細殿に人あまたゐて
細殿に人がいっぱいいて、おもしろくもないおしゃべりをしてたら、キレイな感じの男性や小舎人童なんかが、いかした包みや袋とかに服を包んで、指貫の裾の紐なんかが見えたりしながら、弓、矢、楯とかも持って歩くんだけど、「誰の物なの?」って聞いたら、「誰々様のです」って言って行くコはOK。テンションが上がって、恥ずかしそうに「知りません」って言ったり、何にも言わずに行っちゃうコには、めっちゃイラっとしちゃうわね。
----------訳者の戯言---------
いきなり細殿、って言われても何?っていう感じですが、殿舎の廂の間で、細長いものを細殿(ほそどの)と言ったようですね。仕切りをして、女房などの居室(局)として使用したらしいです。「大進生昌が家に」では「西の廂」と出てきましたが、これも「廂の間」の一つだったんですね。
「小舎人童」は「節は五月にしく月はなし」の段でも出てきました。「貴人の雑用係の少年。また、特に近衛の中将・少将が召し使った少年」(大辞林)とあります。
「指貫(さしぬき)」というのは、裾を紐で引っ張って絞れるようになってる、つまりドローコード付きの袴だそうです。その紐が見えてたと。だからどうなんよ、という話ではありますが。
「誰のん?」って聞いたら、ちゃんと答える男子はいいけど、緊張して「知りません…」とか何にも言わずに逃げちゃうコはNGと。言わんとすることはわかるけど、それ、まあ当たり前じゃん、と私、思います。なのでそれほど面白くはないです。むしろ、「テンパって逃げてっちゃう男子がこれまたカワイイのよ」ぐらいのほうが、エッセイとしてはいいと思うんですけどね。怖げな年長の女性キャリアスタッフに、何か言われたら、普通、ビビりますし。
会社の女性管理職あたりが、別の部署の男性新入社員を「あの子はいい、あの子はだめ」とか言ってるみたいで、ちょっとコワイです。
【原文】
細殿に人あまたゐて、やすからず物などいふに、清げなる男、小舎人童など、よき包み、袋などに、衣どもつつみて、指貫のくくりなどぞ見えたる、弓、矢、楯など持てありくに、「誰(た)がぞ」と問へば、ついゐて、「なにがし殿の」とて行く者は、よし。けしきばみ、やさしがりて、「知らず」ともいひ、物も言はでも往ぬる者は、いみじうにくし。
教科書では教えてくれない日本文学のススメ[無料版] 楽しく学べる学研コミックエッセイ
- 作者: 関根 尚
- 出版社/メーカー: 学研プラス
- 発売日: 2015/03/17
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る