枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

なほめでたきこと⑤ ~八幡の臨時の祭の日~

「八幡の臨時の祭りの日は、終わった後が全然なんにもやることがなくって退屈なの。どうして帰ってからまた舞いの演技をしないんでしょ?? やったら、おもしろいのに! 禄をいただいて後ろから退出するのはつまんないわよ」
なんて言うのを、帝がお聞きになって、
「舞わせましょう」
っておっしゃるの。
「え、本当でございますか?? だったらどんなにかすてきなことでしょう!」
なんて申し上げたのね。で、喜んじゃって、定子さまにも、
「ぜひ、舞わさせなさいますように、帝にお話しなさってください」
とかって、みんな集まって申し上げて騒いでたんだけど、その時、宮中に帰ってきてから舞人たちが舞いを披露したのは、すごくうれしかったわ。そんなことはないだろう、って油断してた舞人が、帝のお召しだって聞いて、物にぶつかるくらい騒ぐの、めちゃくちゃ気がおかしくなっちゃったみたい。

 下の局にいた女房たちが、慌てて清涼殿に参上する様子っていったらもうww 人の従者や殿上人なんかが見てるのも気づかずに、裳を頭からかぶって、その参上するのを笑うのも、またおもしろくってね。


----------訳者の戯言---------

裳というのは、表着(上着)のもう一つ外側に着る衣です。腰から下につけて、後ろへ長く引いた衣装とのこと。それを頭からかぶって笑いをこらえた、ということなんですね。

というわけで、シーンは石清水八幡宮の臨時の祭に、また戻ります。
賀茂神社の臨時の祭には「還立の御神楽」があったんですが、石清水八幡宮のにはなかったワケで、宮中にいる女房たちとしてはちょい不満だったんでしょう。なこと言ってたら、帝が聞きつけて、やることになったんですね。一声で、それまでのしきたりを変えてしまいます。さすが天皇。けど、いいのか?

そりゃ、演るダンサーたちは慌てますわ。バックバンドも。

というわけで、いろいろありましたが、春の石清水八幡宮の臨時祭。宮中でリハはあるけど、後夜祭的な「還立の御神楽」は無いんですね。けど、帝の一声でやりました、と。
しかしよく考えたら、賀茂神社は平安宮にめっちゃ近いけど、八幡は遠いです。舞人たちはさぞお疲れだったでしょう。
女房たちも帝もそんなことはお構いなし、ですね。
「をかし」かったらいいのか!?


【原文】

 「八幡(やはた)の臨時の祭の日、名残こそいとつれづれなれ。など帰りてまた舞ふわざをせざりけむ。さらば、をかしからまし。禄を得て、後ろよりまかづるこそ口惜しけれ」などいふを、上の御前に聞こしめして、「舞(ま)はせむ」と仰せらる。「まことにや候ふらむ。さらば、いかにめでたからむ」など申す。うれしがりて、宮の御前にも、「なほそれ舞はせさせ給へと申させ給へ」など、集まりて啓しまどひしかば、そのたび、帰りて舞ひしは、いみじううれしかりしものかな。さしもやあらざらむとうちたゆみたる舞人、御前に召す、と聞こえたるに、ものにあたるばかり騒ぐも、いとど物ぐるほし。

 下にある人々のまどひのぼるさまこそ。人の従者(ずさ)、殿上人など見るも知らず、裳を頭にうちかづきてのぼるを笑ふもをかし。

 

枕草子 平安女子のキラキラノート (角川つばさ文庫)

枕草子 平安女子のキラキラノート (角川つばさ文庫)