2022-01-01から1年間の記事一覧
光り輝く威厳のあるもの。近衛府の大将が帝の先払いをしてるの。孔雀経の読経。御修法(みずほう)。五大尊の御修法もね。御斎会(ごさいえ)。蔵人の式部の丞が白馬節会の日、大庭(おおば)を練り歩くの。その日には靭負(ゆげい)の佐(すけ)が、禁制の…
今朝はそんなふうに見えなかった空が真っ暗にかき曇って、雪が辺りを暗くして降るもんだから、すごく心細く外を見てるうちに白く雪が積もって、さらにどんどん激しく降るんだけど、随身らしいほっそりした男が傘をさして横の方にある塀の戸から入って、手紙…
いつも手紙を送ってくる人が、「どういうことかな? 何か言ってもどうにもならないよ、今は」って言って次の日も音沙汰が無いから、さすがに夜が明けると差し出される手紙が見当たらないっていうのは寂しいなって思ってね、「それにしても、はっきりした性格…
雪はなんたってすばらしいわ。「忘れめや」なんてひとりごとを言って、人目を忍んで逢うのはもちろんのこと、全然そんなことない女性のところも、直衣なんかは言うまでもなく、袍(ほう)も蔵人の青色とかがすごく冷たく濡れているようなのは、すごくイカし…
雨は風情の無いものと思いこんでしまってるからかしら? ほんの少しの時間降るだけでも憎ったらしく思えるわ。高貴な宮中行事や面白いだろうなっていうイベント、尊くてすばらしいはずのことも、雨が降ってしまうとどうにも言いようがなく悔しいのに、何でそ…
さて、月の明るい時には、過去のことも将来のことまでも、思い残すようなこともなくって、心もさまようくらい素晴らしくてしみじみとするのは、他のこととは比べものが無いくらいだわって思うわね。そんな月の夜に来た人は、十日、二十日、一カ月、もしくは…
翌朝早く例の廂の間で女房たちが話しているのを聞いたら、「雨が土砂降りの時にやってきた男性には感動しちゃうわね。何日も待ち遠しくって、つらいことがあっても、そんなふうに濡れてまで来てくれたら、つらいこともみんな忘れちゃう!」っていうんだけど…
一条の院にお造りになった一間所には、嫌な人はまったく寄せ付けないの。東の御門に向かい合っててすごくいい感じの小廂に、式部のおもとと一緒になって夜も昼もいるもんだから、帝もいつもご見物に入って来られるのよ。「今夜は中で寝ましょうかね」って言…
(源)成信の中将は入道兵部卿宮のご子息で、ルックスがすごく良くってお気持ちもすばらしくていらっしゃるの。伊予の守(かみ)の(源)兼資の娘のことを忘れられなくって、親が伊予国へ連れて下った時には、どんなにしみじみと哀しい思いをしたことだろう…
日がうららかに照っているお昼頃、またすごく夜が更けて子の刻(午前0時前後)とかっていう頃になったかな?って時に、もう帝はお休みになっていらっしゃるのかしら??なんてお思い申し上げてたら、「蔵人たち…」ってお呼び出しになるの、すごく素敵だわ。 …
時を奏するのはすごくおもしろいわ。すごく寒い夜中なんかに、ゴホゴホって音を立てて靴を引きずって来て弓の弦を鳴らして、「何の誰々、時刻、丑三つ、子四つ」とかって遠くの方で言って、時の杭を差す音なんか、めちゃくちゃいい感じなの。 「子九つ、丑八…
屋は、まろ屋。あづま屋。 ----------訳者の戯言--------- 屋は「や」です。「おく」ではありません。意味としては家のこと。家屋のことなんですが、読みは「や」なのだそうです。ここでは「小屋」のことを言っているようですね。 まろ屋というのは、葦(あ…
崎は 唐崎。三保が崎。 ----------訳者の戯言--------- 崎というのは海に向かって突き出ている陸の先端を言います。岬も同意と言えるでしょうか。 唐崎(からさき)というのは今の滋賀県大津市にある唐崎というところのようです。琵琶湖の南端西側岸になりま…
