草子

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