枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

八、九月ばかりに

 8月か9月頃に、雨にまじって吹いた風はすごく風情があるわ。雨足が横向きに、騒がしく吹いてるから、夏の間、使ってた綿入りの衣が掛かってるのを、生絹(すずし)の単衣に重ねて着るのも、とてもいい感じなの。この生絹だってめちゃくちゃ窮屈で暑苦しくて、脱ぎ捨てたかったのに、いつの間にこんなに涼しくなったんでしょ?って思うのもおもしろいわね。
 まだ夜が明るくなる前、格子や妻戸を押し開けたら、嵐がさっと冷たく顔に沁みたのは、すごく気分が良かったわ。


----------訳者の戯言---------

旧暦の8~9月。8月は葉月(はづき)、9月は長月と言いますね。イメージとして葉月というと葉っぱが青々としているように思いますが、旧8月は木の葉が紅葉して落ちる月「葉落ち月」→「葉月」なんですね。もちろん、この説も数多くある中の一説ではあるんですが。現代人は8月と聞くだけで条件反射的に「真夏!」ですが、江戸時代以前は八月=葉月は「もう秋ですなぁ」という月だったんですね。
というわけで、現代の暦では、年にもよりますが1カ月ほどずれて9~10月頃ですから、日によってはかなり涼しくなってきてる頃だと思います。

前の段に続いて、風のことを書いています。やはり、強めのが好きなようですね、清少納言
この時季ですから、台風とか、熱帯低気圧温帯低気圧、それによって発達した前線の影響で、強風が吹くことが多いのかと思います。台風も、あまり接近しなければ小さい嵐ぐらいにしか感じないでしょう。今みたいに気象衛星や天気図がないわけですから。

梅雨も、昔は五月雨(さみだれ)と言ったわけで、もちろん梅雨もそうなんですが、断続的な長雨のことなんですよね。ただ、梅雨の後期は集中豪雨になりやすいと言われていまして、まさに今豪雨で、九州でたいへんなことになっています。やはりいくらかは降り方も違ってきているのでしょうか。治水の問題、というか基準を変えないといけないのでしょう。

「五月雨式」という言葉も、あまり使わなくなりましたが、時々は使います。文字通り五月雨=梅雨ですから、物事が断続的に行われることを意味します。一コのことを一回で終わらせず、小分けにして何回もやる、っていうことなんですね。もはやテレビのコメンテーターのおじさんやおばさんしか使わないイメージですが、あえて覚えておきましょう。で、イザという時、「それ、五月雨式にやりましょうか」と、威嚇的に使いましょう。ちょっとはかしこそうに見えますから。ただ、「さつきあめしき」って言うと、墓穴を掘りますから。ちゃんと「さみだれしき」と言うようにしましょう。

と、枕草子と関係ないくだらないことをだらだらと書いてしまいました。
いつもなんですけどね。


【原文】

 八九月ばかりに、雨にまじりて吹きたる風、いとあはれなり。雨の脚(あし)横さまにさわがしう吹きたるに、夏通したる綿衣(わたぎぬ)の掛かりたるを、生絹の単衣かさねて着たるも、いとをかし。この生絹だにいと所せく暑かはしく取り捨てまほしかりしに、いつのほどにかくなりぬるにか、と思ふもをかし。暁に格子、端戸(つまど)をおしあけたれば、嵐のさと顔にしみたるこそ、いみじくをかしけれ。

 

枕草子 いとめでたし!

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