神は、松尾(まつのお)大社、(石清水)八幡宮(やはたのみや/やはたのみや)はこの国の帝でいらっしゃったというのが素晴らしいわ。ご参詣の行幸なんかに水葱(なぎ)の花の御輿(みこし)にお乗りになるとかって、すごく素晴らしい。大原野神社。春日大社…
檜扇(ひおうぎ)は無地の。唐絵のもの。 ----------訳者の戯言--------- 「檜扇(ひおおぎ)」とは字のとおり薄い檜の板を重ねたものです。宮中で用いられていました。男性が使う場合は、宮中行事の時複雑な式での作法とかをメモする目的で使われたっていう…
扇の骨は、朴(ほお)の木。色は赤いの。紫。緑。 ----------訳者の戯言--------- 扇は朴木の自然木のまんまのやつが良い、ってことでしょうか。他には塗骨と言って、漆塗りをしたものなんかもありました。 「小白河といふ所は② ~少し日たくるほどに~」で…
下襲(したがさね)は、冬は躑躅(つつじ)。桜。掻練襲。蘇芳襲。夏は二藍。白襲。 ----------訳者の戯言--------- 下襲(したがさね)です。今で言うとシャツ的なものですね。上着の下に着るやつで、絵とか見ても後ろがすごく長いです。ただ、枕草子が書か…
単衣は、白いの。束帯の時に紅色の単衣の袙(あこめ)なんかを仮にワンポイントで着てるのはOK。でもやっぱり白いのをね。黄ばんだ単衣なんかを着てる人はすごく気にくわないわ。 練色(ねりいろ)の衣なんかを着ることもあるけど、やっぱ単衣は白いのじゃな…
狩衣(かりぎぬ)は、香染(こうぞめ)の薄いもの。白いふくさ。赤色の。松の葉色。青葉の色。桜襲のもの。柳色のもの。藤色。男はどんな色の衣でも着てるわ。 ----------訳者の戯言--------- 狩衣(かりぎぬ)は文字通り「狩り」をするときに使っていた衣服…
指貫(さしぬき)は、紫の濃いの。萌黄(もえぎ)。夏は、二藍(ふたあい)。すごく暑い頃、夏虫の色をしたのも涼しげだわ。 ----------訳者の戯言--------- 指貫(さしぬき)いうのは今でいうところの袴です。ボトムスですね。括り緒の袴(くくりおのはかま…
歌はっていうと…風俗歌。その中でも「杉立てる門」ね。神楽歌もおもしろいわ。今様歌は長くて節回しが変わってるわね。 ----------訳者の戯言--------- 風俗というと、すぐにキャバクラとかヘルスとかを思い浮かべてしまいますが、違います。現代じゃないん…
尊いこと。九条の錫杖(しゃくじょう)。念仏の回向(えこう)。 ----------訳者の戯言--------- 九条の錫杖(しゃくじょう)。聞いたことがありません。九条というと京都の九条、あとは大阪の九条とか。地名ぐらいしかわからないですね。地名ならほかにもあ…
女院の桟敷から「千賀の塩釜(ちかのしおがま)」とかっていうお便りがあってね、定子さまも返歌をなさるの。趣のある贈物なんかを持って人が行き来するのも素敵だわ。 法会が終わって、女院がお帰りになったの。院司や上達部が今回は半分ほどお供をなさった…
法会が始まって、一切経を蓮の花の赤い造花の一つずつに入れて、僧侶、上達部、殿上人、地下人、六位、その他の者に至るまで持って続いているの、すごく尊いわ。導師が参上して、講義が始まって、舞楽なんかもしたの。一日中見てたら目も疲れて苦しいのね。…
僧都の君が赤色の薄物の衣、紫色の袈裟、すごく薄い薄紫の衣、指貫なんかをお召しになって、頭の様子が青々ときれいな感じで、地蔵菩薩みたいな姿で女房たちに混じってあちこちお歩きになるのもとてもいい感じに見えるわ。「僧綱(そうごう)の中で威儀を正…