枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

弾くものは

弾くものって言ったら、琵琶よね。その調弦は風香調(ふこうじょう)がいいわ。黄鐘調(おうしきじょう)。蘇合(そごう)の急。鶯(うぐいす)の囀(さえず)りっていう曲。 筝(そう)の琴は、すごく素晴らしいわ。筝曲は、想夫恋(そうふれん)がいいわね…

舞は

舞は、駿河舞(するがまい)。求子舞(もとめごまい)はすごくいい感じだわ。太刀を抜くようなところはヤだけど、すごくいかしてるの。唐土(もろこし=中国)で、敵と味方が一緒になって舞ったとかいう話を聞くとね。 鳥の舞もいいわ。抜頭(ばとう)は、髪…

あそびわざは

遊戯は、小弓。碁。見た目は悪いけど、蹴鞠(けまり)もおもしろいわね。 ----------訳者の戯言--------- 小弓(こゆみ)。射的あそびです。小さな弓矢で的に当てる室内ゲーム。今ならダーツですか。もしくはシューティングゲームですね。 碁。「つれづれな…

あそびは

遊びは夜ね。人の顔が見えない時間帯がいいわ。 ----------訳者の戯言--------- この時代には、概ね管弦などの音楽系の楽しみ、詩歌、舞などを、「遊び」といったようです。今のリア充系の方々の遊びですよね。ライブ感ありそうです。楽器ができる人はアドリ…

陀羅尼は

陀羅尼(だらに)を唱えるなら、暁がいい。お経を読むのは、夕暮れね。 ----------訳者の戯言--------- 陀羅尼(だらに)はサンスクリット語のダーラニーを漢字にしたもので、内容もサンスクリット語のものを漢字で音写したものだそうです。ダーラニーとは「…

物語は

物語は…。住吉物語。うつほ(宇津保)物語、特に「殿移り」のところね、でも「国譲り」は憎ったらしいわ。埋れ木。月待つ女。梅壷の大将。道心すすむる。狛野(こまの)物語は、古い蝙蝠(かはほり=扇)を探し出して持って行ったのがおもしろいの。物羨みの…

ふみは

文は、白氏文集。文選(もんぜん)。新賦。史記。五帝本紀。願文(がんもん)。表。博士の書いた申文(もうしぶみ)。 ----------訳者の戯言--------- 「文集(もんじゅう)」というのは一般的に詩文集のことを指しますが、「白氏文集」を指すことが多いよう…

仏は

仏はっていうと。如意輪観音。千手観音。いや六観音全部ね。薬師如来。釈迦如来。弥勒菩薩。地蔵菩薩。文殊菩薩。不動尊(不動明王)。普賢菩薩。 ----------訳者の戯言--------- 如意輪観音ですね。「如意」とは意のままに智慧や財宝、福徳をもたらす如意宝…

経は

経は。 法華経は言うまでもないわ。普賢(ふげん)十願。千手経。随求(ずいぐ)経。金剛般若経。薬師経。仁王経の下巻。 ----------訳者の戯言--------- 法華経はさらなり。と清少納言も書いてるとおり、説明するまでもありません。超メジャーな経典ですね…

寺は

寺は…。壺坂寺。笠置寺。法輪寺。霊山寺は釈迦仏のお住いなんだから、しみじみいい感じなの。石山寺。粉河寺。志賀寺。 ----------訳者の戯言--------- 壺坂寺。今は壷阪寺と書くようです。奈良県高市郡高取町壷阪というところにあります。ご本尊は、十一面…

森は

森は…。うえ木の森。石田(いわた)の森。木枯の森。うたた寝の森。岩瀬の森。大荒木(おおあらき)の森。たれその森。くるべきの森。立聞(たちぎき)の森。 横竪(よこたて)の森っていうのが、耳に残ってるのが不思議だわ。森なんて言えるものでもなくっ…

浦は

浦は、大の浦。塩釜の浦。こりずまの浦。名高の浦。 ----------訳者の戯言--------- 「浦」って何ですか?と思って調べたところ、海や湖が陸地に入りこんだ所だとわかりました。つまりシンプルに言うと、「入り江」のことのようです。 大の浦の その長浜に …

浜は

浜は。有度浜。長浜。吹上(ふきあげ)の浜。打出(うちいで)の浜。もろよせの浜。千里(ちさと)の浜は、広いんだろうな、って思われるわ。 ----------訳者の戯言--------- 「有度浜(うどはま)」は、静岡県静岡市の駿河湾に面している海岸だとか。有度山…

島は

島っていうと…。八十島(やそしま)。浮島。たはれ島。絵島。松が浦島。豊浦(とよら)の島。籬(まがき)の島。 ----------訳者の戯言--------- ちょっとめんどくさいやつです。時々ありますね、「いかしてる〇〇特集!!」みたいな段。今回は「いかした島…

ことにきらきらしからぬ男の

特別キラキラしてもない男で、背の高い人や低い人をたくさん引き連れてる従者よりも、少し乗り馴らした車がすごくツヤツヤしてて、身なりのとても相応しい牛飼童が、牛にすごく勢いがあって、その牛に遅れるように綱に引っ張られて車を進めてるのね。 で、ス…

