枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

蟻通の明神⑤ ~この中将をいみじき人におぼしめして~

 この中将をすごく重要な人だってお思いになって、「何を褒美として取らせ、どんな官位を授けたらいいのだろうね?」って帝はおっしゃったんだけど、「これ以上の官も位もいただかなくていいです。ただ、年老いた父母が身を隠していなくなってるのを捜しあてて、都に住まわせることをお許しください」ってだけ申し上げたら、「めちゃくちゃ簡単なことだよ」ってお許しになったから、全ての人の親がこのことを聞いてものすごく喜んだのね。で、中将は上達部に、そして大臣におなりになったの。

 そんなことがあって、その人と親は神様になったのかしらね、その神様の元に参詣した人のところに、夜現れておっしゃったのには、

ななわだにまがれる玉の緒をぬきて ありとほしとは知らずやあるらむ
(七曲がりに曲がった穴の玉に緒を貫いて蟻を通した、その蟻通し明神っていう神を世間のみんなは知らないでいるのかな?)

って、ある人が話してたのよ。


----------訳者の戯言---------

自宅に内緒で匿ってた親のおかげで、めでたく当の両親を堂々と元のとおり暮らせるようにした中将。他のお年寄り、高齢の親をもつ人たちも喜んだのですね。みんな感謝です。
しかしここまでにならないと、目が覚めない帝もどうかと思いますけどねー。
ただ、このことでこの中将は上達部、ひいては大臣にまでなったと言いますから、かなりの出世です。まー国難を救ったわけですから、あり得ますわね。

で、この人や年老いた親が神様になっちゃった?っていうんですか。まじか。

たしかに日本の神道多神教でもあり、神様がたくさんおはします。八百万(やおよろず)の神などという言い方もしますしね。神様は身近な存在でもあります。
コミックやアニメでも、神様になった日、神様はじめました、カンナギ等々いっぱいあるんですよね。で、だいたいは、かわいい女子が神様なんですよ。ターゲットがターゲットだけに。それとこの前、鬼滅の刃に抜かれましたが、千と千尋の神隠しにも神様がいっぱい出てきます。YouTubeではねこがみ様が人気ですしね。あれは人ではなくて猫ですが。っていうか本物の神様じゃねーし。猫がダンボールに入ってるだけだし。
あと、忘れていけないのはネ申セブンです、AKBの。神7ですね、前田、大島の頃のね。あの方々も当時は一種の神でした。

ということで、横道に逸れまくりましたが、人神(ひとがみ)と言って人が神様になることも昔から多々あったようです。功徳のあった人が神様になるということは、そこそこあったんですね。もちろん祟りを恐れて、というのもありました。有名なのは菅原道真の天神さんとか、平将門とかですか。で、いかにもなんですが、豊臣秀吉とか徳川家康も神様になってます。調べていると、最近ではあの金鳥蚊取り線香の会社の創業者、蚊取り線香を発明した人ですけど、その人が祀られている神社があるらしいというのもウィキペディアに出ていました。

というわけで、蟻通神社の名前の由来が、この逸話なのかな?という話です。はっきり言うと違いますけど。上達部やら中将やら、大臣がいたのは律令制が採用された後ですが、この神社ができたのはそれよりもずっとずっと大昔、農耕の民が五穀豊穣の神をシンプルに祀ったというのが起源のようですからね。

という段でした。なんか昔の道徳の教科書とか、日本昔話とかにありそうな感じの逸話です。そんな深くはないです。


【原文】

 この中将をいみじき人におぼしめして、「何わざをし、いかなる官・位をか賜ふべき」と仰せられければ、「さらに官もかうぶりもたまはらじ。ただ老いたる父母(ちちはは)の隠れ失せて侍る、尋ねて、都に住まする事を許させ給へ」と申しければ、「いみじうやすき事」とてゆるされければ、よろづの人の親これを聞きてよろこぶこといみじかりけり。中将は上達部、大臣になさせ給ひてなむありける。

 さて、その人の神になりたるにやあらむ、その神の御もとに詣でたりける人に、夜現れてのたまへりける、

七曲にまがれる玉の緒をぬきてありとほしとは知らずやあるらむ

とのたまへりける、と人の語りし。