枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

細殿の遣戸を

細殿の遣戸をめちゃくちゃ朝早い時間帯に押し開けたら、御湯殿(おゆどの)の馬道から下りてくる殿上人の着崩れした直衣、指貫がひどく綻(ほころ)んでて、色々な衣がはみ出してるのを押し込んだりなんかして、北の陣のほうに歩いてくんだけど、開いてる戸の前を通り過ぎるってことで、纓(えい)を前面に引き倒して顔を隠して行っちゃうのも面白いわ。


----------訳者の戯言---------

細殿(ほそどの)というのは、殿舎の「廂の間」の中でも、細長いもののことを言ったようです。仕切りをして、女房などの居室(局)として使ったらしいですね。廂の間は母屋の外側に付加されてる部屋。「廂」というのは「ひさし」のことなのですね。
遣戸というのは引き戸のことです。

「とう」は、「とし」つまり「早い」「速い」の意味の「疾し」の連用形「とく」の音便変化だと思います。

御湯殿(おゆどの)というのは、清涼殿の北西、後涼殿に続く渡殿 (わたどの) にある、天皇が沐浴する部屋。

馬道(めどう)っていうのは殿舎と殿舎を結ぶために造られた厚板を敷いた簡単な通路のことを言いました。馬を中庭まで引き入れるときに、その一部を取りはずせるようにした切馬道(きりめどう)というのもあったようですね。

北の陣というのは、今内裏の東の門のこと。「今内裏」はそう言えば結構最近出てきましたね。「一条の院をば今内裏とぞいふ①」でした。
といっても、しばらく私がサボってましたから、最近でもないんですが。

纓(えい)というのは、冠の後ろに垂れている部分。昔の装束で帽子みたいなのに付いてる長細いぴらぴらしたやつです。帽子じゃなくて冠なんですけどね。

というわけで、前々段あたりから、「とある日常の中で見た印象的なワンシーン」みたいな段が続いていて、これもその一つ。「とある」といえば「とある魔術の」とか「とある科学の」ですが、割と好きです。白井黒子とか。

久しぶりにアップしたのですが、少しずつでもいいからサボらずにやっていかないといけないなぁと思っています。反省。


【原文】

 細殿の遣戸をいととうおしあけたれば、御湯殿(おゆどの)に馬道(めだう)より下りて来る殿上人、なえたる直衣・指貫の、いみじうほころびたれば、色々の衣どものこぼれ出でたるを押し入れなどして、北の陣ざまにあゆみ行くに、あきたる戸の前を過ぐとて、纓(えい)をひき越して顔にふたぎて往ぬるもをかし。

 

 

枕草子 いとめでたし!

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