枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

五月ばかりなどに山里にありく

 五月の頃なんかに山里を歩くのはすごくおもしろいの。草の葉も水もすごく青く、あたり一面に見えてて、上の方はさりげなく草が生い茂ってる、長く続いてる道をまっすぐに行ったら、下は何とも言えない水が、深くはないんだけど、お供の人が歩いて行ったら水しぶきがはね上がるのって、すごくおもしろいの。

 左右にある垣根の枝なんかが、車の屋形とかに入ってくるのを急いで捕まえて折ろうとするんだけど、すっと過ぎて逃しちゃうのがすごく悔しいのよね。蓬の車に押しつぶされたのが、車輪が回ったら近くにきてひっかかるのもいい感じだわ。


----------訳者の戯言---------

旧暦5月というと、おおよそ梅雨時です。山里の野原に出ていったら、みたいな話です。垣があると書いてますから、人家か寺社などはあったのでしょうか。

何とも言えない水。何やねんそれ!とツッコミたくなる水です。まじ、どんな水なのでしょうか。何も言えねーと言ったのは北島康介ですが、あの感じでしょうか。金メダル的な。
草の下のほうに水が溜まっているのは、水はけが悪いのか、それとも雨が降りすぎたのか、それでもイヤな湿地の感じではないですね。さわやかな良い感じです。
山里というと、どちらかといえば都の北部、北東部のようなイメージ。前の段で出てきた紫野や平野などをはじめとする洛北の風景なのかもしれません。

この段は、梅雨の合間のちょっとしたお出かけ、という感じでしょうか。
5月のお出かけといえば、以前、「五月の御精進のほど①」という大作がありました。みなさまご記憶にありますでしょうか。雨模様でヒマなのでほととぎすを聴きに行って、知り合いの伯父さんのとこに行って御馳走になったり、卯の花の枝を車に挿しまくって走ってたら…みたいな、なんか30過ぎの女子がそんなにはしゃいでいいの?という段でしたね。もしよろしければ、読み返してごらんください。


【原文】

 五月ばかりなどに山里にありく、いとをかし。草葉も水もいと青く見えわたりたるに、上はつれなくて草生ひ茂りたるを、ながながとたたざまに行けば、下はえならざりける水の、深くはあらねど、人などのあゆむに走りあがりたる、いとをかし。

 左右(ひだりみぎ)にある垣にあるものの枝などの、車の屋形などにさし入るを、急ぎてとらへて折らむとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いと口惜しけれ。蓬の、車に押しひしがれたりけるが、輪の回りたるに、近ううちかかりたるもをかし。