宰相の中将③ ~月ごろいつしかと~
この何カ月かの間、今か今かと思ってたことさえ、我ながら物好きだわって思ってたんだけど、どうしてそあんな風に予想どおり!みたいにおっしゃったのかしら? いっしょになって悔しがって言ってた中将(源宣方)は何も気にせずに座ってるもんだから、「あの夜明けのことを注意されてるんだよ。覚えてないの?」っておっしゃったら、ようやく「わかった、ほんとほんと」ってお笑いになってるの、こりゃダメだわ。
----------訳者の戯言---------
清少納言的には、七月の七夕が来たら「絶対あのこと言って、またまたおもしろがってやろう!!」って待ち構えてたんですね。ワクワク感もあったんでしょう。なのに、斉信サマときたら、さらにその予想を超えて、なんてスマートに返してきたんでしょ♡
しかしあの時いっしょにいた源(宣方)中将のほうは完全に忘れてる様子。アドリブの巧みに利いた、ピッカピカの斉信に比べると、雰囲気台無しの源中将には、容赦ないダメ出し。ちょっと気の毒ですね。噛ませ犬ですか?かえって同情してしまいます、私。
と、ここまで読んだところで、よく見ると、この段、めっちゃ長いじゃないですか。まだまだあるぞ。いったいこれ以上、何を書くというのでしょうか??
④に続きます。
【原文】
月ごろいつしかとおもほえたりしだに、わが心ながら好き好きしとおぼえしに、いかでさ思ひまうけたるやうにのたまひけむ。もろともにねたがり言ひし中将は、おもひもよらでゐたるに、「ありし暁のこといましめらるるは。知らぬか」とのたまふにぞ、「げに、げに」と笑ふめるわろしかし。