枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、「わかりやすい」「初心者向け」となっているとは思いますがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

職の御曹司におはします頃、西の廂にて①

 職の御曹司に定子さまがいらっしゃった頃、西の廂の間で不断(ふだん)の読経があって、仏様の絵なんかをかけてお坊さんたちが集まってるんだけど、それはまあいつものことなの。

 それがはじまって二日ほどたってから、縁側のところで卑しい者の感じの声で、「やっぱりあの仏様のお供えのお下がりをお分けくださいな」って言うから、「何でやねん! もうかよ!」ってお坊さんたちは言ったんだけど、私が、何てこと言うんだ、って出てって見たら、ちょっと年取った女法師がすごく汚ならしい着物を着て、猿みたいな感じで言ってるのよ。「あの人は何言ってんの?」って私が聞いたら、その女法師が声を取り繕って、「私も仏様の弟子でございますから、御仏のお供えのお下がりをいただきたいと申してるんですが、このお坊さまたちは出し惜しみなさるのです」って言うのね。その声は華やかで、優雅なの。このような者はしょんぼりしてたほうが哀れな感じがするんだけど、ヤケに華やかな感じだなって思って、「他の物は食べないで、仏様のお下がりだけを食べてるんですね。すごく尊いことですね」なんて返すこちらの様子を知ってか、「どうして他の物を食べない、なんてことあります? それがないからこそ、いただこうとしてるんじゃないですか」って言うのよね。で、果物やのし餅なんかを、容れ物に入れてあげたら、やたらと仲良くしてきて、色んなことを話すようになったの。


----------訳者の戯言---------

「職の御曹司におはします頃」と言えば、前にも「職の御曹司におはします頃、木立など」という段がありました。それと同時期のできごとなのでしょう。

前にも書いたことの繰り返しですが、「長徳の変」のあおりを受け後遺症的に謹慎状態だった定子が、その謹慎期間が明けた直後、「職の御曹司」に長期滞在していた時期があって、その時のことのようです。

えー、謎の女法師登場です。さてどんな人なのでしょうか。

ただ、この段、めちゃくちゃ長いです。読むのに1カ月くらいかかりそうな長さです。もちろん私の実力だと、なんですが。とはいえ、ま、頑張りたいと思います。


【原文】

 職の御曹司におはします頃、西の廂にて不断の御読経あるに、仏などかけ奉り、僧どものゐたるこそさらなる<こと>なれ。

 二日ばかりありて、縁のもとにあやしき者の声にて、「なほかの御仏供(ぶく)<の>おろし侍りなむ」といへば、「いかでか、まだきには」といふなるを、何のいふにかあらむとて、立ち出でて見るに、なま老いたる女法師の、いみじうすすけたる衣を着て、猿様にていふなりけり。「かれは、何事いふぞ」といへば、声引きつくろひて、「仏の御弟子に候へば、御仏供のおろし賜べむと申すを、この御坊たちの惜しみ給ふ」といふ。はなやぎ、みやびかなり。かかる者は、うちうんじたるこそあはれなれ、うたても、はなやぎたるかなとて、「こと物は食はで、ただ仏の御おろしをのみ食ふか。いとたふときこと」などいふけしきを見て、「などかこと物も食べざらむ。それが候はねばこそ取り申せ」といふ。菓子、ひろき餅などを物に入れて取らせた[ら]るに、むげに仲よくなりて、よろづの事語る。

 

検:職の御曹司におはしますころ、西の廂にて 職の御曹司におはしますころ西の廂にて 職の御曹司におはします頃西の廂にて