枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

ものへ行く路に

 どこかへ行く道の途中で、清潔感があってスリムな男が、立文(たてぶみ)を持って急いで行くのは、どこに行くんだろ?って見ちゃうわ。
 また、キレイな女の子なんかが、袙(あこめ)とか、それもすごく新しくて鮮やかに際立ってるんじゃなくて、着慣れてやわらかくなったのを着て、ツヤツヤしてる屐子(けいし)で歯に土がいっぱいついてるのを履いて、白い紙に包んだ大きな物、もしくは箱の蓋に草子なんかを入れて持って行ってたら、どうしても呼び寄せて中身を見たくなるの。
 門に近いところの前を通るのを呼び入れても、愛想もなく返事もしないで行っちゃう者は、使ってる主人の人間性が推し量られるのよね。


----------訳者の戯言---------

立文(たてぶみ)というのは、書状の形式の一つ。書状(本文を書いた書面)を「礼紙(らいし)」という別の紙で巻き包み、さらに白紙の包み紙で縦に包み、余った上下を裏側に折るものです。正式で儀礼的な書状の包み方らしいんですね。

袙(あこめ)。通常、童女は「袙(あこめ)」という着物の上に「汗衫(かざみ)」という上着を着たらしいです。バキバキの新品よりもちょっと馴染んできたのがいい、というのでしょう。ジーンズとかスニーカーとか、履きならしたのがいい、みたいなものでしょうか。

屐子(けいし)。今で言う下駄みたいなものらしいです。


一応、男前には目が行くんですね、清少納言。けど、身分低い者には大して興味はありません。

でまた、何でお前に呼び止められて入っていかんとあかんねん。って話です。
こっちも忙しいんですわ。えらい上からですなー。という心の声。
ややこしいおばちゃんに呼ばれても行ったらあかんよ、とちゃんと教育できてる主人はなかなか立派です。フフ
何で清少納言に持ってるモノ、いちいち見せなあかんねん。気ぃ悪いわ。あなたにスタッフ教育の云々を言われるのは雇用主としても心外だと思いますね。清少納言、わかってませんな。


【原文】

 ものへ行く路に、清げなる男(をのこ)の細やかなるが、立文持ちて急ぎ行くこそ、いづちならむと見ゆれ。

 また、清げなる童べなどの、袙(あこめ)どものいとあざやかなるにはあらで、なえばみたるに、屐子(けいし)のつややかなるが、歯に土おほく付きたるを履きて、白き紙に大きに包みたる物、もしは箱の蓋に草子どもなど入れて持て行くこそ、いみじう、呼びよせて見まほしけれ。

 門近(かどちか)なる所の前わたりを呼び入るるに、愛敬なく、いらへもせで行く者は、使ふらむ人こそおしはからるれ。

 

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  • 作者:山口 仲美
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