枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、「わかりやすい」「初心者向け」となっているとは思いますがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

職の御曹司におはします頃、西の廂にて⑩ ~さて、その雪の山は~

 さて、その雪山は本物の越(こし=北陸)の山みたいに見えて、雪が消えそうな感じもしなくなってるの。黒く汚れてきて見る価値もない様子にはなったんだけど、ほんと、勝ったわねって気持ちになって、何とかして15日までは持たせたいって私、祈ったわ。でも、「七日を越えるのは到底無理でしょう」って、やっぱ言われるし、どうにかしてこの雪山の最後を見届けようって、女房たちもみんな思ってたんだけど、急に定子さまが三日に内裏にお入りになることになって。この山の最後を知らないで終わるのはめちゃくちゃ残念、って、心底思ったの。他の人も「ほんと、雪の山がどうなるか知りたかったのにねぇ」なんて言うし、定子さまもそうおっしゃるから、どうせなら言い当ててご覧にいれようと思ってたのに、それもムリだし。で、定子さまの参内のための道具類を運んだりして、とっても忙しい時に紛れて、木守っていう者(庭師)が土塀のところに廂を出して住んでるんだけど、その人を縁側のところに呼びよせて、「この雪山を厳重に守ってて。子どもなんかに踏み散らかされたりせず、壊されたりもしないよう、しっかり15日までキープしておいてね。その日まで雪山があったら、すばらしいご褒美をいただくでしょうし。わたしからも十分なお礼をするわね」なんてお話しして、いつもは台盤所の女房や下男なんかに貰ってるんだけど、その果物やなんかをすごくいっぱい持たせてあげたら、ニコニコ笑って、「ま、とっても簡単なことです。きっちりガードしますよ、子どもは登るかも、ですけど…」って言うから、「そこ、ちゃんとコントロールして、言うことを聞かない者がいたら報告して」とかって、言い聞かせて、定子さまが参内されたから、七日までお供して。それから実家に戻ったのね。


----------訳者の戯言---------

原文の「越(こし)」というのは、「Weblio古語辞典」によると、若狭と佐渡を除く「北陸道」の古名となっています。今の福井県、石川県、富山県新潟県。だそうです。「大化改新の後、越前・越中・越後に分かれ、さらにその後に能登・加賀に分かれた」となっていますが、能登・加賀に分かれたのは今の石川県や富山県、つまり越中あたりだけのことでしょう。「越の国」「越の道」「越路(こしじ)」などとも呼ばれたそうです。

詳細は専門家の方にお任せするとして北陸の雪山と言えば「白山」でしょう。

「築土」というのは、「屋根付き土塀」のことのようです。「人にあなづらるるもの」という段に出ていました。

「台盤所(だいばんどころ)」とは、「台盤を置いておく所。宮中では、清涼殿内の一室で、女房の詰め所」となっています。では「台盤」とは何ぞや? 公家の調度の一つで、食器や食物をのせる台。とのこと。食卓、お膳みたいなやつですね。

お正月になって、定子さまにお供して内裏に入ることになった定子サロンのスタッフたち。何とか雪山をキープすべく、清少納言は庭師の人にこの雪山のガードを頼みます、と。さて、この雪山、いつまでもつのでしょうか。

常陸の介や斎院の手紙はいったいどうなったの?と気になりつつも、やはりメインのストーリーは雪山の行方にシフトしていく感じですか。いやいや、この段まだまだ気は抜けません。
⑪に続きます。


【原文】

 さて、その雪の山は、まことの越のにやあらむと見えて、消えげもなし。黒うなりて見るかひなきさまはしたれども、げに勝ちぬる心地して、いかで十五日待ちつけさせむと念ずる。されど、「七日をだにえ過ぐさじ」と、なほいへば、いかでこれ見果てむとみな人思ふほどに、にはかに内裏へ三日に入らせ給ふべし。いみじう口惜し、この山のはてを知らでやみなむことと、まめやかに思ふ。こと人も「げにゆかしかりつるものを」などいふを、御前にも仰せらるるに、同じくは言ひあてて御覧ぜさせばやと思ひつるに、かひなければ、御物の具どもはこび、いみじうさわがしきにあはせて、木守といふ者の、築土のほどに廂さしてゐたるを、縁のもと近く呼びよせて、「この雪の山いみじう守りて、童べなどに踏み散らさせず、こぼたせで、よく守りて、十五日まで候へ。その日まであらば、めでたき禄たまはせむとす。わたくしにもいみじき喜び言はんとす」など語らひて、常に台盤所の人、下衆などに呉[ま]るるを、菓物や何やといとおほく取らせたれば、うち笑みて、「いとやすきこと。たしかに守り侍らむ。童べぞのぼり候はむ」といへば、「それを制して、聞かざらむ者をば申せ」など言ひ聞かせて、入らせ給ひぬれば、七日まで候ひて出でぬ。

 

検:職の御曹司におはしますころ、西の廂にて 職の御曹司におはしますころ西の廂にて 職の御曹司におはします頃西の廂にて

枕草子 上 (ちくま学芸文庫)

枕草子 上 (ちくま学芸文庫)