枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

あてなるもの

 上品なもの。薄色の袙の上に白い汗衫を重ねて着た少女。鴈の卵。かき氷に甘葛のシロップをかけて、新しい金属製のお椀に入れたもの。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪が降りかかってる光景。とっても可愛い子どもが、イチゴなんかを食べてる様子。


----------訳者の戯言---------

薄色は「七月ばかりいみじう暑ければ①」にも出てきました。やや赤みのあるとても薄い薄紫です。

白襲(しらがさね)にはいくつかの意味があります。①白の薄物と白の汗取りとを重ねて着ること。②四月一日の更衣(ころもがえ)のときに替える白色の小袖。③襲(かさね)の色目の名。表裏とも白。おもに下襲で用い、袴・帷(かたびら)・単(ひとえ)も白とする。
とのこと。

汗衫(かざみ)は女児の上着だそうです。省きますが、これまでにも何回か出てきました。
①汗取りの下着(男女ともに用いる)。②平安時代中期以後、後宮に仕える童女の正装用の衣服。「表着」または「袙」の上に着用する、裾の長い単(ひとえ/一重)のもの。一重または二重、との説もあります。

通常、童女は「袙(あこめ)」という着物の上に「汗衫(かざみ)」という上着を着るらしいですね。したがって「薄色に白襲の汗衫」というのは、薄色の袙の上に白い汗衫を重ねて着たスタイル、と解釈しました。もしかすると違うかもしれませんが、いかがでしょうか。

雁は、冬鳥として冬の時期に渡来し、冬が終わるころには北極圏に帰って行きます。ということは、繁殖期の5~7月は日本にはいません。日本で卵を産むことがない鳥なのだそうですね。一方、鴨はやはり冬鳥が多いようですが、通年生息が見られるもの(カルガモオシドリ)もいます。

ということで、かりのこ(雁の子)=鴈の卵は、雁や鴨の類のたまご全般を言うようですが、実際には鴨、それも通年いるカルガモオシドリ(カモ目カモ科オシドリ属)の卵と考えられます。平安時代はもちろん、卵を食用にしませんでしたから、あくまでも鳥の巣とかにある卵、ヒナが生まれる卵のことです。
卵を食用にするようになったのは、日本では江戸時代以降らしいですから、卵は平安時代にそれほどしょっちゅう目にするものでもなかったであろうことも想像できますし、つるんとしてカワイイですから、いい感じに思えたんでしょうか。大きさはたぶん鶏卵のSサイズくらい、ウズラ卵みたいに斑模様もないですしね。

「あまづら」というのは、甘葛という植物で作った甘味料だそうです。甘葛の樹液を煮詰めてシロップにしたようですね。安土桃山時代に砂糖が伝わるまでは、蜂蜜とともに貴重な甘味料だったとか。砂糖が輸入されるようになると衰退したようです。

この段は、上品なもの、優美で高貴なもの。という感じです。今回良かったのは、ややっこしい昔の漢詩とか和歌とか、故事とかが無かったことですね。笑


【原文】

 あてなるもの 薄色に白襲の汗衫。かりのこ。削り氷にあまづら入れて、新しき鋺(かなまり)に入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪の降りかかりたる。いみじう美しき児(ちご)の、いちごなど食ひたる。

 

 

こころきらきら枕草子 ~笑って恋して清少納言

こころきらきら枕草子 ~笑って恋して清少納言