五月の長雨の頃

五月の長雨の頃、上の御局(みつぼね)の小さい扉の簾に、斉信(ただのぶ)の中将が寄りかかっていらっしゃった、その香りはほんとに素敵だったわ♡ 何の香りかはわからないの。だいたい、雨で湿ってて、艶(なま)めかしい雰囲気っていうのは珍しくもないこ…

心にくきもの④ ~内裏の局などに~

宮中の局なんかに、打ち解けてるって思われるとマズい男性が来てるから、私の部屋の灯は消してるんだけど、傍らにある灯の光が何かの物の上とかから差し込んで、さすがに物の形はほんのり見えてしまうから、背の低い几帳を引き寄せてね。ホント昼間は絶対に…

心にくきもの③ ~殿ばらなどには~

身分の高い男性たちにとってみたら、奥ゆかしく思える新人の女房で、特に目をかけるほどの身分じゃない人なんだけど、やや夜が更けて参上したら、衣擦れの音が心惹かれる感じで、すり膝で進んでって定子さまの御前に侍ってて、定子さまが何か少しだけおっし…

心にくきもの② ~夜いたくふけて~

夜がとても更けて、定子さまもお休みになられて、女房たちがみんな寝てしまった後、外の方で殿上人なんかがお話をしてたら、奥で碁石を碁笥に入れる音が何回も聴こえるの、すごく奥ゆかしいわ。火箸をそっと灰に突き立てる音をを、まだ起きてたんだわ、って…

心にくきもの①

奥ゆかしいもの。物を隔てて聞いてたら、女房とは思えない手の音が、ひっそりと素敵な風に聴こえたんだけど、答えは若々しい感じで、衣ずれの音をさせて参上する気配。物の後ろや障子とかを隔てて聞いてたら、お食事をなさる頃なのかしら、箸や匙なんかの音…

野分のまたの日こそ

野分(のわき=台風)の翌日はっていうと、すごく風情があっていい感じなの。立蔀(たてじとみ)や透垣(すいがい)なんかは乱れてて、庭の植栽もめちゃくちゃ痛々しい感じ。大きな木々も倒れて、枝とかも風の勢いで折れちゃってるのが、萩や女郎花(おみな…

九月つごもり、十月の頃

9月末から10月にかけての頃、空が曇ってきて、風がすごく騒がしく吹いて、黄色になった葉っぱがひらひらと散って落ちるのは、すごくしみじみと風情を感じるわ。桜の葉、椋(むく)の木の葉は特に早く散ってしまうの。 10月頃に、木立の多い家の庭は、とても…

八、九月ばかりに

8月か9月頃に、雨にまじって吹いた風はすごく風情があるわ。雨足が横向きに、騒がしく吹いてるから、夏の間、使ってた綿入りの衣が掛かってるのを、生絹(すずし)の単衣に重ねて着るのも、とてもいい感じなの。この生絹だってめちゃくちゃ窮屈で暑苦しくて…

風は

風は…嵐。3月頃の夕暮れにゆるく吹いた雨風。 ----------訳者の戯言--------- 嵐。激しい勢いで吹く風を嵐と言います。どの季節でもありますから、嵐だけで季語にはなっていません。そもそもは山から吹き下ろす強い風のことを言ったようですね。「荒風」で「…

宮仕人のもとに来などする男の

宮中に仕えてる女房のところに来たりする男が、そこで物を食べるのは、すごくみっともないわね。食べさせる女房も全然気に入らないわ。自分を想ってるだろう女子が「やっぱり食べて」なんて気を遣って言うのを、嫌がってるみたいに口をふさいで、顔をそむけ…

ふと心劣りとかするものは

ふと、劣ってるように感じるものっていうと、男でも女でも、会話の時に下品な言葉遣いをするのは、どんなことよりもいちばんダメなことだわ。たった言葉一つで不思議なことなんだけど、上品にも下品にもなるっていうのは、どういうわけなんでしょ。で、それ…

大路近なる所にて聞けば

大通りの近くにある家で聞いてると、牛車に乗ってる人が、有明の月が素敵に出てるから簾(すだれ)を上げて、「遊子なほ残りの月に行く」っていう詩を、いい声で朗詠したのもおもしろいわ。 馬に乗ってても、そういうイカしてる人が通って行くのはいい感じ。…

南ならずは東の廂の板の

南じゃなかったら、東の廂の間の床板の影が映るくらいのところに、鮮やかな畳を置いて、三尺の几帳の帷子(かたびら)がすごく涼し気に見えてるのを押しやったら、滑ってって。思ってるよりも行き過ぎて立ったところに、白い生絹の単衣、紅色の袴、夜具には…

いみじう暑き昼中に

めちゃくちゃ暑い昼日中に、どういうことしたらいいのかしら~?って。扇の風もぬる~いし、氷水に手を浸して、大騒ぎしてるうちに、ものすごく真っ赤な薄様の紙を、唐撫子がすばらしく咲いた花に結びつけたの、お使いの者が持ち込んで来たんだけど、書いて…

好き好きしくてひとり住みする人の

色好みで独身の男性が、夜はどこに行ってたんでしょ? 夜明け前に帰って来て、そのまま起きてるから、眠そうな感じに見えるんだけど、硯を手元に持ってきて、墨をていねいにすって、何となく筆の進むままテキトーにとかじゃなく、気持ちを込めて手紙を書いて…